カナダ、トロント出身であるシンガーDaniel Caesar (ダニエル・シーザー)は、2017年にリリースしたデビューアルバム「Freudian」から、H.E.R.とのコラボ曲「Best Part」でグラミー賞を受賞し、現在までにSpotifyで10億回以上のストリーミング再生数を記録する大ヒットとなりました。
2019年にはセカンドアルバム「Case Study 01」をリリースし、2021年にはJustin Bieberのシングル「Peaches」にゲスト参加し、自身初の全米チャート1位を獲得しました。
Daniel Caesarのこれまでのキャリアについての記事はこちら。
そんな彼が、2023年に3枚目のアルバム「NEVER ENOUGH」(2023)をドロップ。
ここでは、このアルバムについて解説します。
アルバムのリリースに至るまで
前作のアルバムをリリース後、世界はパンデミックに見舞われ、作品のリリースやライブ活動も自粛を余儀なくされましたが、その期間について彼は次のように明かしています。
COVID期間中は、世界が進んでしまったような気がするよ。 COVIDのラジオをやっていなかったり、Instagram Liveに参加して「俺はまだここにいるぜ」なんて言っていないと、世界が移り変わっていくような気がして、プラットフォームを失ってしまうかもしれない。 何かを作るたびに、自分のすべてを注ぎ込んで、みんながそれを気に入ってくれたら、また戻ってきたときに、聴いてくれる人がいるはずなんだ。
そのような状況の中、Daniel Caesarはパンデミックによる自己隔離期間中にアルバムの制作に着手していたとされており、彼はその制作の様子について次のように明かしています。
俺はゲストハウスに小さなスタジオを設置し、時には数日間孤独に過ごしながら、家の雰囲気を味わっていたんだ。 また、料理や絵画も始めましたが、主に音楽制作に没頭していたね。
2023年1月、アルバムから最初のシングルとなった「Do You Like Me?」をリリースしました。
この曲のプロデュースには、Mary J. Blige、Whitney Houston、Erykah Baduなどを手掛けた名プロデューサーRaphael Saadiqが手掛けており、彼とのセッションについて次のように語っています。
15分も一緒にいると「この人はめっちゃクールだな」と感じたよ。 彼は一緒にいる人を心地よくさせるんだ。 話が豊富だから、緊張していても、話をしてくれるんだ。
Daniel Caesar – Do You Like Me?
翌月には、セカンドシングル「Let Me Go」をリリースし、この曲について彼は次のように明かしています。
「Let Me Go」は、俺が「自分のキャリアをさらに進めたいな」と思った曲の1つなんだ。 以前は、インスピレーションが湧いたときにしかスタジオに行かなかったんだけど…… あれは、良い結果になったセッションのひとつだと思うよ。
Daniel Caesar – Let Me Go
3月には、3枚目のシングル「Valentina」をリリースされました。
この曲は、Daniel Caesarの弟であるZachary Simmondsが共同プロデュースで携わっており、Daniel Caesarは彼の才能に魅了されたことを明かしています。
あれは正直言って、それは俺の弟のZacharyの曲なんだ。 コーラス部分の「Valentina baby」は、彼がそのビート全体を自分で書いてプロデュースしたんだ。 この曲は、彼が片思いしていた女の子についての物語なんだ。 彼はその曲を見せてくれて「これは本当に信じられない」と思ったよ! 君がこんなに素晴らしいとは知らなかった。 俺はバースを書き、この曲について考えたんだ。 俺たちは同じ家系だから、そういう気持ちを経験したことがあるし、自分の人生を当てはめて歌詞を書いたんだ。
Daniel Caesar – Valentina
アルバムについて
Daniel Caesarのアルバム「NEVER ENOUGH」は、全15曲収録されており、客演にはTy Dolla $ignやOmar Apolloなどのアーティストが参加しています。
さらに、アルバムタイトルは、ある日に船に乗っていた彼が偶然出会った船の名前に由来しており、Daniel Caesarはその時の思い出が今作のタイトルに名付けられたようです。
1年か2年前くらいのある日。 俺は船の上で、何かが足りないとぼやいていたところ、別の船が浮かんできたんだ。 その船の名前が「Never Enough」だったんだ。 面白い名前の船だったね。 その時、俺は南フランスにいたんだけど、船に乗っていた人たちと話し始めたら、彼らはトロント出身だったんだ。 それで「面白いな」と思ったね。 自宅から遠く離れていたのに、この船でトロントの家族に会ったんだ。 偶然としか思えないような瞬間だったね。
アルバムのオープニングを飾る「Ocho Rios」は、ジャマイカの地名オーチョリオスから引用されたもののようです。
この曲名は、彼自身がジャマイカ系であることから、自身のルーツを示すものである可能性があります。
Daniel Caesar – Ocho Rios
アルバムの6曲目の「Always」は、DJ Khaledの「No Brainer」やKehlaniの「Nights Like This」を手掛けたSir Nolanがプロデュースしています。
Daniel Caesarのソウルフルな歌声と、温かみのあるビートがマッチしたナンバーに仕上がっています。
Daniel Caesar – Always
8曲目の「Disillusioned」は、SZAの「I Hate U」やLogicなどを手掛けたことで知られるSir Dylanがプロデュースしています。
また、ゲスト参加しているserpentwithfeetは、ボルチモア出身のシンガーで、Ty Dolla $ignやBaby Keemなどの楽曲のライターとしても活躍しています。
Daniel Caesar – Disillusioned
アルバムの最後を締めくくる「Unstoppable」は、ジャマイカでレコーディングされた曲で、クレジットされていないものの、ジャマイカのアーティストChronixxが参加しています。
Daniel Caesarは、この曲について最も気に入っている曲であるようです。
今まで作った曲の中で、1番好きというか、1番誇りに思っている曲だよ。 間違いなくね。 俺たちはジャマイカに出かけて、雨の中でフリースタイルしたんだ。 素晴らしかったよ。
Daniel Caesar – Unstoppable
アルバムの「ボーナスバージョン」をリリース
今作は、前作のアルバムと比べ、彼自身がプロデュース楽曲の数が多く、より一層Daniel Caesarの世界観が表現された作品と言えるでしょう。
その結果、彼は制作プロセスが変わり、歌詞に対する考え方にも一層重きを置くようになったと述べています。
よりプロデュースするようになった。 (以前のプロジェクトでは)自分の部屋で一人でギターに曲を書いて、スタジオにボイスメモを持って行っていたんだ。 でも今は、スタジオに入ってギターを手に取り、コード進行を作ってから、歌詞が曲に続くことがあるね。 つまり、曲を作る順序が違ったんだ。 なぜなら、俺は実際の楽器のレコーディングも担当していたからね。 それを最初にやって、それが一番簡単だったから考える必要があまりなかったんだ。 それから、歌詞を深く考えることになったね。
また、Daniel Caesarはアルバムのリリースからわずか数日後、追加の3曲を含む「ボーナスバージョン」を発表しました。
このバージョンには、先に紹介した「Valentina」や「Always」のリミックスが収録され、Rick RossやSummer Walkerなどがゲストが参加しています。
さらに、デラックスエディションのリリースも明らかになっており、今後もDaniel Caesarの活動から目が離せませんね。
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