2015年の音楽シーンを象徴するFetty Wap(フェティ・ワップ)の「679」。この曲は、全米チャートTOP10に3曲同時ランクインという、エミネム以来の歴史的快挙を支えたメロディック・トラップの金字塔だ。サンプリングを一切使わず、中毒性の高いオリジナルビートのみで世界を熱狂させた「2015年最大のパーティーアンセム」の裏側に迫る。
🎧 クイック概要:10秒でわかる基本データ
| 項目 | 内容 |
| アーティスト / 曲名 | Fetty Wap feat. Remy Boyz / 679 |
| 収録アルバム | 『Fetty Wap』(2015年) |
| サンプリング元 | オリジナル制作(サンプリングなし) |
| 最高位 | 米Billboard Hot 100 第4位 |
記録を塗り替えた「フェティ・マニア」の衝撃
「679」の凄さは、当時のチャートにおける圧倒的な支配力にある。デビュー曲「Trap Queen」で一世を風靡した彼は、続く「My Way」、そしてこの「679」を同時にBillboard TOP10に送り込んだ。
これはラッパーとしては2013年のエミネム以来となる快挙だ。さらに、デビューから最初の4曲を「Hot Rap Songsチャート」のTOP10に同時にランクインさせたが、これはチャート26年の歴史で史上初の記録である。当時、SNSやラジオで彼の声を聞かない日はなく、まさに「2015年の夏は、彼一人のためにあった」と言っても過言ではない。

「679」と「1738」の数字が持つ真の意味

この曲を象徴する2つの数字には、彼のアイデンティティが深く刻まれている。
- 679の由来: フェティ・ワップはインタビューで「単に俺の誕生日(6月7日)なんだ」と明言している。また、彼がソロ以前に地元パターソンで活動していたクルー名も「679」であった。
- 1738の由来: 曲の冒頭でお馴染みの叫び「1738」は、自身のクルー「Remy Boyz 1738」を指す。これは高級コニャック『レミーマルタン 1738 アコード・ロイヤル』に由来しており、「最高級の酒と同じくらい、俺たちは選ばれし特別な集団だ」というプライドが込められている。
インタビューで語られた「即興の魔法」

楽曲の制作背景について、フェティは極めてシンプルな哲学を語っている。
「俺の曲作りに複雑な計算はない。スタジオに入って、その場のバイブスでメロディを乗せるだけだ。『679』は、俺とRemy Boyzの仲間たちが最高に楽しんでいる瞬間をパッケージした曲なんだ」
プロデューサーのPeoplesが作り上げた、明るく突き抜けたシンセサイザーの音色は、当時のダークなトラップ主流のシーンにおいて「革命的なまでの多幸感」をもたらした。フェティ本人は「メロディが降ってきたら逃さず形にする。歌詞を書き留めることすらしない」と、その天性のセンスを明かしている。
消されたメンバーと「700万ドルの泥沼訴訟」

記事の信頼性を高めるために、避けては通れない「影の歴史」にも触れておく。
- SNSでの大流行: 当時の6秒動画アプリ「Vine」では、冒頭の “I got a Glock in my ‘Rari” というフレーズに合わせてダンスをする動画が爆発的に拡散された。これがヒットを決定づけた。
- 抹消されたP-Dice: 実は初期のミュージックビデオやミックステープ版には、Remy BoyzのメンバーであるP-Diceが参加している。しかし、彼は後にクルーを追放され、公式リリース版からは彼のバースが丸ごと削除された。
- 泥沼の争い: これは単なる不仲では終わらなかった。P-Diceは後に「共作者としての印税が支払われていない」としてフェティを相手取り、700万ドルの損害賠償を求める訴訟を起こしている。公式音源の構成がどこか不自然に感じるのは、この法的・金銭的なトラブルによるものだ。
左目のアイコンと「メロディック・ラップ」の夜明け
フェティ・ワップは、先天性緑内障で左目を失明していることを公表し、それを隠さずアイコン化した。自身のハンディキャップを最強の個性へと変える姿勢は、多くのファンの支持を集め、唯一無二の存在となった。
また、今では当たり前となった「歌うようにラップする」スタイル。このメロディック・ラップの系譜において、2015年に彼が示した完成度は、その後のポスト・マローンや将来のシーンに続く巨大な基準を作ったと言えるだろう。
結論:色褪せない2015年のバイブス
「679」は、フェティ・ワップという天才が、仲間と共に作り上げた「純粋な遊び」が世界を飲み込んだ奇跡の産物だ。
キャッチーなフック、インターネットでのバズ、そして記録的なチャート制覇。今聴いても、イントロの “1738!” という叫びだけで一瞬にしてあの夏の空気に戻れる。これこそが、本物の「アンセム」の力なのだ。
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