1987年初頭にロサンゼルス、コンプトンで結成されたN.W.A.は、同年にコンピレーションアルバム「N.W.A. and the Posse」をリリースし、R&B/Hip Hopチャートで39位を記録。
翌年、デビューアルバム「Straight Outta Compton」(1988)をリリース。
ドラッグや犯罪を賛美する過激なリリックで物議を醸したこのアルバムは、ロサンゼルス地域以外ではほとんどのラジオで放送されなかったものの、ギャングスタラップ初のプラチナ認定を受け、これまでに100万枚のセールスを記録しました。
今回はこのアルバムから、警察の人種差別に抗議した曲「Fuck tha Police」をピックアップ。
この曲は10曲以上のリリックやビートを引用をしていますが、ここではそのうちの2曲を取り上げて解説します。
N.W.A. – Fuck tha Police (1988)
楽曲情報
N.W.A.
結成 :1987年
ジャンル:Hip Hop
メンバー:Arabian Prince, DJ Yella, Dr. Dre, Eazy-E, Ice Cube, MC Ren
レーベル
Universal Music Group
Ruthless Records
Priority Records
プロデューサー
Dr. Dre
DJ Yella
元ネタ・サンプリング
Roy Ayers Ubiquity – The Boogie Back (1974)
Marva Whitney – It’s My Thing (1969)
“Fuck tha Police” 元ネタ・サンプリング ①
Roy Ayers Ubiquity – The Boogie Back (1974)
元ネタになったのは、カリフォルニア州ロサンゼルス出身のプロデューサーRoy Ayersが率いるバンドRoy Ayers Ubiquity (ロイ・エアーズ・ユビキティ)の「The Boogie Back」(1974)です。
この曲は彼らのアルバム「Change Up the Groove」(1974)に収録。
N.W.A.がネタ使いしてヒットし、これまでに30曲以上でサンプリングされています。
またCoolioの「County Line」(1994)のイントロ部分でも同じように使用されています。
Coolio – County Line (1994)
“Fuck tha Police” 元ネタ・サンプリング ②
Marva Whitney – It’s My Thing (1969)
次に「Fuck tha Police」は、カンザス州カンザスシティ出身のシンガーMarva Whitney (マーヴァ・ホイットニー)の「It’s My Thing」(1969)をサンプリングしています。
この曲は、彼女の同タイトルのアルバム「It’s My Thing」(1969)に収録。
The Isley BrothersのR&Bチャート1位のヒット曲「It’s Your Thing」(1969)に対抗して書かれ、R&Bチャート19位を記録。
このアルバムはJames Brownがプロデュースし、それまで10曲以上一緒にレコーディング、リリースしていましたが、このアルバムを最後に彼の事務所を離れることになりました。
The Isley Brothers – It’s Your Thing (1969)
終わりに
N.W.A.のメンバーMC Renは、今作の制作の意図について、次のように明かしています。
黒人だからといって、警察に襲われるのは間違っていると思うんだ。 誤解しないでほしいが、90%の悪い警察と10%の良い警察がいるようだ。 しかし、なぜ90%の人が10%の人のために物事を台無しにしなければならないんだ? 黒人は警察にレッテルを貼られているように思うよ。 だから交通違反で止められると、おそらく銀行強盗をしたように街角に叩きつけられることになるんだろうね。
この歌詞は全米中で大きく注目を集めましたが、アメリカの警察はこれを黙っていなかったようで、FBIは歌詞について「このアルバムは法執行官の暴力と侮蔑を助長している」としてN.W.Aのレコード会社に抗議の手紙を送ったようです。
またオーストラリアのラジオ局Triple Jは、世界で唯一この曲を流し、半年間オンエアしていたが、南オーストラリア自由党の上院議員のキャンペーンを受け、オーストラリア放送協会の管理者によって放送禁止にされています。
この機会に、元ネタと合わせてこの問題作を聴いてみてはいかがでしょうか。
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