Tyler, The Creator『Don’t Tap the Glass』収録曲「Ring Ring Ring」徹底解説|Ray Parker Jr.サンプリングが織り成す新感覚ファンク

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2025年7月21日、Tyler, The Creator (タイラー・ザ・クリエイター)の9枚目のスタジオアルバム『Don’t Tap the Glass』がリリースされた。

全10曲わずか28分30秒のコンパクトな作品の中で、ひときわ異彩を放つのが「Ring Ring Ring」だ。この曲は、Tylerが持つ音楽的な幅の広さと感情表現の繊細さを見事に体現している。

Tyler, The Creator – Ring Ring Ring (2025)

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サンプリングに見る「Ring Ring Ring」の音楽的ルーツ

「Ring Ring Ring」の核となるのは、1981年にRay Parker Jr. (レイ・パーカー・ジュニア)とRaydioによってリリースされた「All In the Way You Get Down」のサンプリングである。
Raydio名義最後のアルバム『A Woman Needs Love』に収められたこの曲は、Ray Parker Jr.自身が作詞・作曲・プロデュースを手掛けたファンクの傑作であり、そのグルーヴ感は今なお色褪せていない。

Ray Parker Jr. & Raydio – All in the Way You Get Down (1981)

Raydioは1977年に結成され、「Jack and Jill」や「You Can’t Change That」といったヒット曲で人気を博したが、1980年代初頭に「Ray Parker Jr. and Raydio」と改名し、その後解散。Ray Parker Jr.はソロアーティストとしての道を歩み始めた。

「All In the Way You Get Down」はまさにバンドの集大成としてのファンクトラックであり、Heatwaveの「Boogie Nights」からもサンプリングしている点からもわかるように、70年代ディスコ~ブーギーのエネルギーを内包している。Tylerはこの歴史的なファンク・ディスコの血脈を現代へとつなげているのだ。

Heatwave – Boogie Nights (1976)

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曲のサウンドとテーマ性

「Ring Ring Ring」は、ファンキーでアップテンポなビートに乗せて、80年代ファンクやディスコのグルーヴと、Tylerの現代的なサウンドセンスが見事に融合している。
ベースラインのうねりやブラスのアクセントが生き生きと響き渡り、まさに「踊らずにはいられない」ダンスナンバーだ。

だが、この曲がただのパーティーチューンに留まらないのは、その歌詞に秘められた感情の深さにある。元恋人に「もう連絡しないで」と言われながらも、忘れられずに何度も電話をかけ続ける男性の切実な心情が描かれている。

「Hello?」と呼びかける声は切実で、何度も電話をかける様子は痛切だ。相手が出ないことに苛立ち、やがて「オペレーター」に助けを求める叫びに変わり、最後は「愛してる」と繰り返す。恋愛の未練と葛藤が、ファンクの軽快なビートの中に映し出されている。

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『Don’t Tap the Glass』が投げかける社会への問い

Tyler, The Creatorはこのアルバムの意図について、友人たちに「なぜ公共の場で踊らないのか」と尋ねたところ、「撮影されるのが怖いから」と返ってきたという。
この答えから彼は、現代社会において音楽と自然に繋がり、身体で表現する感覚が薄れていることを痛感したそうだ。

実際に開かれたリスニングパーティーでは、参加者約300人が携帯電話やカメラを一切使わず、音楽と空間に集中して自由に踊り、解放感を味わっていた。
Tylerはそれを「抑え込んでいたエネルギーが解放された瞬間」と表現し、この作品はただ座って聴くのではなく、踊り、走り、身体を動かすことでこそ真に理解できると語っている。

タイトルの『Don’t Tap the Glass(ガラスを叩くな)』は、外部からの過剰な詮索や監視をやめ、純粋に音楽の中に飛び込んでほしいという強いメッセージを示しているのだ。

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ファンクの遺伝子を受け継ぎ、新たな感情表現へ

「Ring Ring Ring」は、過去の偉大なファンクやディスコの名曲を土台にしつつ、Tyler, The Creatorならではの現代的で繊細な感情表現を加えた革新的な作品である。
アップテンポなビートに乗りながらも、切ない恋心が滲み出ており、聴く者の心を揺さぶる。

この楽曲は、『Don’t Tap the Glass』というアルバムの核心を示しており、音楽をただの娯楽としてではなく、自己表現と感情の解放の手段として捉えるTylerの哲学を如実に物語っている。

「Ring Ring Ring」に身を委ね、Tylerの描くファンクの世界と内面の葛藤を感じ取ることで、リスナーは単なる音楽以上の深い体験を得られるに違いない。

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