Kendrick Lamar『GNX』サンプリング元ネタ特集:音楽史に刻まれた名作が再生

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Kendrick Lamar (ケンドリック・ラマー)が2024年11月にサプライズリリースしたアルバム『GNX』は、Spotifyで4420万再生を記録し、全米アルバムチャート初登場1位を獲得。全12曲がシングルチャートにランクインし、世界中で注目を集めました。

今回は、このアルバムに収録された楽曲の元ネタ・サンプリングについて解説します。

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『squabble up』元ネタ:Debbie Debの『When I Hear Music』

アルバム2曲目『squabble up』では、1983年にリリースされたニューヨーク・ブルックリン出身のシンガーDebbie Deb『When I Hear Music』がサンプリングされています。

『When I Hear Music』は、Pretty Tony Butlerがプロデュースを手掛けたフリースタイルの楽曲で、当時は歌手としての経験がほとんどなかったDebbie Deb(当時はDebbie Lopez)が歌っています。Pretty Tony Butlerは、エレクトロニクスの学びを活かし、DJとしての経験をもとに音楽制作を行いました。彼がDebbie Debに声をかけ、彼女はそのまま録音に参加。曲がラジオで流れた際、Lopezはその出来事に驚きましたが、契約で受け取った報酬は予想以上に少なく、後には自身が不当に扱われたと感じることとなります。

それでも、Debbie DebButlerの才能を認め、この楽曲が自分の名前を広めるきっかけとなったと振り返りながらも、その後の経験には複雑な感情を抱いています。

Debbie Deb – When I Hear Music (1983)

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『luther』元ネタ:Cheryl Lynn & Luther Vandrossの『If This World Were Mine』

アルバム3曲目の『luther』では、カリフォルニア州ロサンゼルス出身のシンガーCheryl LynnLuther Vandrossによる1982年の名曲『If This World Were Mine』がサンプリングされています。

『If This World Were Mine』は、Cheryl Lynnのアルバム『Instant Love』(1982年)にに収められており、R&Bチャートで7位を記録するヒットとなりました。この曲自体は、もともと1967年にMarvin GayeTammi Terrellのソウルデュオによってリリースされたもので、アルバム『United』に収められています。Marvin Gayeが作詞・作曲を手掛け、1967年11月にシングルとしてリリースされました。さらに、1980年代初めには、Marvin Gayeがツアー中にこの曲をセットリストに加え、Tammi Terrellとのヒットメドレーとして披露しています。

Marvin Gaye & Tammi Terrell – If This World Were Mine (1967)

その後、1982年にLuther VandrossCheryl Lynnがカバーし、R&Bシングルチャートで4位を記録。Luther Vandrossの1989年のコンピレーションアルバム『The Best of Luther Vandross… The Best of Love』にも収められ、長く愛される名曲となりました。

Cheryl Lynn & Luther Vandross – If This World Were Mine (1982)

また、興味深いことに、Cheryl LynnLuther Vandrossによるこのバージョンは、2024年にMustardが発表したアルバム『Faith of a Mustard Seed』の中の『A Song for Mom』でもサンプリングされています。

Mustard feat. Ty Dolla $ign, Charlie Wilson & Masego – A Song For Mom (2024)

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『hey now』元ネタ:D4Lの『Scotty』

アルバム5曲目の『hey now』では、ジョージア州アトランタを拠点に活動していたラップグループD4Lの2005年の楽曲『Scotty』がサンプリングされています。

『Scotty』は、D4Lが唯一リリースしたアルバム『Down for Life』(2005年)に収められており、このアルバムはR&B/Hip Hopチャートで4位を記録するなど、グループの代表作となりました。

D4L – Scotty (2005)

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『reincarnated』 元ネタ:2Pac feat. Outlawzの『Made Niggaz』

アルバム6曲目の『reincarnated』では、ニューヨーク、マンハッタン出身のラッパー2PacOutlawzによる1996年の楽曲『Made Niggas』がサンプリングされています。

『Made Niggas』は、ジャッキー・チェン主演の映画『Supercop』のサウンドトラックに収められています。このサウンドトラックにはオルタナティヴ・ロックやヒップホップなど、さまざまなジャンルの音楽が収められていましたが、商業的には大きな成功を収めることなく、全米アルバムチャートで133位にランクインしたにとどまりました。ただし、このサントラに収められていたWarren GAdina Howardによる『What’s Love Got to Do With It』は、ラップチャートで5位を記録するヒットとなりました。

2Pac feat. Outlawz – Made Niggaz (1996)

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『tv off』元ネタ①:Monk Higginsの『Mac Arthur Park』

アルバム7曲目の『tv off』では、アーカンソー州メニフィー出身のサックス奏者Monk Higginsの1968年の楽曲『Mac Arthur Park』がサンプリングされています。

『Mac Arthur Park』は、Monk Higginsの同名アルバム『Mac Arthur Park』に収められており、アルバム内では他にも注目すべき楽曲が多くあります。特に、『I Believe to My Soul』は、Kendrick Lamarのシングル『Not Like Us』でサンプリングされ、さらにその影響力を広げました。

Monk Higgins – Mac Arthur Park (1968)

『tv off』元ネタ②:John Barryの『Overture』

さらに、Kendrick Lamar『tv off』は、イギリス出身の作曲家であり指揮者のJohn Barryの1979年の楽曲『Overture』をサンプリングしています。

『Overture』は、1979年に公開された映画『The Black Hole』のためにJohn Barryが作曲したもので、映画のサウンドトラックに収められています。『tv off』では、この曲の一部が1:55あたりからサンプリングされており、映画音楽の壮大な雰囲気が楽曲に新たな深みを加えています。

John Barry – Overture (1979)

『peekaboo』元ネタ:Little Beaverの『Give a Helping Hand』

アルバム9曲目の『peekaboo』では、アーカンソー州フォレストシティ出身のシンガー兼ギタリストLittle Beaverの1972年の楽曲『Give a Helping Hand』がサンプリングされています。

『Give a Helping Hand』は、Little Beaverのデビューアルバム『Joey』に収められており、その独特なサウンドが高く評価されています。Little Beaverの楽曲は、JAY-ZSlum VillageSmoke DZAなどのアーティストによってもサンプリングされ、現代の音楽シーンにおいても新たな形で影響を与え続けています。

Little BeaverGive a Helping Hand (1972)

『heart pt. 6』 元ネタ:SWVの『Use Your Heart』

アルバム10曲目の『heart pt. 6』では、ニューヨーク出身のR&BグループSWVの1996年の名曲『Use Your Heart』がサンプリングされています。

『Use Your Heart』は、SWVの2枚目のアルバム『New Beginning』に収められており、アルバムは全米アルバムチャートで9位を記録するヒットとなりました。この楽曲は、The Neptunesがプロデュースを手掛けており、アルバムからのセカンドシングルとしてリリースされました。『Use Your Heart』は、The Neptunesがプロデュースした楽曲として初めてチャートにランクインした作品となり、その後の彼らのキャリアにおいても重要な1曲となっています。

SWV – Use Your Heart (1996)

おわりに

Kendrick Lamarのアルバム『GNX』は、サプライズリリースとして発表され、瞬く間に世界中で注目を集め、その圧倒的な成功を収めました。アルバムには、音楽史に名を刻んだ数々のアーティストたちの楽曲がサンプリングされ、それぞれがKendrick Lamarの独自のスタイルで見事に蘇っています。

これにより、Kendrick Lamarは過去の名曲と現代の音楽を巧みに融合させ、これまでにない新しい音楽的地平を切り開きました。彼の音楽的知識とクリエイティブなアプローチは、彼の影響力をさらに強固にし、次世代のアーティストたちにも多大な影響を与え続けています。

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