2025年10月10日、遂にベールを脱ぐニューアルバム『after the sun goes down』。その期待高まるリリースに先駆け、Khalid (カリード)が放った先行シングル「out of body」は、彼のキャリアにおける新たな章の幕開けを高らかに告げる一曲である。
これは単なる楽曲ではない。彼自身の個人的な経験から紡ぎ出された、深く官能的な物語であり、同時に困難を乗り越えた先にある「解放」を象徴する作品だ。本稿では、この楽曲が生まれた背景から歌詞の深淵、そしてそのサウンドが持つ魅力までを詳らかにしていく。
Khalid – out of body (2025)
魂を揺さぶる「解放」の歌:アウティングがもたらした「祝福」
「out of body」を深く理解するためには、楽曲が生まれるに至ったKhalid自身の痛みに満ちた、しかし力強い経験を抜きには語れない。2024年11月22日、彼はX(旧Twitter)上でアウティングされ、自らがゲイであることを公に認めた。当時を振り返り、Khalidは「完全に不意を突かれた。何よりも、自分自身の物語を奪われてしまったことが一番嫌だった」と語っている。しかし、時を経て彼はこの出来事を「思わぬ形での祝福(a blessing in disguise)」と表現するまでに至ったのだ。
元交際相手によるアウティングは、彼にとって「とても不快で、自分の物語を奪われたようだった」と心に深い傷を残した。しかし、彼はその困難な経験を逆手に取り、自身のセクシュアリティを公に受け入れることで、かつてない創造的な自由を手に入れたのである。
「このアルバムは、俺がアウティングされなければ生まれなかった」という彼の言葉は、まさに偽りのない本心であろう。『after the sun goes down』は、彼が自分自身の真実を生き、ありのままを表現する決意の表れに他ならない。
「out of body」は、その決意を象徴する一曲として、私たちの心に深く響く。なぜなら、彼はこう続けたからだ。「結局、無条件に自分を愛することを選んだ。だってこの地球で自分に与えられたものはそれしかないから」と。
秘密と親密さ、そして抑えきれない欲望が交錯する歌詞世界
「out of body」の歌詞は、秘密の関係性の中で燃え上がる親密さと、抗いがたい肉体的な欲望を赤裸々に、しかし洗練された言葉で描いている。
「Inside, I wouldn't wanna share with anybody else / Now that we're alone I want you to myself
(この中は、誰とも共有したくない / 今、二人きりだから、君を独り占めしたいんだ)」
ミニマルながらも印象的なプロダクションに乗せ、Khalidは抑制の効いたセクシーなボーカルで、二人だけの空間で高まっていく感情を歌い上げる。それは露骨な表現とは一線を画し、研ぎ澄まされた言葉選びによって、聴き手を楽曲が描く親密な世界へと誘う魅力を持つ。これまで以上に成熟し、パーソナルな物語を語り始めたKhalidの新たな側面が、この歌詞から垣間見える。
2000年代R&Bへのオマージュを捧げるサウンド
「out of body」のサウンドは、2000年代初頭のR&Bから強いインスピレーションを得ている点が特徴だ。プロデュースには、デスティニーズ・チャイルドやSZA、サム・スミスらの楽曲を手がけてきたRodney Jerkinsらが参加。ジャスティン・ティンバーレイクやティンバランドを彷彿とさせるような、スムーズでありながらも小気味良いリズミカルなビートが楽曲全体を彩る。
脈打つようなベースラインと歯切れの良いパーカッションの上を、Khalidの滑らかなボーカルが漂うように流れていく様は、聴く者を陶酔させる。懐かしさと新しさが絶妙なバランスで同居するこのサウンドは、彼の音楽的ルーツへの深い敬意と、これからの活動に対する意欲の両方を感じさせるものだ。
『after the sun goes down』――脆弱性と自己愛の結晶

「out of body」は、2025年10月にリリースが予定されているKhalidにとって4枚目のアルバム『after the sun goes down』からの先行シングルと位置付けられている。このアルバムは、彼がソーシャルメディア上で元恋人にアウティングされたという、彼の人生で最も辛い瞬間のひとつから生まれたものだ。この出来事をKhalid自身は「本当にひどい」、そして非常に個人的な経験だったと語っている。
しかし、この経験がニューアルバム『After the Sun Goes Down』のテーマと感情的なトーンに決定的な影響を与えた。Khalidは、このアルバムが、自身のクィア性を受け入れる中でたどり着いた新たなレベルの脆弱性と自己愛を反映していると語る。彼は今、自由と脆さを受け入れているのだ。
「このアルバムは、カミングアウトを祝福し、自分のクィアネスを表現したものなんだ」とKhalidは付け加える。「友達が新しい音楽を聴いて、『カリード、この人誰? 君のこういう面ってどんな感じ?』って言うんだ。ある意味、脆さなんだ。自分のセクシュアリティを容赦なく、恐れることなく受け入れているんだ。」
さらに、彼はこのアルバムについて、次のように明かしている。「この章は、自分の力を取り戻し、自分の真実を生き、自由に自己表現できるようになることについて語っている。俺は、この新しい時代を音楽的な面だけでなく、個人的な面でもファンに体験してもらえることにワクワクしているんだ。」
おわりに
新曲「out of body」は、Khalidが個人的な困難を乗り越え、アーティストとして、そして一人の人間として新たなステージへと進んだことを明確に示す重要な一曲である。彼の真実から生まれたこの楽曲は、多くのリスナーに勇気とインスピレーションを与えることだろう。来るニューアルバム『after the sun goes down』で、彼がどのような世界を見せてくれるのか、期待は高まるばかりだ。
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