1987年にPimp C、Bun Bによって結成されたラップグループのUGK (ユージーケー)。
3枚目のアルバム「Ridin’ Dirty」(1996)は、MVやシングルがリリースされていないにもかかわらず、2PacやScarfaceが絶賛するなど、ヒューストンのヒップホップに影響を与えた1枚と言われています。
そんな彼らが、2007年に5枚目のアルバム「Underground Kingz」をリリースし、彼らにとって初めて全米チャート1位を獲得しました。
今回は、このアルバムからリードシングル「Int’l Players Anthem (I Choose You)」(2007)をピックアップ。
Pimp Cはこの曲のリリース後に亡くなり、この曲が生前最後のMVとなりました。
ここでは、この曲の元ネタについて解説します。
UGK feat. OutKast – Int’l Players Anthem (I Choose You) (2007)
楽曲情報
UGK (ユージーケー)
結成 :1987年
ジャンル:Hip Hop
メンバー:Pimp C, Bun B
Outkast (アウトキャスト)
結成 :1992年
ジャンル:Hip Hop
メンバー:André 3000, Big Boi
レーベル
Jive Records
プロデューサー
DJ Paul
Juicy J
元ネタ・サンプリング
Project Pat – Choose U (2002)
Willie Hutch – I Choose You (1973)
“Int’l Players Anthem (I Choose You)” 元ネタ・サンプリング
Project Pat – Choose U (2002)
元ネタになったのは、テネシー州メンフィス出身のラッパーProject Pat (プロジェクト・パット)の「Choose U」(2002)です。
この曲は、彼の3枚目のアルバム「Layin’ da Smack Down」(2002)に収録。
リリース当時、Project Patは投獄されていたため、アルバムはあまり宣伝されませんでしたが、全米チャートで12位を記録しています。
この曲とUGKの「Int’l Players Anthem (I Choose You)」を手掛けたJuicy Jは、Pimp Cがこの曲からインスピレーションを受けたと明かしています。
このビートはProject Patのアルバム「Layin' da Smack Down」に収録されていたもので、Project Patが刑務所にいたは30万枚を売り上げたけど、今はゴールドになっているかもしれないね。 彼のファーストアルバムはプラチナになったけど、彼は刑務所を何度も入ったり出たりを繰り返していたから、2枚目はゴールドになった。 Pimp Cは「Choose U」という曲が大好きで、出所した時にPimp CがProject Patのアルバムに入っていたのと同じビートが欲しいと言ってきたんだ。 最初はシングルで出したんだけど、Patが刑務所に入っていたからソニーがプッシュしなかったんだ、だから何もできなかった。 Pimpは同じビートが欲しいと言って、何も変えたくないって言ってたね。
これについてUGKのBun Bは、次のように明かしています。
最初は理解できなかった。 前に、Pimpが曲を聴いていて『これを使いたい』と言ってきたことがあったんだ。 で、俺は『よくわかんねえな』って感じだった。 一度だけ、それで嫌な思いをしたことがあるんだ。 まず最初に、これだけは言っておく。 あまり知られていないと思うが、Project PatはPimp Cのトップ3に入るラッパーだったんだ。 だからProject Pat関連のものは何でもいつも真っ先に買っていて、サポートして、喜んでいたんだ。 彼が家に帰ると、そればかりを叫んでいたね。 Patのアルバムには「Choose U」という曲があって、ビートは魅力的なのに、ソニーはそれを宣伝しなかったんだ。
“Choose U” 元ネタ・サンプリング
Willie Hutch – I Choose You (1973)
さらに深堀りすると、Project Pat (プロジェクト・パット)の「Choose U」は、テキサス州ダラス出身のシンガーWillie Hutch (ウィリー・ハッチ)の「I Choose You」(1973)をサンプリングしています。
1969年にRCA Recordsと契約したWillie Hutchは、その後The Jackson 5やMarvin Gayeに曲を提供し、The Jackson 5のシングル「I’ll Be There」を共同作詞して、全米チャート1位を獲得するヒットになりました。
The Jackson 5 – I’ll Be There」(1970)
その後、1973年に映画「The Mack」のサウンドトラックをレコーディング兼プロデュースを担当し「I Choose You」はこのサントラに収録されています。
終わりに
前述したように、UGKの「Int’l Players Anthem (I Choose You)」は、Project Patの弟Juicy JとDJ Paulがプロデュースしています。
その為、当初はOutkast (アウトキャスト)ではなく、Three 6 Mafiaがゲスト参加する予定であったことをBun Bが明かしています。
この曲はUGKとOutKastになるはずではなかったんだ。 この曲はUGKとThree 6 Mafiaだったんだよ。 アルバムの最初のサンプルには、UGKとThree 6 Mafiaのバージョンだった。 そのサンプルがロサンゼルスの「オールスター・ウィークエンド」で発表され、偶然にもBig BoiとAndré 3000がそのサンプルを手に入れたんだ。 Big Boiから電話がかかってきて 「よう、俺はこの曲が好きでちょっとリミックスビートを作ったんだけど、もし使いたいならチェックしてくれ」って言われたんだ。 彼らがそれを送ると、同じ頃Andréから電話がかかってきて 「あの曲は廃盤になったのか?あの曲は本当に好きで、やりたいんだ」と。 これには事情があって、同時にThree 6 Mafiaの歌詞をソニーからクリアするのに問題があったんだ。
Three 6 Mafiaは、2005年のシングル「It’s Hard out Here for a Pimp」が映画の主題歌に抜擢され、アカデミー賞を受賞しており、これに浮かれていたソニーへDJ Paulはダメ出ししています。
Three 6 Mafiaはもともと曲に参加していたんだけど、ソニーがバカなことをして、俺らが参加するのを嫌がったんだ、まったくバカな話だよ。 彼らはまだアカデミー賞で浮かれていたんだ。 俺らよりも喜んでいたよ。 でも、彼らは(曲の)クリアランスでつまずいて、結局UGKはOutKastを参加させることになった。 OutKastはビッグなグループだ。 俺はOutKastが大好きなんだ。 OutKastのプロデュースをしたという機会にもなったしね。 すべてがうまくいったよ。
DJ Paulは、Outkastへリスペクトしていることを明かし、また彼らの作品に関われることを喜んでいるようです。
Pimp Cの一言で楽曲制作が始まり、レーベル内での問題やOutkastが気に入ったことでリリースとなった異例の作品になりました。
そのような背景がありながらも、リリース後にはグラミー賞「最優秀ラップパフォーマンス賞」にノミネートされ、ローリングストーン誌の「2007年のベスト100曲」では10位に選出されるヒットになりました。
この機会に、元ネタと併せて聴いてみてはいかがでしょうか。
コメント