2022年にリリースしたシングル「Betty (Get Money)」は、TikTokでバイラルヒットし、自身初の全米チャートにチャートインしたYung Gravy (ヤング・グレイビー)。
この曲はのMVは、YouTubeで2600万回、Spotifyでは1億回のストリーミングを記録するなど、瞬く間に注目を浴びる存在となりました。
ここでは、あまり知られていない彼のこれまでのキャリアに迫ります。
プロフィール
Yung Gravy (ヤング・グレイビー)
出身地 :ミネソタ州ロチェスター
生年月日:1996年3月19日
ジャンル:Hip Hop
仕事と生活の両立のために正体を隠す
ミネソタ州ロチェスターで生まれ育った彼は、幼い頃からラップやソウルミュージックに興味を持ち、高校生の頃に友人たちとフリースタイルをしたのがきっかけで、Yung Gravyと名乗るようになったようです。
高校時代にサマーキャンプで働いていて、時々フリースタイルをしていたんだ。 トラックの荷台で、俺と他のカウンセラーたちとでラップをしていたんだけど、俺は何かについてラップしていたんだ。 「俺はウェービーだ、スムースだ、ヤング・グレイビーだ」ってね。 意図したものでもなく、ただ口から出てきたんだ。 みんなは「おお、ヤベェ!」って感じで、その瞬間からグレイビーと呼ばれるようになったよ。 前はリル・スチーマーとかミスター・バターとか、6人のフリースタイル・サークルで時々使う呼び名があったんだけど、それ以降はヤング・グレイビーが定着したね。
その後、Lil YachtyやLil Peepに影響されてSoundCloudに楽曲をアップするようになり、2016年にEP「Mr. Clean」をリリースして本格的にキャリアをスタートさせます。
The Chordettesの「Mr. Sandman」をサンプリングし、彼のメロディアスなラップを乗せたEPのタイトル曲「Mr. Clean」は、Spotifyで2億回ものストリーミングを記録。
Yung Gravy – Mr. Clean (2016)
2017年には、ミックステープ「Thanksgiving’s Eve」EP「Yung Gravity」をリリースし、その存在はネット上で徐々に注目を集めていましたが、仕事との両立のために顔を隠すことで自分の存在を隠していたようです。
当時、俺を見つけた人は、特別だったね。 『彼は顔を見せないし、本当にユニークな音楽だ』とね。 本当に口コミでハマってカルト的なファンになって、友達に見せたりしていたんだと思うよ。 俺はSoundcloudで誰かとコラボして5000回再生されれば、100人のライブよりずっと価値があると思ったんだ。 ライブをやろうとも思わなかった。 ラップを始めてから1年半は顔を出さなかったね。 仕事が好きだったから、完全にミステリアスだったんだ。 だから長い間、自分の顔を見せず、音楽は純粋にインターネット上だけでやっていたんだ。
そう語る彼ですが、その後、Republic Recordsと契約を結び、前述の「Mr. Clean」のMVを公開するなど、表舞台に立つようになりました。
TikTokでバイラルヒットするも、著作権侵害で削除される?!
契約後初のEP「Snow Cougar」(2018)には「Mr. Clean」が収められたほか、Dennis Edwardsの「Don’t Look Any Further」をサンプリングした収録曲「1 Thot 2 Thot Red Thot Blue Thot」は、Spotifyで1億7000万回のストリーミングを記録。
Yung Gravy – 1 Thot 2 Thot Red Thot Blue Thot
2019年にはJuicy J、Lil Babyなどをゲストに迎えたデビューアルバム「Sensational」をリリースし、先行でリリースしていたLil Babyとのシングル「Alley Oop」について次のように語っています。
ある日、スタジオでLil Babyに会ったんだけど、友達が彼に俺の曲を聴かせたら、彼は夢中になったんだ。 その日の夜に1曲「Alley Oop」を作ったんだ。 Juicy Jはずっと俺の好きなラッパーだったから、あれは計画的というか「これを実現させよう」と思ってやったことなんだ。 この曲を作りたかったんだ。曲も全部用意してたし。 それが、本当にスムーズにいったね。 彼が気に入ってくれたからあれはうまくいったね。
Yung Gravy feat. Lil Baby – Alley Oop
また、アルバムに収録されていたカナダ出身のラッパーbbno$との「Whip a Tesla」はYouTubeで2600万再生され、Spotifyで1億回のストリーミングを記録しています。
Yung Gravy, bbno$ – Whip A Tesla
翌年、Yung Gravyが2017年にリリースしたbbno$とのコラボEP「Baby Gravy」の続編となるコラボアルバム「Baby Gravy 2」(2020)をリリースし、収録曲「Welcome to Chilis」はSpotifyで1億回再生を記録。
Yung Gravy & bbno$ – Welcome to Chilis
また、2017年にシングルとしてリリースし、Playerの名曲「Baby Come Back」をサンプリングした「Cheryl」は、2020年にTikTokでバイラルヒットし、スコットランド出身の三つ星シェフゴードン・ラムゼイが娘と踊る動画は、Twitterだけで700万再生されるなど、ネット上で瞬く間に人気となりました。
しかし、2020年8月、この曲のプロデューサーであるJason RichがUniversal Musicから目をつけらていることを明かすと、その数日後に著作権侵害の為ストリーミングサービスから姿を消しました。
半年後の2021年2月には再びストリーミングサービスに復活を果たし、Yung GravyもTwitterで再アップしたことを報告しています。
Yung Gravy – Cheryl
「Betty (Get Money)」で初の全米チャートにチャートインを果たす!
2020年、Chief Keef、Young Dolph、Ski Mask the Slump Godなどがゲスト参加したセカンドアルバム「Gasanova」をリリース。
このアルバムでは、プロデューサーにビート制作をを頼るこれまでのスタイルから、Yung Gravyが積極的に制作に参加し、多くのことを学び、アルバムがまとまりのある作品になったようです。
一般的には、プロダクションと音楽を組み立てることについてより多くを学んだんだ。 以前は、自分が欲しいものをプロデューサーに伝えるだけだったんただけど、今回は共同制作のような形で、ビートを作るのを手伝ったんだ。 全体を通してより一貫したサウンドになったよ。 俺はずっとアルバムモードで、いつも同じスタジオでレコーディングしていたんだ。 前回のプロジェクトでは、旅先で曲を作り、その中から好きなものを選んでいたんだ。 「Gasanova」はもっとまとまりがあるよ。
アルバムからの5枚目のシングル「Oops!」は、この曲を使ったTikTok動画が1億回再生され、Spotifyでも1億回のストリーミングされるほど注目を浴び、その後Lil Wayneとのリミックスをリリースしています。
しかし当初、Yung Gravyはこのビートが普段使わないものだったため、フリースタイルしながら制作したことを明かしています。
このビートは、俺が普段使っているタイプのビートではないんだ。 いろいろなフローを試しながらレコーディングしていったら「Oops!」という部分がフックになり、フリースタイルでそのままできたんだ。 完成したら「すごく良い」と思ってくれる人が多くてびっくりしたよ。 普段のスタイルではないんだけど、最初は俺が韻を踏むことでフリースタイルになったんだけど、結局フリースタイルじゃなかったね。
Yung Gravy – Oops!
Yung Gravy feat. Lil Wayne – Oops!
その後も精力的に活動し、2枚のEPを発表し、2022年にRick Astleyの「Never Gonna Give You Up」をサンプリングしたシングル「Betty (Get Money)」で自身初の全米シングルチャートにチャートインを果たします。
この曲で多くのオーディエンスに認知されるようになりましたが、同時にネット上では「ミームソング」「ミームラッパー」と呼ばれることが多く、本人は次のように語っています。
みんながミームラッパーをどう考えているのか、正確にはわからないね。 インターネット関連にはあまり関心がなかったし、今はソーシャルメディアからも離れている。 ミームラップから連想される人たちは、俺が発信していたものをベースにしたスタイルが多いね。 名前は言わないけど、俺と同じサンプルを使い始めて、その流れで俺も仲間に入れてもらったんだ。 俺は自分の音楽の中で100%おちゃらけたことを言うけれど、インターネットで注目を集めようと思って曲を作ったことは一度もないんだ。 ミームラッパーの中には、ただ注目を浴びるために無知なことを言っている人もいるけど、俺はそういうのは好きじゃないんだ。
Yung Gravy – Betty (Get Money) (2022)
ライブでミルクやチキンを配る?!
Yung Gravyのこれまでのキャリアを振り返ると、多くの曲を縦横無尽にサンプリングし、現代的なスタイルに昇華させ、キャッチーなラップスタイルでオーディエンスの心を奪ったように感じます。
彼らしいユニークなスタイルは、ライブパフォーマンスでも体現されており、ライブ中に最前列のカップに「Gravy」のミルクを注いだり「Rotisserie」の曲中でファンにロティサリーチキンを配るなど、一見過激なパフォーマンスでも知られています。
いずれにせよ「目立つこと、人と違うことをすること」は彼にとって重要なことのようです。
どのツアーでも、どうすれば最高の印象を与え、長期的なカルトファンを作ることができるかを常に考えているよ。 最初は怒る会場もあったんだけどね。 でも、他のアーティストと差をつけるにはいい方法だと思うんだ。
一見おちゃらけて見える彼ですが、そうした見えない努力を重ねた結果、唯一無二のキャラクターが形成されているようです。
10月には前述の「Betty (Get Money)」を収録した4枚目のアルバムをリリース予定とのことで、今後も彼から目が離せません!
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