「I Got 5 on It」とは何か?Lunizが描いた5ドルのリアルと映画『Us』で再評価された理由

1990年代
1990年代L
スポンサーリンク

1995年のウエストコースト。ヒップホップが黄金時代を突き進んでいたあの頃、オークランドから放たれた一発の銃弾ならぬ「一曲のアンセム」が、世界中のストリートを揺らした。

Luniz (ルーニーズ)の「I Got 5 on It」。

リリースから30年近くが経とうとしている今なお、この曲は単なる「懐メロ」の枠に収まりきらない異彩を放ち続けている。なぜこの曲が、時代を超えて愛されるクラシックとなったのか。その背景には、緻密なサンプリングの魔法と、あまりにもリアルなストリートの日常があった。

Luniz feat. Mike Marshall – I Got 5 on It (1995)

スポンサーリンク

「5ドル出すよ」というリアルな共鳴

1995年5月23日にリリースされたこの曲は、YukmouthとNumskullからなるデュオ、Lunizのデビューアルバム『Operation Stackola』のリードシングルだった。

タイトルの「I Got 5 on It」とは、直訳すれば「俺も5ドル出すよ」という意味だ。ヒップホップのスラングでは、仲間内でマリファナ(Indo weed)を購入する際、代金を出し合うことを指す。

歌詞に描かれているのは、派手な抗争でも豪華な成功物語でもない。高品質なネタをみんなでシェアするために金を出し合うという、どこにでもある「仲間内のやり取り」だ。この肩の力が抜けた日常感、そしてドラッグカルチャーに対するカジュアルな親しみやすさが、当時の若者たちの心に強烈なリアリティをもって突き刺さったのである。

スポンサーリンク

職人技が光るプロダクションと「声」の魔力

このトラックを唯一無二の存在に仕立て上げたのが、プロデューサーのTone Caponeだ。彼はウエストコースト・ヒップホップとGファンクの要素を絶妙なバランスで融合させた。

トラックの心臓部となっているのは、80年代のR&Bグループ、Club Nouveau (クラブ・ヌーヴォー)の「Why You Treat Me So Bad(1986)」のメロディだ。さらに、

  • Audio Two「Top Billin’(1987)」のドラム
  • Kool & the Gang「Jungle Boogie(1973)」のブレイク

といった過去のヒップホップやファンクの歴史を巧妙にサンプリングし、重層的なサウンドを構築している。

Club Nouveau – Why You Treat Me So Bad (1986)

そして、この曲に決定的な「色気」を与えたのが、客演のMichael Marshall (マイケル・マーシャル)だ。80年代にTimex Social Clubで活動していた彼のソウルフルで滑らかなボーカルがサビ(フック)に乗った瞬間、トラックに温かみと、どこか物悲しいキャッチーさが宿った。この「影のある心地よさ」こそが、後にある現象を引き起こすことになる。

スポンサーリンク

世界を席巻した数字と評価

「I Got 5 on It」の勢いは、ストリートだけに留まらなかった。 米ビルボード・ホット100で最高8位を記録。イギリスやドイツなどヨーロッパ諸国のチャートでもトップ10入りを果たし、文字通り世界を席巻した。RIAA(米レコード協会)からはプラチナ認定を受け、100万枚以上のセールスを叩き出している。

批評家からの評価も高く、Pitchforkが選ぶ「1990年代のベスト曲250」にもランクイン。もはや一過性のヒット曲ではなく、時代を象徴する文化遺産としての地位を確立したのだ。

スポンサーリンク

映画『Us』による再定義と「不気味さ」の発見

この曲のレガシーを語る上で、2019年の出来事を外すことはできない。ジョーダン・ピール監督のホラー映画『Us(アス)』での起用だ。

劇中、そしてトレーラーで流れたのは、原曲をスローダウンさせ、不協和音を強調した“Tethered Mix”だった。かつては仲間との楽しいひとときを象徴していたメロディが、一転して観客の恐怖を煽る不気味な旋律へと変貌したのだ。

この衝撃的な再解釈は、若い世代がこの曲を知るきっかけとなった。同時に、原曲がもともと持っていた「憂い」や「陰影」といった多面的な魅力を改めて浮き彫りにした。ただのドラッグ賛歌ではない、深い音楽的背景があることを世界に再認識させたのである。

スポンサーリンク

なぜ今なお、この曲なのか

「I Got 5 on It」が今も愛され続ける理由。それは、Lunizの飾らないラップ、Michael Marshallの忘れがたいメロディ、そしてTone Caponeによる完璧なプロダクションが、奇跡的なバランスで結びついているからに他ならない。

ストリートの何気ないコミュニケーションを切り取ったこの曲は、聴く者に時代を超えたノスタルジアを抱かせる。それは単なる過去への憧憬ではなく、音楽が持つ「リアルな空気」が、今もなお鮮度を失っていない証拠だと言えるだろう。

スポンサーリンク
musicdictionary2021をフォローする




コメント

タイトルとURLをコピーしました