ジョージア州アトランタ出身のシンガーUsher (アッシャー)は、2004年に4枚目のアルバム「Confessions」をリリースし、自身初の全米チャートでの1位を獲得しました。
このアルバムは、全米アルバムチャートで9週連続1位を獲得し、2009年にTaylor Swiftが「Fearless」で11週連続1位を獲得するまで、最も長く1位を獲得したアルバムとして記録されました。さらに、このアルバムからシングルカットされた「Yeah!」「Burn」「Confessions Part II」「My Boo」は全米シングルチャート1位を獲得し、2004年にアメリカで最も出荷されたアルバムのトップとなり、797万8594枚を売り上げ、その年で最も売れたアルバムとなりました。
今回は、Lil Jon (リル・ジョン)とLudacris (リュダクリス)との共演曲「Yeah!」に焦点を当て、その詳細について解説します。
Usher feat. Lil Jon & Ludacris – Yeah! (2004)
“Yeah!” 楽曲情報
リリース日
2004年1月27日
レーベル
LaFace Records
Arista Records
プロデューサー
Lil Jon
「Yeah!」は12週にわたり全米チャートで1位を獲得
アルバム「Confessions」からのリードシングル「Yeah!」は、全米チャートで12週間にわたり1位を獲得し、2004年には最も売れたシングルとなりました。さらに、2000年から2010年までの10年間のチャートでも、Mariah Careyの「We Belong Together」に次ぐ2位を記録し、現在までに460万枚以上のセールスを記録しています。
さらに、この曲は世界10カ国以上のチャートでも首位に輝き、アルバムとともに大きな成功を収めました。この成功により、グラミー賞では8部門にノミネートされ、3部門で受賞の栄誉に輝きました。
Michael Jacksonの「Rock With You」のMVから着想を得て制作
「Yeah!」のMVは、カナダ出身のDirector Xが監督し、彼は1990年代から現在まで、Kanye West、 Jay-Z、Justin Bieber、Drake、Nicki Minajなどの人気アーティストのMVを100本以上手掛けています。
Director Xは以前にUsherのシングル「U Don’t Have to Call」と「U Got It Bad」のMVを制作しており、彼が「Yeah!」の楽曲を聴いた際には、レーザービームを思い起こさせると感じたようです。MVの撮影はロサンゼルスで2日間にわたり、Director XはMichael Jacksonのシングル「Rock With You」のMVで使用されたレーザービームにインスパイアを受けてこのアイデアを生み出しました。
そして、「Yeah!」のMVは2004年の「MTVビデオ・ミュージック・アワード」で、Usherに初めて「最優秀ダンス・ビデオ賞」と「最優秀男性ビデオ賞」の2つの賞をもたらし、その成功が称賛されました。
Michael Jackson – Rock With You (1979)
Petey Pabloの「Freek-a-Leek」から「Yeah!」へ
2003年末、Usherは所属レコード会社のArista Recordsに「Yeah!」が収録されているアルバム「Confessions」を提出しました。しかし、当時の社長L.A. Reidは、アルバムにはまだリードシングルとしてリリースできるポテンシャルを持つ曲が不足していると感じ、Usherにさらに数曲のレコーディングを行うように提案しました。また、Usherの音楽制作を助けるために、ラッパー・プロデューサーのLil Jonに協力を依頼しました。Lil Jonは、この当時の出来事を次のように語っています。
彼(Usher)はシングルが必要だったんだ。 彼らは「Burn」を持っていて、「Burn」はホットだったけど、最初のパワフルなモンスターが必要だった。 その時に俺が来たんだ。
Lil Jon自身も「Confessions」の制作に関わる数ヶ月前、ラッパーのMystikalのためにJive Recordsから15曲のプロデュースを依頼されました。しかし、Mystikalはその中から2曲しか選ばなかったため、余った曲を他のレコード会社に提供しようと考えていました。ところが、Lil Jonが気付かないうちに、Jive Recordsは余った曲の中からひとつをラッパーのPetey Pabloに提供し、それが後にシングル「Freek-a-Leek」となりました。
Petey Pablo – Freek-a-Leek (2003)
しかし、Lil Jonはこの曲がまだ誰にも使われていないと思い、Usherにプロデュースを任せ「Yeah!」の歌稿が出来上がりました。
その後、Petey Pabloが「Freek-a-Leek」をLil Jonに聴かせたことで、Lil Jonは過ちに気づき、Petey Pabloにさらなるトラックの制作を提案しました。しかし、Petey Pabloはすでにその曲がレコーディングされ、ラジオ局からの反応も良かったため、この曲を手放すことはありませんでした。
Lil Jonは、キャッチーな代替トラックを制作し、その結果がこの「Yeah!」でした。この曲はリリース前から全米中のDJに広まり、ラジオ局では驚異的な人気を獲得しました。そのため、アルバムから最初にリリースされる予定だった「Burn」の代わりに、「Yeah!」がリリースされ、最終的にアルバムの成功に大いに貢献しました。
さらに、Usherは、この曲がMVなしで1位になったことを「クールなこと」と評価し、Lil Jonのクランクサウンドのファンであったこと、そしてR&Bとクランクの融合が新鮮であったことを強調しました。
クールなことに、この曲はビデオなしでNo.1になったんだ。 俺は(Lil Jonの)クランクサウンドのファンだったんだ。 クリエイティブな面では、R&Bはクランクとは無縁だった。 彼は俺のためにこの曲を書いてくれたんだ。
おわりに
「Yeah!」はUsherのキャリアにおいて革命的な成功を収めた楽曲であり、Lil Jonとの協力によって生まれた偶然の出来事が音楽史に残る大ヒットとなりました。この曲の独自のサウンドとミュージックビデオは、多くの賞を受賞し、Usherのキャリアに輝かしい1ページを刻みました。
Usherの「Yeah!」をサンプリングしたJ Balvinの「Dientes」の記事はこちら。
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