高校時代に校内でマリファナを所持して10日間の停学処分を受けたChance the Rapper (チャンス・ザ・ラッパー)は、その間にミックステープの制作を始め、2012年にデビューミックステープ「10 Day」をリリース。
無料デジタルダウンロードでリリースされたこの作品は、ミックステープサイトDatPiffで約60万のストリーミング、40万回以上のダウンロードを記録し、彼の地元シカゴで多くのファンを獲得しました。
それから約1年後に発表した2枚目のミックステープ「Acid Rap」(2013)は、DatPiff100万ダウンロードを記録しダイヤモンド認定され、BET Hip Hop Awardsでは「ベストミックステープ」にノミネート。
さらにローリングストーン誌による「2013年のベストミックステープ」で1位を獲得し、オバマ元大統領が2016年夏のプレイリストに収録曲「Acid Rain」を入れるなど、多くのオーディエンスに注目されるようになりました。
今回は、このミックステープから「Lost」(2013)をピックアップ。
ここでは、この曲の元ネタと制作の裏側について解説します。
Chance the Rapper feat. Noname – Lost (2013)
楽曲情報
Chance the Rapper (チャンス・ザ・ラッパー)
出身地 :イリノイ州シカゴ
生年月日:1993年4月16日
ジャンル:Hip Hop
Noname
出身地 :イリノイ州シカゴ
生年月日:1991年9月18日
ジャンル:Hip Hop
プロデューサー
Nate Fox
元ネタ・サンプリング
Willie Hutch – Brother’s Gonna Work It Out (1973)
“Lost” 元ネタ・サンプリング
Willie Hutch – Brother’s Gonna Work It Out (1973)
元ネタになったのは、テキサス州ダラス出身のシンガー兼プロデューサーWillie Hutch (ウィリー・ハッチ)の「Brother’s Gonna Work It Out」(1973)です。
彼は、作詞を担当したJackson 5のシングル「I’ll Be There」(1970)のヒットで注目を集め、レーベルMotownのCEOの目に留まり、すぐさま契約を交わします。
1973年、移籍後初のアルバム「Fully Exposed」をリリースし、また同年公開の映画「The Mack」のサントラをWillie Hutchが手掛けています。
またこのサントラには、UGKのシングル「Int’l Players Anthem」(2007)の元ネタとしても知られる「I Choose You」も収録されています。
「I Choose You」の記事はこちら。
「Brother’s Gonna Work It Out」は、このサントラに収録されたほか、シングルでもリリースされてブラックシングルチャート18位を記録。
その後、Dr. DreやR. Kellyなど40曲以上でサンプリングされ、再び脚光を浴び、サンプリングソースとしても知られる曲となりました。
Dr. Dre feat. RBX & Snoop Dogg – Rat-Tat-Tat-Tat (1992)
R. Kelly – Back To The Hood Of Things (1993)
今作でLSDの存在が明らかに・・・
ミックステープ「Acid Rap」について、Chance the Rapperは次のように明かしています。
高校を出て、大学にも行かず、LSDを体験したような話をしているんだ。 新しく聴き始めた音楽は、とても重いアシッドジャズのベースなんだ。 本当に良い曲ばかりで、素晴らしい曲の集まりで、まさに『10Day』のような感じだね。 でも、ストーリーがあるというよりは、本当に良いアルバムなんだ。
タイトルの「Acid」とは、LSDのことを指しており、制作中にLSDの使用を認め次のように明かしています。
「Acid Rap」には多くのアシッド(LSD)が関わっていた。 つまり30〜40パーセントのアシッド…もっと言えば30パーセントはアシッドだよ。 テープの制作中、長い間とても興味を持っていたことではあるけれど、必ずしも大きな要因では全くないよ。 むしろ、ブースター、燃料のようなものだったんだ。
Chance the Rapperは、LSDがミックステープの制作中に使用したこを明かしましたが、あくまで制作のモチベーションを保つものだったようです。
また彼は「Lost」でゲスト参加したNonameについて「最高のゲストバース」と高く評価しています。
俺が誰かからもらった最高のゲストバースは「Lost」のNonameのバースだ。 彼女はそれを打ち破った。本当にクールなことだった。 Nonameとは14歳のときから知り合いなんだ。 俺がまだ子供でリリックを書こうとしていた頃、彼女は早い頃から文章を書くことに夢中になっていたんだ。
Chance the Rapperが絶賛するNonameのバースが加わったこの曲とミックステープを、改めて聴いてみてはいかがでしょうか。
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