ナイジェリア出身のシンガーTems (テムズ)は、幼少期から音楽に強い影響を受けて育ちました。特にBeyoncéやAdeleの音楽に感銘を受けた彼女は、独学で音楽プロデュースを学び、23歳のときに本格的に音楽の道を歩み始めました。
2018年に自身でプロデュースしたシングル『Mr.Rebel』でキャリアをスタートさせ、その後も『Try Me』などのヒット曲を次々とリリースし、着実にファンを増やしていきました。
2020年には、待望のデビューEP『For Broken Ears』を発表。その中でも特に『Higher』は、Futureのシングル『WAIT FOR U』でサンプリングされ、さらに注目を集めることとなりました。また、Wizkidのシングル『Essence』にフィーチャーされたことで、一躍有名になりました。
2022年には、Rihannaのシングル『Lift Me Up』への楽曲提供を果たし、さらにDrake、Future、そしてBeyoncéといったトップアーティストたちと共演するなど、その実力と影響力を世界に示しました。
そして、2024年6月には、待望のデビューアルバム『Born In The Wild』をリリース。このアルバムには全18曲が収録されており、その中から今回はセカンドシングルとしてリリースされた『Love Me JeJe』を取り上げます。
ここでは、この曲の元ネタやリリースの背景について詳しく解説していきます。
Tems – Love Me JeJe (2024)
『Love Me JeJe』楽曲情報
リリース日
2024年4月26日
レーベル
RCA Records
プロデューサー
Guilty Beatz
Spax
元ネタ・サンプリング
Seyi Sodimu feat. Shafy Bello – Love Me Jeje (1997)
『Love Me JeJe』元ネタ・サンプリング情報
Seyi Sodimu feat. Shafy Bello – Love Me Jeje (1997)
元ネタになったのは、ナイジェリア出身のシンガーSeyi Sodimuの『Love Me Jeje』(1997)です。
Seyi Sodimuはナイジェリアで生まれ育ち、1980年代にアメリカへ渡りました。大学在学中に作詞を始めた彼は、そこでアメリカ人DJであるCarl Basseyと出会います。この出会いがきっかけで、アメリカの音楽的要素とSeyi Sodimuのアフリカンミュージックが見事に融合し、1998年に彼のファーストアルバム『Born in Afrika』が誕生しました。
このアルバムはShakara Entertainmentからリリースされ、ナイジェリアのラジオ局でチャートを席巻し、さまざまな賞にノミネートされ、いくつかの受賞も果たしました。アルバムに収録された『Love Me Jeje』は、リリースされるやいなや大ヒットを記録し、音楽愛好家たちに広く受け入れられ、ラジオでも頻繁に放送されました。また、この曲はリリースから数年後も、他のナイジェリアのアーティストによってサンプリングされ続けています。
Temsが語る、『Love Me JeJe』の誕生秘話
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Temsが『Love Me JeJe』を制作した背景には、友達との何気ない会話が大きな影響を与えました。
ある夜、Temsは女友達とディナーに出かけました。その際、友達たちは彼女にこう言いました。「君が私たちと一緒にいる時は、アーティストのTemsとは全然違う。普通の女の子みたいで、本当にアーティストなのか疑わしいくらいよ。もしかして君は替え玉なんじゃない?」と冗談交じりに言われたTemsは、その場の雰囲気を和らげるために「それなら今夜、スタジオに行ってみんなで歌ってみよう」と提案しました。
その後、彼女たちはスタジオに向かい、TemsはプロデューサーのSpaxとGuiltyが作ったビートに挑戦することになりました。プロデューサーたちはこのビートを「ナイジェリア風にやってみて。できるはずがないけどね」とあえて挑戦状として彼女に送ったのです。
スタジオでは、Temsと友達たちが順番にフリースタイルで歌い始めました。その中で、友達の一人がナイジェリアの名曲『Love Me Jeje』と『Love Me Tender』を口ずさみました。その瞬間、Temsは「この雰囲気がとても素晴らしい。この感覚を曲に残したい」と感じ、その場で自分もフリースタイルに挑戦しました。
この経験を通じて、Temsは『Love Me Jeje』に対する敬意を表すために、新しい楽曲を作ることを決意しました。彼女は「この曲が本当に大好きで、母もこの曲を愛している」と語り、ナイジェリアの名曲であるSeyi Sodimuのオリジナル『Love Me Jeje』へのリスペクトを込めて、新たな作品に仕上げることを自然な流れと感じたのです。
さらに、Seyi Sodimuの『Love Me Jeje』は、アルバム『Born in Afrika』に収録されていますが、Temsがリリースしたデビューアルバムのタイトルは『Born In The Wild』です。このタイトルには、Seyi Sodimuの影響が色濃く反映されており、両者のタイトルはナイジェリアの音楽的ルーツを強調しつつ、それぞれのアーティストが持つ独自のスタイルや背景を表現しています。Temsのアルバムが、Seyi Sodimuの影響を受けつつも、自身のアーティスティックな表現を追求していることが伝わってきます。
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