「Lemonade」とは?元ネタ・制作秘話・歌詞の意味を徹底解説|Internet Moneyの世界的ヒット曲

Hip Hop / Rap
Hip Hop / Rap2020年代
記事内に広告が含まれています。

Internet Money feat. Don Toliver, Gunna & NAVの「Lemonade」は、2020年8月にリリースされたコロナ禍最大のヒット曲のひとつだ。元ネタ(サンプリング元)は、シンガーソングライター・Jozzyが2017年に録音したデモ楽曲「Lemonade」で、そのメロディをDon Toliverが熱量あふれるコーラスとして歌い上げたことで楽曲の核が完成した。全米Billboard Hot 100で最高6位・英シングルチャート首位を獲得し、TikTokの爆発的なバイラルを追い風に世界35か国以上でチャートインした、ポップ・トラップを代表する時代の一曲だ。

スポンサーリンク

🎧 クイック概要:10秒でわかる基本データ

項目内容
アーティスト / 曲名Internet Money feat. Don Toliver, Gunna & NAV / Lemonade
収録アルバムB4 the Storm (2020)
主なサンプリング元Jozzy – Lemonade (2017年デモ)
最高位米Billboard Hot 100 最高6位 英シングルチャート 首位 US Rhythmic Airplay 首位
スポンサーリンク

Internet Moneyとは何者か

Internet Moneyは、ヒップホップ・プロデューサーのTaz Taylorが2016年頃に立ち上げたプロデューサー集団兼レーベルだ。フロリダ州ジャクソンビル出身のTaz Taylorは、中学校(7年生)を中退後、17歳で母親のがん診断をきっかけに生活費を稼ぐ手段としてビートメイクを始め、インターネット上でいわゆる「タイプビート」を販売することで生計を立ててきた人物だ。

レーベルを立ち上げた動機は、業界への純粋な反発にある。自分たちプロデューサーが大物アーティストに音楽を使われても、クレジットもロイヤリティもまともに支払われない——そんな現状に不満を抱いたTaylorは、「自分たちのレーベルで自分たちのルールを作る」ことを決意した。レーベル名「Internet Money」は、インターネット上でビートを売りさばいて稼いだ資金というそのままの出自を体現している。

集団の中核をなすのが、Taz Taylorと当時15歳だったNick Miraだ。Nick Miraは17歳のときにXXXTentacionの「Fuck Love」でヒットプロデューサーとしての名を轟かせ、2018年にはJuice WRLDの「Lucid Dreams」を共同プロデュースして世界的な名声を得た。「Lemonade」以前にも、Internet MoneyはLil Teccaの「Ransom」やTrevor Danielの「Falling」を手がけており、「Lemonade」はデビューアルバム「B4 the Storm」の2枚目のシングルとして世界に放たれた。

スポンサーリンク

元ネタはJozzyの幻のデモ音源:再生3,000回が全英1位になるまで

「Lemonade」の核となるメロディとフックは、シンガーソングライターのJozzyが2017年に録音したデモ楽曲に由来する。

Jozzyは一般にはあまり知られていないが、業界内では「陰のヒットメーカー」として認知されている人物だ。Lil Nas Xの「Old Town Road」(2019年)のリミックスで、Billy Ray Cyrusが歌ったバースの歌詞を書いたソングライターとして知られており、ヒット曲の裏側を支える実力は折り紙付きだ。

JozzyはTaz Taylorおよびアーティスト・Johnny Yukonと共に、2017年10月7日にこの「Lemonade」を制作した。当初はLil Skiesへの提供を想定して書かれた楽曲で、Jozzy自身もリリースしたが、再生回数はわずか3,000回程度でまったく話題にならなかった。

それがなぜ2020年の世界的大ヒットへと繋がったのか。その経緯をTaz Taylor本人がVariety誌のインタビューで明かしている。

「自分のA&Rに『アルバムに入れるべき過去3年間の曲がないか?』と聞いたら、彼が『Lemonadeはどうだ?』と言った。俺は『それがどうした?』と返した。そしたら彼が『DonがあのトラックをカットしたのをTaylorは知らないだろ?』と言うじゃないか。全然知らなかった。」

Taz TaylorはA&Rから指摘されるまで、Don Toliverが自分たちのデモにコーラスを乗せていることをまったく知らなかった。自分のレーベルのA&Rに教えてもらうという、なんとも間の抜けた(だからこそ面白い)話だが、これが「Lemonade」誕生の決定的なきっかけだった。

Don Toliverは自分の声が使われることを知らなかった

「Lemonade」にはもうひとつ、奇妙な経緯がある。Taz Taylorは、A&Rを通じてToliverがすでにこのデモにコーラスを乗せていることを把握した。TaylorがToliverのデモを聴いたのはオリジナル音源とアカペラ音源だけで、Toliverは自分の声が使われることをまだ知らされていなかった。

Variety誌のインタビューでTaz Taylorはこう語っている。

「I heard it on the original beat Jozzy cut. I said, 'All right, well I need the acappella.' They sent it and we made the song right then. I got Nav and sent it to Gunna, he got on it and I put it out.」

——つまりTaylorはア・カペラを手に入れた瞬間にビートへ乗せ、そのまま完成させてしまったのだ。Toliverは正式にフィーチャリングとしてクレジットされることになったが、知らぬ間にコーラスが世界的ヒットのフックになっていた——これだけでも十分すぎるほどドラマがある。

ビートの誕生:Nick MiraのリビングでiPhoneが生んだ世界ヒット

「Lemonade」のビートには、かなりユニークな制作過程がある。

A&Rからデモ楽曲の存在を知らされたTaz Taylorが、Internet Moneyのプロデューサー陣とビートの構築に着手した。決定的な要素を加えたのは、Internet Money所属のアーティスト・プロデューサーAlec Wigdahlだ。彼はNick Miraの自宅のリビングルームで、iPhoneを使ってギターのフレーズを録音した。Nick MiraはそのギターループをDAWに取り込み、「Lemonade」の特徴的な跳ねるような(bouncy)ビートへと組み上げていった。

Nick Miraはその後の流れをこう語っている。

「ビートが完成したとき、GunnaとNAVをフィーチャーに呼ぶのは自然な流れだった」

なお、Taz TaylorはもともとDon Toliverのレーベルボス・Travis Scottをフィーチャーに想定していたという逸話もある。ギターのメロディがTravis Scottの「Yosemite」(GunnaとNAVも参加したAstroworld収録曲)を思わせたためだ。しかし最終的にはDon Toliverが自らのコーラスで楽曲の核を担うことになり、Travis Scottの参加は幻に終わった。プロデューサーの陣容は最終的にTaz Taylor、Nick Mira、Alec Wigdahl、E-Trou、Pharaoh Viceの5名体制となった。

GunnaはCafeteriaのつもりで録音したら、Lemonadeだった

「Lemonade」の制作をめぐって、もっとも笑えるエピソードがGunnaのバース録音にまつわる「大いなる勘違い」だ。

当時Gunnaは、Travis ScottのDJとして知られるChase Bとともに「Cafeteria」というシングルを制作している最中だった(Chase BはDon Toliverとともに「Cafeteria」をリリースしており、その日付は「Lemonade」のちょうど3週間前だ)。Taz Taylorがアルバムに向けてGunnaを起用しようとしたとき、GunnaはてっきりCafeteria用のバースだけを録音したつもりでいた。

ところが実際には、Gunnaは2曲分のバースを録音していた。うち1本が「Lemonade」用だったのだ。

「GunnaはCafeteriaのバースをカットしたと思ってた。でも実際には彼はLemonadeのバースも録音していた。だからCafeteriaのバースも改めて入れてもらう必要があった。本当に大混乱だったよ。ラッキーなことに、彼は両曲とも対応してくれた」

さらにVariety誌のインタビューでは、もうひとつ知られざる舞台裏をTaz Taylorが明かしている。元々「Lemonade」には、Don Toliverのバース・NAVのバース・Gunnaのバース全員ぶんが収録された4分50秒バージョンが存在した。しかしToliverはコーラス(フック)に専念するためバースを外すことになり、TaylorはToliverなしのバージョンを自分のレーベルに提出した。ところが、TaylorのレーベルはToliverのレーベルにバース入りのバージョンを送ってしまい、そちらが承認されてしまった。

いざリリースしてみるとToliverのバースが入っていないことに気づいたToliverから「どうなってる?」と連絡が来た。Taz Taylorはその場を「リミックスで入れよう」と説得してなんとか収め、実際にRoddy Ricch版リミックスでToliverはバースを披露することになった。Taylorは「本来こんなに大きなヒットになるはずじゃなかった。あらゆることがうまくいかなかったのに、それでも曲は上がっていった」と笑いながら振り返っている。

NAVの参加については、GunnaがXOレーベル(NAVの所属レーベル)と親密な関係にあったことが橋渡しになった。XO側もすぐに協力的に動き、NAVのフィーチャーはスムーズに実現した。

MV撮影は気温49度の砂漠:スポンジ・ボブをテーマにした水中世界

「Lemonade」のミュージックビデオを手がけたのは、Lyrical Lemonadeを主宰するCole Bennettだ。「Lyrical Lemonade」と「Internet Money」の名前にどちらも「Lemonade」という単語が入っているという、偶然とも必然ともとれる縁がこのコラボを生んだ。

Cole BennettはアルバムB4 the Stormを事前に通して聴き、「Lemonade」を気に入ってビデオ制作に乗り出した。撮影はLAの砂漠地帯で行われたが、現場の気温は約49度(華氏120度)という極限の暑さだった。Nick Miraはこう振り返っている。

「コール・ベネットのチームは最高だった。砂漠で120度の中、俺はビデオに映ってもいないのに疲弊しきった。でも彼のビジョンが全部実現して、それだけの価値があったと思う」

完成したMVは、Nickelodeonのアニメ「スポンジ・ボブ」をモチーフにした水中世界がテーマだ。アーティストたちはレモネードで満たされた水槽の中で豪華な生活を送り、GunnaはボートからNAVとToliverが泳ぐ海を釣り竿で眺めるという構図になっている。人魚や海の生き物たちに取り囲まれながら、高級車・ジュエリー・ファッションを身にまとったアーティストたちの映像をRevoltのジョン・パウエルは「未来的な旧式車と高級宝飾品が共存するヴィジョン」と評した。

Roddy Ricch版リミックスのMVでは、Taz TaylorとNick Miraがレモネードのトラックを街中で走らせながら市民にレモネードを配るという茶目っ気たっぷりの演出になっており、Lil Nas Xがカメオ出演している。

歌詞の意味:「ice」はジュエリーか、それとも氷か

「Lemonade」の歌詞は、GunnaとNAVによるラッパーのサクセスストーリーと快楽的なライフスタイルの描写が中心だ。Uproxxのレビュアー・Wongo Okonは「アーティストたちがイエローダイヤモンドの輝きとアイシーな質感にとりつかれ、成功を心から享受している」と分析している。

コーラスを担うDon Toliverが巧みに使っているのが「ice」という単語のダブルミーニングだ。ヒップホップスラングとして「ice」は高級ジュエリー(ダイヤモンド)を指すが、同時にレモネードに浮かぶ氷(lemonade with ice)という文字通りの意味も重なる。このダブルミーニングが楽曲タイトルと歌詞を有機的に結びつける、洒落た仕掛けになっている。

Stereogumは、Toliverのパフォーマンスについて「SoundCloudラッパーというよりも、オールドスクールなソウルシンガーやレゲエシンガーに近い重厚さを持ったコーラス」と表現した。その熱量こそが「Lemonade」を単なるトラップの文脈を超えた、普遍性のある楽曲にしたと指摘している。

TikTokとロックダウンが作り上げたバイラル旋風

「Lemonade」が全世界で爆発的にヒットした最大の要因のひとつが、2020年のCOVID-19パンデミックによるロックダウンとTikTokの爆発的普及が重なったタイミングだ。

Stereogumはこの現象について、Don Toliverの情熱的なコーラスがTikTokのミームを生み出す素地を作ったと分析した。大学生への言及やコーデインへのトリップなど、ティーンエイジャーが自分と重ね合わせやすいリリックが次々とTikTok上のネタとして拡散し、ストリーミング数を押し上げていった。

Taz Taylor自身もFlaunt誌のインタビューでその影響力を認めており、こんなコメントを残している。

「一回も聴かない。彼女がTikTokを見てるときに流れてくることはあるけど」

自分が作った曲なのに「彼女のTikTokで流れてくる以外では聴かない」という話には思わず笑ってしまうが、それだけTikTokでの露出が圧倒的だったということでもある。ロックダウン中に家でスマホを眺めていた何百万人もの人々がこのトラックに出会い、踊り、シェアした。その連鎖が全英1位・全米6位という結果に結晶したのだ。

チャート記録:全35か国以上でヒット、英米で歴史的成績

「Lemonade」が叩き出したチャート成績は、参加した全アーティストにとって過去最高位の記録となる国が続出した。

アメリカでの記録

  • Billboard Hot 100 最高6位(Internet Money、Don Toliver、Gunna、NAV全員にとって当時の過去最高位)
  • US Hot R&B/Hip-Hop Songs 最高3位
  • US Rhythmic Airplay 首位
  • US Rolling Stone Top 100 首位
  • 米RIAA認定:4×プラチナ(400万ユニット以上)

イギリスでの記録

  • 英シングルチャート 首位(参加全アーティストで初の英首位)
  • 英BPI認定:2×プラチナ(120万ユニット以上)

グローバルでの記録

  • Billboard Global 200 最高4位
  • ギリシャ・ポルトガルでも首位を獲得
  • オーストラリア最高5位、カナダ最高3位、ドイツ最高2位、スウェーデン最高3位など35か国以上でチャートイン
  • フランス・ブラジルでダイヤモンド認定
  • カナダ・ニュージーランドで4×プラチナ認定

リミックス2種:Roddy RicchとAnuel AAが参加

「Lemonade」は大ヒットを受け、2種類のリミックスがリリースされた。

1本目は2020年9月30日リリースのRoddy Ricch & Don Toliverによるリミックスだ。GunnaとNAVは外れ、代わりにRoddy Ricchが新たなバースを加え、Don Toliverも追加バースを録音した。このバージョンは「B4 the Storm」のコンプリート・エディションに収録されている。

2本目は2020年11月20日リリースのラテン・リミックスで、プエルトリコのラッパーAnuel AAがオリジナル版のメンバーに加わる形で制作された。

また、2022年9月14日にはNAVの4枚目のアルバム「Demons Protected by Angels」のボーナストラックとして「Lemonade」が収録された。リリース当初は単独のボーナス曲扱いだったものが後から正式にアルバムへ採用されるという、異例の経緯も話題を呼んだ。

Taz Taylorの哲学:「Lemonadeができても、次に行く」

「Lemonade」が世界的大ヒットを記録した後も、Taz Taylorの姿勢はまったく揺るがなかった。Variety誌のインタビューではこう語っている。

「俺はマスターを持っている、自分のレーベルでリリースした。でもそれを"作った"という感覚はない。前日に何をやったかは関係ない。プラチナを取ったとか、Billboardに入ったとかは何も意味しない。俺はもっと限界を押し広げたい」

同じVariety誌のインタビューで、自身の音楽哲学をカニエ・ウエストへの憧れと絡めてこう表現している。

「カニエがやったようなことをやりたい、次元の違うことを。でも人々はLemonadeみたいなものを聴きたがる。俺は天使と悪魔のはざまで戦っている。どうやってキャンディの中に薬を入れるか、自分を満足させながら彼らが必要なものを届けるか」

ヒットを作っても執着せず、次の音楽へ向かい続ける。その姿勢こそがInternet Moneyの底力を支えている。

まとめ:iPhoneのギターとTikTokが世界を動かした

「Lemonade」は、インターネットで生きてきたプロデューサーたちが、インターネットを通じて世界を制したという意味で、時代の必然的産物だ。

2017年に再生3,000回しか得られなかったJozzyのデモが、2020年のロックダウン下でTikTokの波に乗り、全英首位・全米6位・35か国以上でのチャートインを果たすまでの道のりは、現代の音楽産業のダイナミズムをそのまま体現している。Alec WigdahlがiPhoneで録ったギターのフレーズ、Gunnaが「Cafeteria」だと思って録音したバース、Toliverが知らぬ間にサンプリングされていたコーラス——すべてのピースがかみ合ったとき、歴史的なヒット曲が生まれた。

Internet MoneyはLemonadeをきっかけに、裏方のプロデューサー集団から「アーティスト」へとその立ち位置を塗り替えた。彼らの名前は今後も音楽の歴史に刻まれ続けるだろう。

関連記事はこちら

Lil Mosey「Blueberry Faygo」の意味・元ネタを徹底解説。Johnny Gill「My My My」のサンプリング手法、リーク騒動の裏側、TikTokでのバズ拡散、Billboard最高8位までの軌跡を網羅的に解説。
スポンサーリンク
musicdictionary2021をフォローする




コメント

タイトルとURLをコピーしました