BLACKPINKのROSÉ(ロゼ)と、世界的ミュージシャンであるBruno Mars (ブルーノ・マーズ)による2024年のコラボレーション・シングル「APT.」は、リリース直後から世界中のチャートを席巻し、社会現象を巻き起こした。
この楽曲は、単なるK-POPスターと洋楽アーティストの共演にとどまらず、韓国のローカル文化をグローバルなポップミュージックへと昇華させた“グローカル”な成功例として、音楽史に新たな1ページを刻んでいる。
ROSÉのパーソナルなルーツと、Bruno Marsのポップマジックが融合した「APT.」の魅力、そしてその成功の裏側にあるストーリーを掘り下げていく。
ROSÉ & Bruno Mars – APT. (2024)
リリースと背景:3年ぶりのソロと華麗な再出発
「APT.」は2024年10月18日にThe Black LabelとAtlantic Recordsからリリースされた。
この楽曲は、ROSÉが長年所属していたYG EntertainmentおよびInterscope Recordsを離れ、新たにAtlantic Recordsとグローバル契約を結んだ後、初のソロ作品である。2021年の「Gone」以来、約3年ぶりとなるソロシングルであり、彼女のデビュー・スタジオ・アルバム『Rosie』(2024年12月リリース)のリード曲として位置づけられている。
この曲は単なる復帰作ではなく、ROSÉにとって新しいキャリアの始まりを告げる作品であり、同時に自身のルーツを世界へ発信する意味も持っていた。
制作のきっかけは韓国の「飲みゲーム」

このユニークなコラボレーションのきっかけは、ROSÉがBruno Marsとその制作チームに韓国の飲みゲーム「아파트(アパート)」を紹介したことだった。
ROSÉはインタビューで、「友達とよく遊ぶお気に入りの韓国の飲みゲームで、シンプルで笑顔になれて、どんな場でも雰囲気を和ませてくれる」と語っている。
スタジオでROSÉがこのゲームのチャントを口ずさんだ際、Bruno Marsら制作陣がそのリズムと響きに惹かれ、「これを曲にしよう」と提案したという。
当初、ROSÉは“飲みゲーム”という日常的な題材が世界的に受け入れられるか不安を抱いていたが、チーム全員がそのユーモアと中毒性に魅了されたことで、自信を持ってBrunoにプロデュースを依頼した。こうして、世界的ヒット曲「APT.」が誕生したのである。
楽曲の本質:「アパートゲーム」が生んだポップ・パンクの中毒性

「APT.」は、アップテンポのポップを基調にしながら、ポップロックやポップパンク、ニューウェーブの要素を融合させたエネルギッシュなトラックである。
ROSÉのクリアで伸びやかなボーカルと、Bruno Marsの巧みなコーラスワークが調和し、軽快かつ一度聴いたら耳から離れない構成になっている。
この楽曲の核となるのは、コーラスに組み込まれた「아파트(アパートゥ)」という韓国語のチャントだ。
韓国の飲みゲームで使用されるこの掛け声が、曲全体に遊び心と中毒性のあるフックを生み出している。
音楽評論家の間でも、このフレーズは外国のリスナーにとって発音しやすく、リズムの心地よさがあると高く評価された。
また、このチャントを通して、これまで“クールで完璧”というイメージが強かったROSÉに、親しみやすく陽気な一面が見えた点も、ファンの間で大きな共感を呼んだ。
音楽的構成とルーツ:80年代ニューウェーブとサンプリングの妙
「APT.」のプロデュースには、Bruno MarsのほかCirkut、Omer Fedi、Rogét Chahayedといった豪華制作陣が参加している。彼らは現代的なポップの洗練された感覚を保ちながら、1980年代のポップ/ニューウェーブへのオマージュを織り込んだ。
特筆すべきは、Toni Basil (トニー・バジル)による1982年のヒット曲「Mickey」をサンプリングしている点だ。この引用によって、「APT.」は80年代ポップの明るさと、現代的なポップパンクのビートが融合した独自のサウンドに仕上がっている。
Toni Basil – Mickey (1981)
一部の評論家は、The Ting Tingsの「That’s Not My Name」などを連想させると指摘したが、全体としては近年のK-POPには見られない“純粋なポップソングの楽しさ”が詰まった楽曲として高く評価された。
世界的現象としての成功と文化的影響

「APT.」は商業的にも批評的にも大成功を収め、単なるヒットを超えた“文化的現象”となった。
Billboard Global 200では12週連続で1位を獲得し、2024年に最も長く首位を維持した楽曲として記録を残した。
韓国国内でもCircle Digital Chartで10週連続1位を記録し、オーストラリアのARIA Singles ChartではK-POP女性ソロとして史上初の1位を獲得。
さらにイギリスやアメリカでもトップ3入りを果たし、韓国女性アーティストとして前例のない快挙を成し遂げた。
YouTubeではアジア人アクトとして史上最速で10億回再生を突破し、SpotifyでもK-POPアーティストとして最速で10億ストリームを記録。
その勢いのまま、2024年のMAMA Awardsでは「Global Sensation賞」を受賞し、翌年のMTV Video Music AwardsではK-POPアクトとして史上初の「Song of the Year」に輝いた。
韓国文化の「グローカル」な発信
韓国の音楽評論家は、「APT.」を“韓国のローカル文化を世界に広めた象徴的作品”と評している。
PSYの「Gangnam Style」や「Gentleman」が“韓国語のユーモア”を世界へ広めたように、「APT.」は“アパートゲーム”という日常の遊びをグローバルなミームに変えた。
ミュージックビデオでは、Bruno Marsが韓国国旗(太極旗)を振り、「건배(乾杯)」と叫ぶシーンが印象的だ。
この演出は、“ローカル文化が世界を席巻する”という希望を象徴しており、K-POPファンの間で「文化的勝利」として語られるようになった。
「APT.」は、ROSÉが自らのルーツを誇りを持って世界に紹介した作品であり、ポップミュージックにおける“ローカルとグローバルの融合”を体現した歴史的な一曲である。



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