2025年8月1日、YG (ワイジー)がR&BシンガーのLeon Thomas (レオン・トーマス)を迎えた新曲「LOVERS OR FRIENDS」をリリースした。
次作アルバム『The Gentleman’s Club』からの先行シングルという位置づけの本作は、ファンクとウェストコーストの香りをまといながら、サウンドにも映像にも“洗練”という言葉がぴったりと当てはまる一曲である。
この「LOVERS OR FRIENDS」は、リスナーにとって“夏のドライブに似合う曲”であると同時に、“誰かとの関係を見つめ直したくなる曲”でもある。
YG & Leon Thomas – LOVERS OR FRIENDS (2025)
感情の揺らぎを映す言葉と旋律

Leon Thomasが歌うサビはシンプルで、しかし核心を突く。
“Are we lovers or are we friends? / Please don’t make me have to ask again…”
恋人なのか、それともただの友達なのか──この問いかけが繰り返されることで、楽曲は一貫して「関係の曖昧さ」という普遍的なテーマを追っていく。
情熱的な関係を持ちながら、相手からは“友達”としての距離感を押し付けられる。そのモヤモヤとした葛藤を、YGとLeon Thomasはそれぞれの視点から描き出している。
YGはリリックの中で、体だけの関係に留まっていることへの苛立ちや疑念を吐露する。「恋人じゃないなら、なぜこんなことをする?」という彼の問いは、無言のうちに「本気で向き合ってほしい」という願望もにじませる。
一方でLeon Thomasは、「遊びなのか本気なのか、ハッキリしてくれ」と訴える。2人のボーカルが交錯することで、“都合のいい関係”に置かれた側のリアルな心情が浮き彫りになるのだ。
Ty Dolla $ignによる極上のファンクR&B
本作のプロデュースを手がけたのは、Ty Dolla $ign。ファンクを軸にしながらも、空気のように軽やかなグルーヴと、夏の風を思わせる清涼感をまとったトラックは、まさに彼の真骨頂といえる。
そこにLeon Thomasの繊細で透明感あるコーラスと、YGのダイレクトで男臭いラップが加わり、絶妙なコントラストを生んでいる。
この楽曲が秀逸なのは、いわゆる「感情の混乱」を、どこか艶やかに、そして洒脱に描き出している点にある。クラブでも、夜の街でも、自室のスピーカーでも違和感なく鳴らせるバランス感が魅力だ。
ビジュアルに込められた物語とオマージュ
ミュージックビデオはモノクロの映像で統一されており、スーツ姿のYGとLeon Thomasが織りなす世界観は、どこかクラシカルで、どこか挑発的だ。
ダンサーによる滑らかな振付とライブバンドの演奏、そして映像全体に漂う“グロウン&セクシー”なムード。それはまるで、大人の恋の曖昧さを映像として具現化したようでもある。
特筆すべきは、映像の中でマイケル・ジャクソン「Smooth Criminal」へのオマージュと思われる演出が見られる点だ。ある意味でこの引用は、愛と欺瞞の駆け引きがまるで“犯罪”のようにスリリングであることを暗示しているのかもしれない。
そしてビデオの最後には、YGの恋人と思われる女性が、別の男性に迎えられて去っていく──この視覚的な“終わり”は、楽曲のテーマそのものを強烈に補完している。
アルバム『The Gentleman’s Club』への序章
このシングルは、YGの8枚目のスタジオアルバム『The Gentleman’s Club』(2025年10月3日リリース予定)からの一曲であり、すでに公開されている「HOLLYWOOD」や「2004」と共に、作品全体の方向性を示す重要なパーツである。
タイトルが示す通り、『The Gentleman’s Club』は、YGがこれまで築き上げてきた“ギャングスタ・ラップ”のイメージとは一線を画し、よりスタイリッシュかつ内省的な作風に仕上がっている。
特に「2004」では、YGが14歳のときに経験した性的虐待を赤裸々に語り、その痛みと向き合う姿を楽曲に刻み込んでいる。男性が被害者であることの語りにくさ、そして癒やしのプロセス。そのすべてが、彼のラップに込められているのだ。
このアルバムは単なる音楽作品ではない。トラウマ、メンタルヘルス、自己解放といった、これまでヒップホップでは“語りにくかった”テーマに正面から向き合った一作となっている。ウェストコーストの土壌を踏まえながら、よりソウルフルで感情的なサウンドへと歩を進めるYGの姿は、キャリアの新章にふさわしい。
YG feat. buddy & the gang – 2004
自らを再定義する年──そして、その幕開けとしての「LOVERS OR FRIENDS」
2025年、YGはこれまで所属していたDef Jamを離れ、インディペンデントアーティストとして新たな一歩を踏み出した。加えて、音楽活動にとどまらず、サプリメントブランドを立ち上げるなどビジネス面でも積極的に展開を広げている。
かつて“ギャングスタ・ラップの旗手”として注目を集めた彼が、今やパーソナルな痛みや内面の葛藤を音楽で語る存在へと変貌しつつあるのは明白だ。
そうした“再定義”の年に放たれた「LOVERS OR FRIENDS」は、まさにその変化の象徴と言えるだろう。
Ty Dolla $ignによるスタイリッシュなトラックに乗せ、Leon Thomasの繊細なコーラスとYGの赤裸々なリリックが響き合うこの楽曲は、ただのラブソングではない。恋人と友達の境界で揺れ動く人間関係というテーマを通じて、YG自身が過去の自分とどう向き合い、どんな未来を描こうとしているのかが浮かび上がってくる。
モノクロ映像のミュージックビデオ、MJを想起させるオマージュ、そして物語の結末に込められたメッセージ──「LOVERS OR FRIENDS」はそのすべてにおいて、YGのアーティストとしての進化を感じさせる作品である。
この曲が今後リリースされるアルバム『The Gentleman’s Club』にどんな物語を添えていくのか。YGという一人の表現者が、どこまで自分の内面をさらけ出していくのか。聴き手として、その歩みを見届けずにはいられない。
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