ニューヨークのブルックリンで生まれ育ったThe Notorious B.I.G. (ノトーリアス・B.I.G.)は、DiddyのレーベルBad Boy Recordsと契約を交わし、1994年にデビューアルバム「Ready to Die」(1994)をリリース。
このアルバムは、R&B/Hip Hopチャート3位を記録し、彼の代表曲でもある「Juicy」と「Big Poppa」が収録しています。
多くの評論家から高い評価を受けたThe Notorious B.I.G.は東海岸ヒップホップの中心人物となり、ニューヨークヒップホップの復活を牽引した1人にもなりました。
そんな彼が1997年に他界し、同年にアルバム「Life After Death」(1997)をリリース。
このアルバムでは、彼の意向で幅広い層にアプローチするため、10組以上のアーティストが参加して、2枚組で全26曲収録しています。
アルバム収録曲の「Mo Money Mo Problems」の記事はこちら。
今回は、このアルバムからプリモことDJ Premierがプロデュースした「Kick in the Door」(1997)をピックアップ。
ここでは、この曲の元ネタとリリースの裏側を解説します。
The Notorious B.I.G. – Kick in the Door (1997)
楽曲情報
The Notorious B.I.G. (ノトーリアス・B.I.G.)
出身地 :ニューヨーク、ブルックリン
生年月日:1972年5月21日
ジャンル:Hip Hop
没年月日:1997年3月9日 (24歳)
レーベル
Bad Boy Entertainment
Arista Records
プロデューサー
DJ Premier
元ネタ・サンプリング
Screamin’ Jay Hawkins – I Put a Spell on You (1956)
“Kick in the Door” 元ネタ・サンプリング
Screamin’ Jay Hawkins – I Put a Spell on You (1956)
元ネタになったのは、オハイオ州クリーブランド出身のシンガーScreamin’ Jay Hawkins (スクリーミン・ジェイ・ホーキンス)の「I Put a Spell on You」(1956)です。
この曲はもともとバラードとしてレコーディングされましたが、お蔵入りになり、翌年に現在のハードなバージョンでリリースされました。
しかしこの曲は多くのラジオ局から放送禁止となり、ビルボードのポップスやR&Bチャートには入らなかったものの、100万枚以上を売り上げ、彼の代表曲の1つになりました。
またローリングストーン誌による「史上最も偉大な500曲」では313位に選出され、これまでに60組のアーティストにカバーされています。
さらにThe Notorious B.I.G.がこの曲をサンプリングしたことにより、LL Cool JやThe Gameもサンプリングしています。
LL Cool J feat. Kandice Love – L.L. Cool J (2000)
The Game feat. Diddy – Standing On Ferraris (2015)
終わりに
この曲を手掛けたDJ Premierは、リリースまでの経緯を次のように明かしています。
ファーストアルバムの後(ビギーは)『もし俺がヒットしてプラチナになったら、欲しい金をやる』って言ったんだ。 「Unbelievable」で5,000ドル請求して、2枚目では1曲30,000ドル払ってくれたんだ。 それで怒るわけにはいかない。 5,000ドルから大きく跳ね上がっているんだから。 「Kick In The Door」は20分のカセットでパフ(Diddy)に送ったから、ほとんどダメだった。 当時はCDやフラッシュドライブを使わずにビートを送っていたんだ。 それで、そのビートを作ってパフに渡したんだ。 そしたら、その日のうちにパフの事務所から電話がかかってきて 「ビギーのプラチナプレートが届いたよ」って言われたんだ。 その日のうちに受け取りに行ったよ。 俺が帰ろうとしたら、パフがオフィスから出てきて 『よう、お前。どうしたんだ?ビッグのために新しいビートを作って欲しいんだ』って。 俺は『今日、彼にトラックを渡したよ。覚えてるか?ここに来て置いてきたんだ」と言ったよ。 彼は『ああ、でもあの曲は好きじゃないんだ。あれはホットじゃない。 「Unbelievable」でやったようなのをね。この曲ではヒットしないからだ』と。 俺は『この曲はハードだ』と言ったんだ。 『Bigは聞いたことがあるか? 』と言ったら『ビッグは聞いてない』って。 だから、それをゴミ箱に捨てようと思って戻って、別のものに取り掛かったんだ。 その後、ビギーから午後の5時か6時頃に電話がかかってきて『今夜来てくれないか、そのジョイントを作りたいんだ』と言われ 俺は『パフは好きじゃないって言ってた』と答えた。 するとビッグは「ファック・パフ!」と言った。 ビギーは成功のために多くの人に裏切られ、傷ついていた。 彼はやるべきことをやったんだ。 でも結局のところ、彼がまだここにいてくれたらと思うよ
Diddyはこのビートを嫌っていたようですが、The Notorious B.I.G.はこの曲を気に入り、DJ Premierと2人は彼の裏をかいてこの曲をレコーディングしたことを明かしたようですね。
この機会に、元ネタと併せて聴いてみてはいかがでしょうか。
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