「Young, Wild & Free」元ネタは?サンプリング・制作秘話・映画『Mac & Devin Go to High School』まで完全解説

2010年代
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Snoop Dogg & Wiz Khalifaの「Young, Wild & Free」は、Bruno Marsをフィーチャーした2011年のヒット曲だ。サンプリング元はTom Scottの「Sneakin’ in the Back」(1974年)とYGの「Toot It & Boot It」(2010年)で、作曲クレジットにはなんと17名もの名前が並ぶ。

全米Billboard Hot 100で最高7位を記録し、第55回グラミー賞ではBest Rap Songにノミネートされた——そして実は、Wiz Khalifa本人が最初この曲を「好きじゃなかった」という裏話がある。

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🎧 クイック概要:10秒でわかる基本データ

項目内容
アーティスト / 曲名Snoop Dogg & Wiz Khalifa feat. Bruno Mars / Young, Wild & Free
収録アルバムMac & Devin Go to High School (Soundtrack, 2011)
主なサンプリング元Tom Scott – Sneakin’ in the Back (1974)
YG – Toot It & Boot It (2010)
最高位米Billboard Hot 100 7位
Billboard Rhythmic Top 40 首位(3週)
仏・スイス 6位 / 豪4位 / NZ 2位
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Wiz Khalifaは最初「好きじゃなかった」——Snoop Doggに口説かれて録音した

「Young, Wild & Free」に関する最も意外なエピソードから話しておきたい。

2023年のインタビューでWiz Khalifaはこう打ち明けている。この曲が最初に来たとき、Wizは正直に言って「好きじゃなかった」と。今や彼の代名詞的な曲のひとつなのに、だ。

それを変えたのがSnoop Doggだった。Snoop本人はMTVのインタビューでこう語っている。

「Bruno Marsが俺に音楽を送ってきて、俺がWizにその音楽を聴かせたら、Wizは気に入った」

つまりBruno Marsが先に楽曲を仕上げてSnoop Doggに送り、SnopがWiz Khalifaへ橋渡しした形だ。Snoop Doggに「一緒にやろう」と引き込まれる形でレコーディングを終え、完成したものをBruno Marsに戻してMarsが最後の仕上げを施した。MTVのインタビューでWizは最終的にこう語っている。

「これはファミリーの仕事だよ」

「See You Again」(2015年)と並ぶキャリア最大のヒット曲の出発点が「ノー」だったというのは、なんとも人間らしい話だ。

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もともと「世に出るつもりのなかった曲」だった——The Smeezingtons制作秘話

「Young, Wild & Free」をプロデュースしたのはBruno Marsの制作チーム「The Smeezingtons」、つまりBruno Mars・Philip Lawrence・Ari Levineの3人だ。

American Songwriterのインタビューでフィリップ・ローレンスはこう述べている。

「あの曲は"afterthought(後付け)"みたいなものだった。でも、あの制作の裏には楽しさがたくさん詰まっている」

スタジオで実験的にセッションをしながら「何かひっかかるものが出てくるまで歌い続ける」というプロセスで生まれた曲で、チームは最初「これはただのちょっとした遊びで、世に出ることはないだろう」と思っていた。

転機は当時アトランティック・レコードのA&RだったAaron Bay-Shuckのひと言だった。The Smeezingtonのデモが宙ぶらりんの状態になっていたところを、デモを聴いた彼が「これはスマッシュヒットだ、絶対に完成させなければならない」と主張し、Snoop DoggとWiz Khalifaへとつないでいくきっかけを作った。Snoop Doggに届いた楽曲はWiz Khalifaに渡り、3者がそろってフル制作へと動き始めた。

誰も「ヒットする」と思っていなかった曲が、一人のA&Rの直感で動き始めたわけだ。

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サンプリングの解剖——2曲のネタが合体して作曲クレジット17名の怪

「Young, Wild & Free」のビートには、2つの重要な音楽的参照が存在する。

①Tom Scott「Sneakin’ in the Back」(1974年)

ドラムブレイクのサンプリング元は、ジャズ・フュージョンミュージシャンのTom Scottが1974年にリリースしたアルバム『Tom Scott and The L.A. Express』収録の「Sneakin’ in the Back」だ。この曲はサンプリングの世界では伝説的なブレイクビーツで、Massive AttackのデビューアルバムBlue Lines(1991年)収録の「Blue Lines」にも使われた歴史がある。ヒップホップとUKアンダーグラウンドの両方に深く根を張るクラシックネタだ。

②YG「Toot It & Boot It」(2010年)のインターポレーション

もうひとつの参照は、カリフォルニアのラッパーYGが2010年にリリースした「Toot It & Boot It」のインターポレーション(メロディや構造を参照しながら再演奏する手法)だ。この曲自体もThe Associationの「Songs in the Wind」(1966年)をサンプリングしており、「Young, Wild & Free」はいわばサンプリングの連鎖の上に乗っかった楽曲だ。

この2曲のサンプリング・インターポレーションの結果、作曲クレジットには合計17名もの名前が連なることになった。ポップ/ヒップホップの楽曲としては異例の多さだ。

YG「Toot It & Boot It」の記事はこちら。

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映画が先か、曲が先か——「Mac & Devin Go to High School」という奇妙な出発点

「Young, Wild & Free」が生まれた背景には、映画プロジェクトの存在がある。

Snoop DoggとWiz Khalifaは2011年初頭、共同で映画とサウンドトラックを制作する計画を発表した。当初は「That Good」という曲がリードシングルになる予定だったが、最終的に「Young, Wild & Free」がその座を奪った。Snoop Doggはインタビューで「スタジオで2人がフリースタイルをしているうちにこの映画の世界観が生まれた」と語っており、曲と映画が並走しながら育っていったプロジェクトだと言える。

映画の設定もユニークだ。Snoop Doggが演じるのは「Mac」という、高校に15年間在籍し続けているスーパーシニア。Wiz Khalifaが演じるのは卒業総代スピーチを書こうと悪戦苦闘している真面目な優等生「Devin」。現実の2人のイメージとまるで逆で、これは明らかなメタギャグだ。大麻映画でWiz Khalifaがシラフ役というのは、知っている人が見るとニヤリとせずにはいられない。

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ミュージックビデオの裏側——「N. Hale High School」のダジャレに気づいたか

MVは2011年10月19日、カリフォルニア州モントクレアにあるミッション・ティキ・ドライブインシアターで撮影された。監督は映画本編と同じDylan Brown。

MVの舞台となる高校の名前は「N. Hale High School」。Wikipediaにも明記されているとおり、これは「inhale(吸い込む)」のダジャレだ。気づかずに観ていた人も多いはずだ。

映像の中でSnoop DoggとWiz Khalifaはゴーカートを運転し、Wiz Khalifaはゾーブ(人が中に入って転がる球体ボール)でぐるぐる回り、スリップ・スライドで滑り降りる。本人たちのコメントによれば「撮影中ずっとハイな状態だった」とのことで、映像の空気感がそのまま伝わってくる。

Snoop DoggはMTVのインタビューでこのビデオについてこう言っている。

「若くて、野性的で、自由——そのお祝いだよ。ただ楽しい時間を過ごしているだけさ」

なお、Bruno MarsはMVには登場しない。WikipediaのYoung, Wild & Free項目に「Mars was not seen in this footage, implying that he would not appear in the video」と明記されており、映像はSnoop DoggとWiz Khalifaの2人が主役だ。Marsのボーカルはコーラスとして曲全体に響いているが、姿は映像に映らない。

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歌詞が言いたいこと——「ハイになって何が悪い?」という解放宣言

「Young, Wild & Free」の歌詞は驚くほどシンプルだ。「酔っ払ったらどうした」「大麻を吸ったらどうした」「楽しんでいるだけだ」「誰に見られたって気にしない」——突き詰めるとそれだけだ。

Bruno Marsのコーラス「So what we get drunk / So what we smoke weed / We’re just having fun / We don’t care who sees」は、人の目を気にせず自分らしく生きることへの讃歌として機能している。

Snoop Doggのバースには懐古的な温度がある。「It’s like I’m 17 again(また17歳に戻ったみたいだ)」と言い、ピーチファズ(産毛)が顔に生えていた頃を思い出す。当時39〜40歳だったSnoop Doggが「若さ」を歌う——その少し哀愁を帯びたノスタルジーが、曲に不思議な奥行きを与えている。

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チャートの軌跡——初週159,000DLでデビュー、Rhythmic首位3週

「Young, Wild & Free」はリリース直後から快調に滑り出した。

初週の売上は159,000デジタルコピーで、Billboard Hot 100に10位でデビュー。その後最高7位まで上昇し、Billboard Rhythmic Top 40では3週連続首位を記録した。Hot Rap Songsでも4位まで上がっている。

国際的にも健闘した。フランスとスイスで6位、オーストラリアで4位、ニュージーランドで2位を記録し、グローバルなヒットとなった。サウンドトラックアルバム『Mac & Devin Go to High School』はBillboard 200で29位にデビューし、RIAAのゴールド認定を取得している。

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グラミーノミネートと映画の惨敗——同じ作品の、まったく違う運命

2013年の第55回グラミー賞で「Young, Wild & Free」はBest Rap Songにノミネートされた(受賞には至らなかったが)。2010年代初頭のヒップホップシーンにおけるこの曲の影響力を示す記録だ。

一方、映画『Mac & Devin Go to High School』の運命は曲とは正反対だった。批評家からは酷評が相次ぎ、劇場公開すら叶わないまま2012年7月3日にDVD/Blu-rayのダイレクト・トゥ・ビデオとしてリリースされた。

AllHipHopのJP DelaCuestaは10点満点中3点を付け「これほど悪い映画はない」と断言した。The A.V. ClubのNathan Rabinはさらにこう書いている。

「『Young, Wild & Free』はMac & Devin Go to High Schoolが目指していたすべてのもの——楽しく、軽やかで、バカバカしく、エンターテイニングで、若々しい——を体現しているが、映画自体はそうではない」

同じプロジェクトから生まれながら、曲と映画の評価がここまで乖離するのは珍しい。映画は失敗したが、曲は生き残った。逆に言えば、映画がなければ「Young, Wild & Free」は生まれていなかったわけで、そこには何とも言えない皮肉がある。

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大麻文化とポップカルチャーへの影響——2023年に「歴代ウィードソング」として再評価

「Young, Wild & Free」の文化的意義は、単なるヒット曲の枠を超えている。

Billboard誌は2023年に「歴代ウィードソング25選」を発表し、この曲を選出した。「Snoop Doggのベテランとしての存在感、Wiz Khalifaの台頭するスター性、Bruno Marsのメロディアスなフック——この3つが合わさって、大麻ライフスタイルをポップカルチャーのど真ん中に持ち込んだ」という評価だ。

2010年代から2020年代にかけてアメリカ国内で大麻の法的地位が変化していく中で、この曲は一種のカルチャー的タイムカプセルとして機能している。「楽しんでいるだけ、誰も傷つけていない」というメッセージは、大麻の娯楽使用をめぐる社会的議論と並走するように広まっていった。

Wiz Khalifaのキャリアという文脈でもこの曲は重要だ。「Young, Wild & Free」の成功がメインストリームへの橋渡しとなり、2015年にはPaul Walkerへのトリビュート曲「See You Again」でBillboard Hot 100を12週首位(非連続)という大記録を樹立することになる。

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まとめ——「後付け」と「渋々」から生まれた、時代を超えるアンセム

「Young, Wild & Free」は、あらゆる意味で「消極的な出発点」から生まれた曲だ。

The Smeezingtonはお蔵入りのつもりだった。Wiz Khalifaは最初「好きじゃない」と言った。映画は大コケした。それでも曲は世界中のラジオで流れ、Rhythmic首位を3週守り、グラミーにノミネートされ、2023年に「歴代ウィードソング」として改めて評価された。

「So what we get drunk, so what we smoke weed, we're just having fun, we don't care who sees」

他人の目を気にするな、というこの歌詞は、曲の誕生プロセスそのものを映し出しているようだ。誰かの「これはスマッシュヒットだ」というひと言と、Snoop Doggの「一緒にやろう」という口説き文句がなければ、この曲は永遠に世に出なかっただろう。

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