Tyler, The Creator「Sugar On My Tongue」解説|甘さと混沌が交錯する官能ポップの正体

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2025年、Tyler, The Creator (タイラー・ザ・クリエイター)が放ったシングル「Sugar On My Tongue」は、聴く者の耳を、そして視覚を強烈に刺激する一曲だ。アルバム『Don’t Tap the Glass』からのリードトラックとして世に送り出されたこの楽曲は、ヒップホップとダンス・ポップを巧みに融合させ、「甘美で奔放」という表現がこれほど似合う曲も他にないだろう。

エレクトロニックなビートの上で繰り広げられる舌を巻くような言葉遊び、そして彼自身が監督した衝撃的なミュージックビデオは、瞬く間にシーンの話題をさらっていった。

Tyler, The Creator – Sugar On My Tongue (2025)

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制作背景:重さからの解放と“遊び心”への回帰

特筆すべきは、本作におけるタイラーのスタンスの変化である。前作で見せてきた内省的な表現とは距離を取り、彼はこのアルバムで「重さからの解放」を明確に志向した。

「今回の曲は深いものではなく、ただ楽しくてぶっ飛んだことを言いたかった」。インタビューでそう語った彼は、本作が友人たちと笑いながら作り上げた、純粋な制作プロセスの産物であることを明かしている。「もっと遊びたい」という彼の衝動は、ある原体験に裏打ちされている。彼はインタビューの中で、「人々が理屈ではなく、身体で音楽を楽しむこと」への強い欲求が今回の制作を後押ししたとも語っており、本作はそうした衝動から生まれた楽曲だと言える。

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楽曲の構造と歌詞:宇宙規模で暴走する欲望

わずか2分33秒というコンパクトな尺に、タイラーはその官能性とユーモア、そして彼独自の美学をこれでもかと詰め込んだ。

サビで繰り返される “Like sugar on my tongue, cannot stay away from you(舌の上の砂糖のように、お前から離れられない)” というフレーズは、相手の甘美さを砂糖になぞらえつつ、抗いがたい欲望をストレートに叩きつける。

さらに歌詞は、「Are you from Mars?(お前は火星から来たのか?)」や「Give me that slice of cream(そのクリームの一切れをくれ)」といった、SF的な比喩や奇妙な言葉遊びへと展開していく。それは単なるラブソングの枠を軽々と飛び越え、官能的な比喩と奇妙な言葉遊びが連鎖することで、欲望そのものが制御を失っていくようなカオスを描き出している。

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ミュージックビデオ:挑発とメタファー

視覚面での衝撃も忘れてはならない。2025年8月12日に公開されたミュージックビデオは、タイラー自身が監督を務め、そのクリエイティビティがいかんなく発揮されている。

映像は無機質な白いタイルの部屋から始まり、当初は軽い誘惑を描いているように見えるが、次第にBDSM的な要素や裸の描写、官能的な演出へと急加速していく。中でも特に議論を呼んだのが、舌をモチーフにしたショッキングなシークエンスであり、それが次第に異様な存在感を放っていく演出だ。このユーモラスかつグロテスクな演出は、単なる視覚的なショックを与えるだけでなく、「制御不能になった欲望」を象徴するメタファーとして、多くの解釈を生んでいる。

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社会的反響と評価:熱狂と批評の間で

この「劇薬」のような楽曲に、世間は即座に反応した。TikTokを中心としたSNSでは、「Sugar On My Tongue」は瞬く間にミーム化。そのキャッチーなリズムと中毒性の高いフレーズに合わせたダンスチャレンジが流行し、数多くの派生動画がタイムラインを埋め尽くした。同時に、ファンの間では「これはただのラブソングなのか? それとももっと深い意味があるのか?」という議論が巻き起こり、様々な解釈が拡散されている。

音楽批評家たちからの評価も概ね好意的だ。『Don’t Tap the Glass』の中でも特にユニークな楽曲として位置づけられており、音楽メディアはシンセと808ビートの絶妙な組み合わせを称賛し、その楽しさを強調した。また、海外メディアのレビューでは「官能的なファンクのエネルギーをまとった一曲」と評されるなど、そのグルーヴ感も高く評価されている。もちろん、批評家が指摘するように、その歌詞や表現の大胆さには賛否両論あるものの、アルバム全体に見られる「遊び心と実験性」を象徴する楽曲であることに疑いの余地はない。

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総括:タイラー流の“甘さ”と解放感

結局のところ、「Sugar On My Tongue」とは何だったのか。それは単なるラブソングでも、奇をてらったフェティッシュな表現でもない。

内省的なテーマから距離を置き、遊び心と衝動を前面に押し出したこの曲は、「音楽は踊るためのものであり、楽しむためのものである」というタイラーの信念そのものである。欲望を飾らずに表現し、その甘さと刺激をダンスフロアやスクリーンの前に解き放つことで、彼はリスナーにある種の「解放感」をもたらしたのだ。我々はただ、その甘い混沌に身を任せればいいのである。

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