1992年、香港の武術映画「Shaolin and Wu Tang(邦題:少林と武当)」にちなんで結成されたラップグループWu-Tang Clan (ウータン・クラン)は、その翌年にデビューアルバム「Enter the Wu-Tang (36 Chambers)」(1993)をリリース。
アルバムタイトルは、武術映画「エンター・ザ・ドラゴン(邦題:燃えよドラゴン)」(1973)と「少林寺三十六房」(1978)から取ったもので、グループ名と同様、カンフー映画から大きな影響を受けています。
このアルバムはR&B/Hip Hopチャート8位を記録し、その独特のアンダーグラウンドなサウンドは後のニューヨークヒップホップの基礎となり、1990年代のアルバム、また史上最高のヒップホップアルバムとして知られています。
今回は、このアルバムからシングルカットされた「C.R.E.A.M.」(1993)をピックアップ。
ここでは、この曲の元ネタについて解説します。
Wu-Tang Clan – C.R.E.A.M. (1993)
“C.R.E.A.M.” 楽曲情報
レーベル
BMG Strategic Marketing Group
RCA Records
Loud Records
BMG
プロデューサー
RZA
元ネタ・サンプリング
The Charmels – As Long as I’ve Got You (1967)
“C.R.E.A.M.” 元ネタ・サンプリング情報
The Charmels – As Long as I’ve Got You (1967)
元ネタになったのは、テネシー州メンフィスで結成されたソウルグループThe Charmelsの「As Long as I’ve Got You」(1967)です。
彼女たちは、数々の実績を残したソングライター兼プロデューサーのIsaac Hayesが指導のもと、1966年から1968年にかけて4枚のシングルをレコーディングしています。
この曲は、Isaac Hayesの相方でもある名ソングライターDavid Porterと共に作詞作曲を手掛けましたが、他のシングル同様、商業的な成功には至らず、後にWu-Tang Clanにサンプリングされたことで、一躍注目を浴びることになりました。
それ以来、Wyclef Jean、Snoop Doggなど、50曲以上でサンプリングされており、サンプリングソースとして知られています。
Wyclef Jean & Akon feat. Niia, Lil Wayne & Raekwon – Sweetest Girl (Dollar Bill) Remix (2007)
Snoop Dogg – Neva Left (2017)
RZA、Raekwonが「C.R.E.A.M.」について口を開く
リリース当時、アメリカのヒップホップがDr. DreのG-Funkに押されつつあったシーンを、Wu-Tang Clanはこのアルバムでニューヨークのヒップホップを全米中に知らしめることに成功しました。
これは「イースト・コースト・ルネッサンス(東海岸の復活)」と呼ばれる、この時代において画期的なリリースであり、その影響はNas、The Notorious B.I.G.、Mobb Deep, JAY-Zなどの東海岸のラッパーの道を切り開くことになりました。
Wu-Tang ClanのメンバーであるRZAとRaekwonは、このアルバムの代表曲である「C.R.E.A.M.」について、次のように明かしています。
RZA スタジオに入った途端、この曲は Wu-Tangのアルバムに入れなきゃいけないと思ったんだ。 RaeとDeckのバースを思い出したんだ、彼らのバースは長かったね。 当時フックの達人だったMethod Manがこのフックを作ってくれた。 「cash rules everything around me, cream, get the money.」 彼がこれを加えた時点で、この曲が大ヒットすることは分かっていたよ。
Raekwon 「C.R.E.A.M.」は個人的に俺のキャリアに大きな影響を与えたんだ。 「C.R.E.A.M.」が俺らにとって大きな意味を持った時代をもう一度振り返る機会を与えてくれた。 だから、この曲のことを考えると、勝手に87年、88年のビルの前に立っていた頃に戻ってしまうんだ。 外は寒い。俺たちは気にもしなかった。 俺たちは外で、金を稼ぐために真っ黒になっていた。 ただ金を稼いで、食うために。サバイブしていたよ。
この機会に、元ネタと併せて聞いてみてはいかがでしょうか。
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