2005年から2006年にかけ、世界中のクラブとラジオを席巻したユーロダンス・アンセム、Cascada (カスケーダ)の「Everytime We Touch」。この一曲がグループを一躍メインストリームへと押し上げ、同名アルバム『Everytime We Touch』の成功を牽引したことは、今や伝説となっている。その普遍的な魅力と、時代を超えて愛され続ける理由を深掘りしていこう。
Cascada – Everytime We Touch (2005)
Cascadaの結成と「Everytime We Touch」の誕生
Cascadaは、ドイツ・ボン出身のダンス・ユニットである。ボーカルのNatalie Horlerを中心に、プロデューサー兼DJのDJ ManianとYanouが2004年にプロジェクトを始動させた。彼らの音楽は、ユーロダンスの伝統を受け継ぎつつも、ポップ寄りのメロディとクラブ向けサウンドを見事に融合させ、幅広い層からの支持を獲得していった。
そんな彼らの代表曲「Everytime We Touch」は、単なるカバーではない点が特徴的だ。元々は1992年にMaggie Reilly (マギー・ライリー)が発表した同名曲のサビ部分を大胆にサンプリングしている。Maggie Reillyのオリジナルがメロウでフォーキーな一面を持つのに対し、Cascada版はそこからダンスフロアで高揚感を生み出すエッセンスを抽出し、アップテンポなユーロダンスへと再構築しているのだ。
Maggie Reilly – Everytime We Touch (1992)
Maggie Reillyの「Everytime We Touch」は、1992年リリースのソロデビューアルバム『Echoes』に収録されている。Mike Oldfieldとのコラボレーションで名を馳せた彼女が、ソロアーティストとして新たな一歩を踏み出した時期を象徴する作品であり、「触れ合うたびに生まれる感情」をテーマに、愛や親密さを心象的に描き出す。バラード調の穏やかなメロディと澄んだ歌声が、聴き手の心にそっと寄り添うような一曲だ。
心を掴むサウンドとその歌詞
この曲の魅力は、何といっても瞬時に耳を捉えるサビのメロディと、シンプルながらも力強いリズム・アレンジにある。ピアノ風のリフやシンセの鋭い音色が、Natalieのクリアなボーカルと融合し、「抜けの良いポップ・ダンス曲」として完成されているのだ。
歌詞は恋愛における高揚感と触れ合いの喜びをストレートに表現している。
恋人への強い愛情、そしてその存在がどれほど自分の心を満たしているかを歌い上げる。大切な人と触れ合い、キスをするたびに胸が高鳴り、まるで空を飛べるような幸福感に包まれる感覚。相手が自分を支え、苦しい時でも立ち上がらせてくれる存在だからこそ、「ずっとそばにいてほしい」と願う――そんな恋の高揚感と、ある種の依存心を描いた普遍的なラブソングなのである。だからこそ、クラブだけでなくラジオやスポーツイベントなど、幅広い場面で受け入れられやすいのだろう。
リリースと世界的な成功
「Everytime We Touch」はシングルとして大ヒットを記録し、続いて同名のアルバム『Everytime We Touch』がリリースされた。このアルバムは特に英国やアメリカで大きな成功を収め、シングルは各国でプラチナやゴールド認定を獲得。アメリカでは100万枚以上を売り上げ、RIAAのプラチナ認定を受ける商業的な成功を収めた。ビルボード・ホット100で10位、アイルランドとスウェーデンでは1位、イギリスやドイツなどでもトップ5入りを果たすなど、Cascadaを国際的な存在へと押し上げたのだ。
TikTokでの再燃とメンバーの想い

一度は時代を席巻した「Everytime We Touch」だが、近年再び脚光を浴びている。その火付け役となったのが、TikTokである。この曲を使った動画は多数投稿されており、特に2024年1月には「Just Dance」ゲームと組み合わせた動画がバズり、120万本以上の動画が作られる大ヒットとなった。
CascadaのボーカルNatalie Horlerは、TikTokを中心としたSNSによって再び注目を集めている現状について、次のように語っている。
「本当に驚いているわ。もし現代のSNSがなければ、若い世代は15年前の音楽を知らないかもしれない。SNSやストリーミングを通じて音楽に触れ、私たちの古い曲も自然に聴く機会があるのよね。1〜2年ごとに新曲を出すと、若い人たちはそれをきっかけに10年前の曲も聴く。曲はまだ十分に時代を超えているようね」
こうしたSNSでの注目も後押しし、2023年初頭にはCascadaがアメリカツアーで復帰を果たした。ニューヨーク、シカゴ、ヒューストン、サンディエゴなどを巡るクラブツアーは、実に10年以上ぶりとなるアメリカでの活動だった。
現在44歳を迎えたNatalie Horlerは、年齢は変えられないが、精神の若さや健康管理、パフォーマンスの質は自分でコントロールできると語る。だからこそ、今も昔と変わらないエネルギーでファンと繋がれていると自信を持っているのだ。「自分はまだ20歳くらいの気持ち」という冗談めいた言葉には、実年齢よりも心の若さを大切にする彼女の姿勢が表れている。
「不思議ね。私も理解できないわ。一つだけ自分でコントロールできるのは、年齢の重ね方ね。若々しい精神を保ち、健康を維持し、ステージパフォーマンスは10〜15年前と変わらないレベルをキープしているの。エネルギーは十分にあるわ。だから、年齢を感じさせないように心がけている。18年経った今も、ファンとしっかり繋がれると感じているわ。大切なことね(笑)。自分はまだ20歳くらいの気持ちよ」
さらに、2025年9月には、EDM界の巨匠Steve Aokiとのコラボレーションによる「Everytime We Touch」がリリースされた。Steve Aokiは、この曲が「ダンスミュージックの時代を象徴する楽曲のひとつであり、世界中のダンスフロアを熱狂させ、人々を繋いだ」と明かしている。
Steve Aoki & Cascada – Everytime We Touch (2025)
まとめ — ユーロダンスの金字塔として
「Everytime We Touch」は、オリジナルの良さを尊重しつつ、それをダンスミュージックへと見事に昇華させた成功例である。Cascadaにとっては間違いなく代表作であり、2000年代中盤のダンス・ポップ・シーンを象徴する一曲として、その地位は揺るぎない。現在でもクラブやパーティー、スポーツイベントなどで耳にする機会が多いことが、この曲の持つ普遍的な強さと、時代を超えた影響力を物語っているのだ。



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