ヒップホップの歴史において、「クラシック」と呼ばれる曲は数多くあれど、Dr. Dre (ドクター・ドレー)の「The Next Episode」ほど、その一音を聴いた瞬間に誰もが体を揺らし、あの有名なフレーズを口ずさみたくなる曲も珍しいだろう。1999年に発表された歴史的名盤『2001』からシングルカットされたこの曲は、リリースから四半世紀近くが経過した今もなお、世界中のクラブやラジオ、そして日常のプレイリストで輝きを放ち続ける、まさにDreの代表作の一つである。
Dr. Dre feat. Snoop Dogg – The Next Episode (1999)
時代を超える西海岸(ウェストコースト)アンセム
この曲の最大の魅力は、Dr. DreとSnoop Dogg (スヌープ・ドッグ)という西海岸ヒップホップの二大巨頭による、息の合ったコンビネーションにある。シングルでは主にSnoop Doggがフィーチャリングとしてクレジットされているが、実際にはKuruptもマイクを握り、そして何より、曲の最後を締めくくるあの印象的なフックは、今は亡きNate Doggのソウルフルな歌声なくしては成立しなかった。
楽曲の心臓部であるビートは、Dreと同じくAftermath所属のプロデューサー、Mel-Manとの共同プロデュースによって生み出された。その核となっているのは、1967年に録音されたDavid McCallum (デヴィッド・マッカラム)(David Axelrodプロデュース)の楽曲「The Edge」からの巧みなサンプリングである。この素材を、Dre特有の重厚かつクリーンなプロダクションで見事に再構築し、アッパーでありながらヘビーな唯一無二のビート感に落とし込んだ。
David McCallum – The Edge (1967)
サンプリングの妙と計算された構成
そもそもアルバム『2001』自体が、一本の映画のような構成を強く意識した作品であった。その中で「The Next Episode」は、わずか2分41秒(LPバージョン)という短い尺の中に強烈なエネルギーを凝縮させ、アルバム全体に強烈なアクセントを与える役割を担っている。
実は、この曲には「前日譚」とも呼べるエピソードが存在する。これ以前にも、Snoop Doggの1993年のデビューアルバム『Doggystyle』に、「Tha Next Episode」というほぼ同名のコラボ曲が収録される予定だったのだ。しかし、当時はサンプル音源の使用許可が下りず、お蔵入りとなってしまった(そのビートは後にWarren Gの曲で再利用された)。時を経て『2001』で結実したこの曲は、二人の「次のエピソード」を待望していたファンにとって、最高の回答となったのである。
耳に残るフックと“あの”ライン

歌詞は、典型的なウェストコーストのギャングスタラップ、あるいはパーティーアンセムのスタイルを踏襲している。短く鋭いフレーズで勢いを生み出し、聴き手のテンションを一気に引き上げる。そして、この曲を不滅のものにしたのが、あまりにもキャッチーなフックと、Nate Doggによる「Smoke weed every day」という、今やヒップホップ・カルチャーのアイコンともなったあの有名なラインである。この強烈なフックの反復が、ストリーミングやライブでの定番化、さらにはインターネット・ミームとしての拡散にもつながった。
その人気は商業的な成功にも直結した。シングルは全米チャートで最高23位、イギリスでは3位を記録。何百万枚ものセールスを達成したアルバム『2001』の評価を、さらに強固なものにした。ストリップクラブを舞台に、Ice CubeやWarren G、Xzibitといった豪華な面々がカメオ出演した派手なミュージックビデオも、楽曲の持つ凝縮されたエネルギーと視覚的なインパクトを倍増させた。
「次の大舞台」を象徴する曲へ

「The Next Episode」の影響力は、リリース当時だけに留まらない。2022年、スーパー・ボウルLVIのハーフタイムショーという世界最大級の舞台で、DreとSnoopはこの曲をオープニングとして披露し、世界中を熱狂させた。さらに2024年のロサンゼルスオリンピック閉会式でも演奏されるなど、まさに曲名が示す通り、「次のエピソード(Next Episode)」=「次の大舞台」を象徴するアンセムとして、カルチャー史に刻まれ続けている。
なぜ、この曲は今もなお聴かれ続けるのか。それは、短い尺に瞬発力のある魅力を凝縮した構成、DreとSnoopという二大巨頭の圧倒的な「ブランド力」、そして何よりも、時代を経ても全く色褪せないプロダクションの強度と、一度聴いたら忘れられないフックの魔力にある。これらが完璧に組み合わさっているからこそ、「The Next Episode」はジャンルや世代を超え、聴く者の心を掴み続けるのである。



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