2022年に約3年振りとなる4枚目のアルバム「Special」をリリースしたLizzo (リゾ)は、リード曲の「Grrrls」ではBeastie Boysをサンプリングし、収録曲「Break Up Twice」ではLauryn Hillをネタ使いするなど、往年のヒットソングをサンプリングして注目を集めました。
今回は、このアルバムの12曲目に収録されている「Coldplay」をピックアップ。
ここでは、この曲の元ネタについて解説します。
Lizzo – Coldplay (2022)
楽曲情報
Lizzo (リゾ)
出身地 :ミネソタ州ミネアポリス
生年月日:1988年4月27日
ジャンル:R&B, Pop
レーベル
Atlantic Records
プロデューサー
Chris Keys
Quelle Chris
Ricky Reed
元ネタ・サンプリング
Quelle Chris & Chris Keys – Sudden Death (2020)
Coldplay – Yellow (2000)
“Coldplay” 元ネタ・サンプリング ①
Quelle Chris & Chris Keys – Sudden Death (2020)
元ネタになったのは、ミシガン州デトロイト出身のラッパーQuelle Chrisの「Sudden Death」(2020)です。
彼は、J DillaやProofといったデトロイトのヒップホップアーティストに注目されてその名を広め、Denmark VesseyとグループCrown Nationを結成。
また、ラッパーのDanny Brownのアルバムにソングライターとして数曲クレジットされたことをきっかけにソロキャリアを歩むようになり、2011年にスタジオアルバム「Shotgun & Sleek Rifle」をリリース。
その後、共通のコラボレーターであるRoc Marcianoを通じて、サンフランシスコ、ベイエリアのプロデューサーChris Keysと出会い、2015年にコラボアルバム「Innocent Country」をリリース。
2020年に、このアルバムの続編として「Innocent Country 2」をリリースし「Sudden Death」はこのアルバムに収録されています。
“Coldplay” 元ネタ・サンプリング ②
Coldplay – Yellow (2000)
Lizzoの「Coldplay」は、イギリス、ロンドンで結成したロックバンドColdplay (コールドプレイ)の「Yellow」(2000)もサンプリングしています。
この曲は、彼らのデビューアルバム「Parachutes」(2000)に収録されており、UKチャート1位を獲得し、グラミー賞の「最優秀オルタナティブミュージックアルバム」を受賞。
また、このアルバムはイギリスでは21世紀に入ってから22番目に売れたアルバムで、全世界では1300万枚以上のセールスを記録しています。
「Yellow」は、UKシングルチャートで4位を記録し、Coldplayにとって初のトップ5シングルとなり、これまでに60組のアーティストによってカバーされています。
そんな彼らの代表曲であるこの曲は、Coldplayが「Parachutes」の制作を始めた南ウェールズのモンマス近郊のロックフィールドにあるクアドラングルスタジオで書かれています。
そこでリードシングル「Shiver」のレコーディングを終えたある夜、メンバーは休憩をとってスタジオから外に出た時、空の星ははっきり見えたようで、リードシンガーのChris Martinはその光景にインスピレーションを受け、この曲のメインメロディが頭に浮かんだようです。
当初、Chris MartinはフォークソングのシンガーNeil Youngの歌マネをしてバンドの他のメンバーにこの曲を歌い「この曲には『星』という言葉があって、それはNeil Youngの声で歌うべき言葉のように思えた」と明かしています。
そこからメンバーとの共同作業で歌詞が練られ、ベーシストのGuy Berrymanが「星を見て」という冒頭の一節を思いつき、その夜すぐに曲を作り上げ、バンドはレコーディングを行ったようです。
Neil Young – Harvest Moon
なぜコールドプレイの名前を曲名にしたのか
Coldplayをサンプリングし、彼らの名前を曲目に使うという大胆さについて、Lizzoは次のように明かしています。
この曲は文字通り、ピアノのループに合わせた45分間のフリースタイルから作られたんだ。 Ricky Reed(プロデューサー)が私をブースに座らせて、話をさせてくれたの。 それで、私はトゥルム(メキシコ)に行ったばかりの旅行のことや、そこで経験したこと、 Coldplayを歌って泣いていたことなどをロマンチックに語ったんだ。 数週間後、彼は『ねえ、ブースで言ったフリースタイル、覚えてる?君の言葉を使って曲を作ったよ』って。 彼は Coldplayの「Yellow」をサンプリングしたトラックを聴かせてくれて、私は『おっ、これはクレイジーだ』って思ったんだ。 Rickyは『これを "My Love Is You" と呼ぶべきだ』って言ったんだ。 でも私は『いや "Coldplay" って呼ぶべきだ』って思ったの。 だって、黒人は人のことをバンド名で呼ぶんだ。 私たちはAdam Levineを『Maroon 5』と呼ぶわ。 『ああ、Maroon 5が出たか』ってね。 Coldplayをサンプリングした曲を「Coldplay」と呼ぶのは、何か面白くてリアルだと思ったんだ。 彼らのソングライティングはとてもシンプルで詩的なの。 だから『彼らに敬意を表そう。そこから逃げないようにしよう』って。 このアルバムでは、何からも逃げなかったよ。 このアルバムにテーゼがあるとすれば、それはそれだ。 自分自身を受け入れることね。
また、Lizzo はApple Musicのインタビューに出演した際、ColdplayのChris MartinがFacetimeでサプライズ出演しました。
Lizzoは「Yellow」をサンプリングし、曲名にバンド名を使用することを許可してくれたChris Martinへ感謝の思いを伝えています。
私は誰かと一緒にいて、ただ星を見ていたわ。 それで、私は彼と一緒に、この曲を歌っていたの。 私の目には涙が浮かんでいたわ。 あなたのリリックの詩で人々を感動させる能力は本当にすごいわ。 だから、本当にありがとう。
これにChris Martinは「Lizzoのフックアップソングになってよかったよ」と明かしています。
そういう褒め言葉ってどう受け取ればいいのかわからないんだ。ありがとう。 もし誰かが22年前に『いつかLizzoがこの曲を作り上げるだろう』って言ったら 『そうか、すごいな』って思うだろうね。 Lizzoのフックアップソングになってよかったよ。
この機会に、元ネタと併せて聴いてみてはいかがでしょうか。
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