ナイジェリアの音楽シーンは近年、数々の世界的アーティストを輩出しています。その中でも今最も注目を集めるシンガーの1人がLojayです。Afrobeatsの枠を超え、R&Bやポップスの要素を取り入れた洗練されたサウンドで、世界中のリスナーを魅了しています。
代表曲「Monalisa」は国際的なヒットを記録し、クリス・ブラウンとのリミックス版も話題となりました。さらに、2023年にはグラミー賞にノミネートされるなど、そのキャリアは急成長を遂げています。本記事では、そんなLojayの音楽キャリアを深掘りしていきます。
音楽への情熱とキャリアの始まり

Lojayは幼少期から音楽に興味を持ち、中学時代にラップグループ「Dkoy」に所属し、楽曲制作をスタートさせました。やがてイギリスのポーツマス大学へ進学し、卒業後に本格的に音楽の道を歩むことを決意します。
2016年、20歳の時に彼は人生の大きな選択を迫られました。アーティストとして生きるか、安定した仕事を選ぶか。最初は不安もあったものの、音楽に対する情熱と確信が勝り、「続ければ必ず道が開ける」と信じ、音楽活動に専念することを決意します。
Lojayは、当時の心境をこう語っています。
「俺が20歳くらいだった頃、卒業パーティーで友人と会話していた時に、人生で一番大きな選択をしたんだ。アーティストとして生きるか、安定した9時から5時の仕事をするか。確かに不安はあったけど、それと同時に自分にとって正しい道だという確信もあった。音楽の世界に身を置いて、重要でないと思ったことは一度もない。ただひたすら、努力し続ければ、いつか何かが起きると信じていたんだ」
彼のステージネーム「Lojay」は、本名「Lekan Osifeso Junior」の頭文字を取ったものです。ジャンルに縛られず、独自のスタイルを追求する姿勢が彼の音楽の特徴です。
「自分には特定のジャンルはなく、周囲の期待に応えるためだけに自分を枠にはめるつもりもない……。もし誰かが俺をジャンルで区切りたいなら自由にすればいい。でも、大事なのは、みんながこの"gbedu"(曲)を楽しんで、つながりを感じることだ。明日俺がロックをやったとしても、誰も文句を言うべきじゃないよ」
音楽スキルの向上と最初の成功
Lojayは、音楽スキルを磨くことを最優先にしました。しかし、当時Afrobeatsのプロデューサーはロンドンに集中しており、ポーツマスから週に数回通いながら音楽制作に没頭しました。その中で、経済的な理由でスタジオのレンタルを諦め、自らプロデュースを始めます。その結果、2017年12月にはEP『Midnight Vibes』をSoundCloudに発表し、着実にファンを獲得しました。
「有名になることよりも、自分の音楽スキルを磨くことが大事だった。ロンドンにしかAfrobeatsのプロデューサーがいなかったから、ポーツマスから通い続け、講義を休んででも音楽制作に打ち込んだ。経済的に厳しかったのでスタジオをレンタルせず、代わりに自分でプロデュースを始めたんだ。そして、1年後には『Midnight Vibes』が完成した。プロモーションはせず、ただSoundCloudに発表するだけだったけど、それが俺にとって最初の大きな一歩だった」
SarzとのコラボEP『LV N ATTN』での飛躍

Lojayのキャリアを大きく変えたのは、ナイジェリアの名プロデューサーSarzとのコラボEP『LV N ATTN』(2021年)です。Sarzは、Wizkidとドレイクの「Come Closer」を手がけ、ビヨンセやSkepta、Popcaanなどとも関わる実力派プロデューサーです。このEPの中でも、特に「Monalisa」が大ヒットし、Lojayの音楽は世界中で注目を集めました。
「この曲がこんなに広がるとは思っていなかったよ『Monalisa』は、女の子たちが自分がモナリザだと思うし、男の子たちが自分の『モナリザ』に話しかけるような気分になれるんだ。それが、この曲の魅力だと思う」
LOJAY X SARZ – MONALISA
クリス・ブラウンとのコラボと世界進出

「Monalisa」の成功を受け、Lojayはクリス・ブラウンとのリミックス版を制作しました。彼はもともとヒット曲のリミックス制作を考えており、国際的なアーティストとのコラボを目指していました。リミックスは、新たな息吹を曲に吹き込む結果となり、2022年には「Wireless Festival」でクリス・ブラウンと共演。さらに、「The Headies」では4部門にノミネートされるなど、世界的に評価されるようになりました。
「リミックスによって、曲に新たな息吹が吹き込まれたよ。EPを制作していた時点から、Sarzと私は、どの曲がヒットしても、その曲のリミックスを作りたいと考えていたんだ。特に、海外のアーティストにリミックスを担当してもらうことで、さらにプッシュできるってね。そして、『Monalisa』がヒットし始めた時、俺たちはそのリミックスに参加してくれるアーティストを探し始めたよ。いくつかのアイデアがあったけど、候補の中からクリス・ブラウンの名前が目立っていたから、彼のチームに連絡を取ったところ、彼がすぐにバースを送ってきてくれて、驚いたよ! 誰も俺のことを知らず、俺の名前は知られていないと思っていたから、最初のEPにクリス・ブラウンの1節が入るとは思いもしなかった。
グラミーノミネートと新たな挑戦

2023年には、Lojayはクリス・ブラウンとDavidoと共に「Sensational」に参加。この楽曲は全米シングルチャートで71位にランクインし、Lojayにとって初のチャート入りを果たしました。また、グラミー賞「Best African Music Performance」部門にノミネートされ、大きなマイルストーンを達成しました。同年3月にはEP『Gangster Romantic』をリリースし、アーティストとしての表現の幅を広げています。
Chris Brown feat. Davido, Lojay – Sensational
Afrobeatsの未来とLojayの展望
Lojayは、Afrobeatsが今後ますます成長し、70年代や80年代のソウル音楽のような存在になると確信しているようです。
「Afrobeatsの魅力は、その「ソウル」だ」と彼は語ります。「そのルーツは教会音楽にあり、今ではダンスやアフリカ全体、ブラックムーブメントと結びつき、単なる音楽を超えた意味を持つようになった。俺たちアーティストは、このムーブメントの一部となり、ジャンルをさらに前進させることができることを誇りに思っている」
Lojayは、ナイジェリアの音楽シーンから世界へとその才能を広げつつあります。彼の自由な音楽性、洗練されたサウンド、そして感情を込めたボーカルが、多くのリスナーを魅了してやまない存在となっています。今後の彼の活躍に、ますますの期待が寄せられています。
コメント