トロント出身のR&Bデュオ、dvsn (ディヴィジョン))は、常に繊細で湿度のあるサウンドを紡いできた。2025年夏、彼らは長年所属したOVO Sound/Warnerから離れ、Jermaine Dupri率いるSo So Defとの契約を発表したのち、新たな一歩として2曲の新曲「Excited」と「Love On You」を同時にリリースした。本稿では、彼らの歩みとレーベル移籍の意味、そして新曲の聴きどころを丁寧に整理して紹介する。
dvsnの歩みと現在地

dvsnはボーカルのDaniel DaleyとプロデューサーのNineteen85からなるデュオである。2015年の活動開始以降、DrakeのOVO Soundと契約し、デビュー作『Sept. 5th』、2017年の『Morning After』、2020年の『A Muse In Her Feelings』など、官能的で湿度のあるR&Bを軸に複数のアルバムを発表してきた。
Daleyの柔らかくも感情の揺れを捉える歌声は、多くのファンに支持され続けている。2022年には『Working on My Karma』をリリースしているが、2025年6月に彼らはOVO/Warnerを離れ、So So Defとの契約を結ぶこととなった。
「Excited」――ベッドルームに差す熱の描写
dvsn – Excited (2025)
「Excited」は、浮遊感のあるプロダクションとDaleyの吐露めいた歌声が特徴のスロウなベッドルーム・ジャムである。楽曲にはFloetryの「Say Yes」(2002年)のサンプルが取り入れられており、官能と期待が混ざり合う瞬間を繊細に切り取る。
Floetry – Say Yes (2002)
Daleyは相手の存在によって抑えきれない高揚を繰り返し描写しており、過度にドラマティックにならずに感覚の細やかさを伝える歌い回しが印象的である。プロダクション面では、Nineteen85ならではの温かいローエンドとスムーズなビート作りが光り、サンプルの持つ懐かしさをモダンに昇華させている。聴き手は“夜の親密さ”と“淡い高揚”の狭間を行き来する感覚を味わうことができるだろう。
「Love On You」――静かな誓いと二歩目の優しさ
dvsn – Love On You (2025)
一方の「Love On You」は、2ステップ寄りのグルーヴを取り入れたミッドテンポ曲で、より成熟した関係性と献身を歌っている。Daleyは「今回は違う」「君が求めるものを与えたい」といった決意を丁寧に表現し、慎重でありながら確かな愛情が曲全体を支配する。
ビートは控えめながらも身体を揺らす存在感を持ち、Bサイド的な立ち位置でありながらもプレイリストの中では安定して心地よく響く。A面の「Excited」が衝動的な高揚を描くのに対し、「Love On You」は落ち着いた返答を示すかのようで、両者を並べて聴くことでdvsnの音楽的幅を感じられる構成となっている。
レーベル移籍の意味――So So Def × HYBE体制へ

今回の2曲は、So So Defとのマルチアルバム契約後にリリースされた最初の作品である。契約内容は、So So Defがクリエイティブ面を管轄し、HYBE Americaがワールドワイドの流通を担当する体制だ。Jermaine Dupri自身がdvsnの近作に関わってきたこと、彼らのライブパフォーマンスやファン基盤を評価した上での“最初のサイン”であることが公表されており、単なるレーベル移籍以上の意味を持つ。
今後は制作やプロモーション体制の変化によって、サウンドや露出の仕方に幅が出ることが期待される。OVO Sound時代の経験を踏まえつつ、より大きなマーケットや異なるプロデュース陣との協業も視野に入るだろう。
おわりに
「Excited」と「Love On You」は、dvsnが築いてきた“湿度のあるR&B”を踏まえつつ、新しい局面を示す作品である。サンプルの扱いやグルーヴの微調整など、細部にわたるプロダクションの工夫が目立ち、今後のシングル展開やアルバム制作への期待を膨らませる。
衝動と誓いという相反するテーマを短いフォーマットで対比させる巧みなリリースであり、Jermaine Dupri/So So Defとのタッグ、HYBEによる流通体制は、dvsnが次のステージへ進むための重要な足がかりとなるだろう。今後のシングルや長尺プロジェクトがどのように展開されるか、引き続き注目していきたい。
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