93 ‘til Infinityのサンプリング正体|カセット奪還と高音の裏側を検証

Hip Hop / Rap
Hip Hop / Rap1990年代
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Souls of Mischief(ソウルズ・オブ・ミスチーフ)の代表曲「93 ‘til Infinity」は、1993年にリリースされた90年代ヒップホップ屈指のクラシックだ。ジャズ界の巨匠ビリー・コブハムの楽曲を大胆に再構築したそのサウンドは、ギャングスタ・ラップ全盛期に「日常の美学」を提示した。現在もLo-fi Hip Hopの先駆けとして、世代を超えて愛され続けている。

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🎧 クイック概要:10秒でわかる基本データ

項目内容
アーティスト / 曲名Souls of Mischief / 93 ‘til Infinity
収録アルバム『93 ‘til Infinity』 (1993年)
サンプリング元Billy Cobham – Heather (1974年)
最高位米Billboard Hot 100:72位
Hot Rap Songs:11位
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カセットテープ奪還事件と「Infinity」の由来

この曲のビートは、危うく別のアーティストの手に渡るところだった。プロデューサーのA-Plusによれば、このトラックはもともと1991年頃に制作され、当初のタイトルは『91 ‘til Infinity』であった。

驚くべきは、このビートが一度は同じHieroglyphicsの仲間、Pep Loveに譲渡されていたという事実だ。実際にPep Loveはこのビートで別の曲を録音していたが、自分たちのアルバム制作が佳境に入った際、A-Plusはこの曲の秘めたる可能性を確信。「やっぱり自分たちのために使う」と決め、Pep Loveの自宅まで行き、文字通りカセットテープを回収(奪還)してきたという。

タイトルの「Infinity(無限)」という言葉は、A-Plusが高校11年生(日本の高2相当)の英語の授業で哲学的な概念や文学を学んでいた際、その響きと「永遠」という意味に感銘を受けて採用したものだ。

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10代の実験が生んだ「耳に残る高音」の正体

「93 ‘til Infinity」を象徴する幻想的なサウンドには、当時10代だったA-Plusの鋭いサンプリング・センスが詰まっている。

  • 伝説のサンプル・フリップ: メインネタはBilly Cobhamの「Heather」。サンプラー「Ensoniq EPS」を駆使し、原曲の冒頭わずか数秒のフレーズをスロー再生・ループさせることで、あの夢心地のような旋律を発見した。
  • 高音の正体: 曲中で鳴り響く「ヒュー」という高い音。これはよく言われる「機材のバグ」ではなく、同じ『Heather』のイントロにある別の音をサンプリングし、極端にピッチアップしてディレイを深くかけた意図的な音響工作だ。
  • 重厚なリズム: ドラムにはGraham Central Stationの「The Jam」からキックとスネアをレイヤリングし、幻想的なメロディに力強いグルーヴを共存させている。

ヨセミテでの極寒撮影と「脱・ギャングスタ」の哲学

1993年当時のオークランドは全米屈指の危険地帯だった。しかし、彼らは銃やドラッグではなく、スケートボードや友情、そして「ただ仲間とチルする時間」という等身大の日常を歌った。

その姿勢を象徴するのが、ヨセミテ国立公園で撮影されたミュージックビデオだ。

  • 都会を避けた理由: 「ステレオタイプな路地裏で踊るビデオは作りたくない」というメンバーの強い意志があった。当初はスタジオ撮影の予定だったが、予算の関係で屋外ロケへと変更された。
  • 撮影の裏話: 1993年1月頃の撮影であり、標高の高いヨセミテの現場は凍えるほどの寒さだった。メンバーが薄手のジャケットで震えながらも仲間と旅を楽しむ姿は、図らずも「永遠の若さ」を象徴する映像となった。

カニエ・ウェストも嫉妬した、時代を超越するレガシー

リリースから30年以上が経過しても、この曲の価値は高まり続けている。

  • 大物たちの愛: カニエ・ウェストはキャリア初期に「このビートに衝撃を受け、これを超えるものを作らなければと痛感した」と語り、Joey Bada$$は2013年にオマージュ曲「95 ‘til Infinity」をリリースした。
  • 世界的な評価: 2023年には、ローリングストーン誌の「史上最高の西海岸ヒップホップ・ソング100選」で5位に選出された。

「俺たちは、ただ1993年の自分たちを記録したかっただけなんだ」とメンバーのTajaiは振り返る。そのピュアな記録は、ヒップホップにおける「永遠に色褪せない夏」の風景として、今もなお世界中で鳴り響いている。

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