2004年に発表した5枚目のアルバム「Encore」で3作連続の全米チャート1位を獲得し、グラミー賞では「最優秀ラップアルバム」を含む3部門にノミネートされたEminem (エミネム)。
このアルバムを発表後、Eminemはヨーロッパツアーを予定していましたが、処方された睡眠薬の中毒のため、ツアーをキャンセルし、活動休止に入りました。
さらに翌年には2度目の離婚を経験し、ラップグループD12のメンバーで親友のProofが射殺されるなど、プライベートでもドン底の時期にあったようです。
そんな彼が、2009年に50 Cent (フィフティ・セント)、Dr. Dre (ドクター・ドレー)を擁してシングル「Crack a Bottle」(2009)をリリース。
多くのオーディエンスから彼への期待が高まる中リリースされたこの曲は、41万8000ダウンロードを記録し、それまでT.I.の「Live Your Life」(2008)が持っていた初週のデジタルセールス記録を更新して全米チャート1位を獲得しています。
T.I.の「Live Your Life」(2008)の記事はこちら。
ここでは、Eminemが見事に復活を遂げたこの曲の元ネタについて解説します。
Eminem feat. 50 Cent & Dr. Dre – Crack a Bottle (2009)
楽曲情報
Eminem (エミネム)
出身地 :ミシガン州デトロイト
生年月日:1972年10月17日
ジャンル:Hip Hop
50 Cent (フィフティ・セント)
出身地 :ニューヨーク、クイーンズ
生年月日:1975年7月6日
ジャンル:Hip Hop
Dr. Dre (ドクター・ドレー)
出身地 :カリフォルニア州コンプトン
生年月日:1965年2月18日
ジャンル:Hip Hop
レーベル
Aftermath Entertainment
Shady Records
Interscope Records
プロデューサー
Dr. Dre
元ネタ・サンプリング
Mike Brant – Mais Dans La Lumière (1970)
“Crack a Bottle” 元ネタ・サンプリング
Mike Brant – Mais Dans La Lumière (1970)
元ネタになったのは、キプロス島出身のシンガーMike Brant (マイク・ブラント)の「Mais Dans La Lumière」(1970)です。
この曲は、1970年にシングルとしてリリースされ、イスラエルチャートで1位を獲得。
その後、1973年には年間250回のコンサートを開くなど、人気絶頂期であった彼ですが、うつ病に悩まされたMike Brantは、1975年のニューアルバムの発売日にパリのエルランジェ通りのアパートから飛び降り、28歳という若さでこの世を去りました。
またこの曲は、ラップデュオMobb DeepのメンバーHavocの「Live It Up」(2004)にもサンプリングされています。
Havoc feat. Synysta, Tragedy Khadafi – Live It Up (2004)
終わりに
Eminemは、親友Proofの死について、また自身のうつ病について次のように明かしています。
Proofの喪失感は、彼の子どもたちや奥さん、みんなが感じているよ。 でもなぜか、今になってみると、自分だけに起こった出来事のように感じてしまうんだ…。 当時の俺は、少しわがままだったのかもしれないね。 でも俺には衝撃的だったよ。 薬も思考も、何もかもが真っ暗になったんだ。 俺が飲んでいたうつ病の薬は、薬物を摂取すればするほどより落ち込んで、より自己嫌悪に陥ったよ…。
世界的な知名度を得ていたEminemですが、うつ病を克服してこの曲で「Lose Yourself」以来となる2曲目の全米チャート1位、カナダチャートでも自身初の1位を獲得しています。
この機会に、元ネタと併せて聴いてみてはいかがでしょうか。
コメント