2003年に発表したBlack Eyed Peas (ブラック・アイド・ピーズ)の3枚目のアルバム「Elephunk」からシングル「Where Is the Love?」は、10ヵ国以上のチャートで1位を獲得し、グラミー賞では2部門にノミネートされるなど、一躍その人気を世界的なものとしました。
それから2年後、2005年に発表した4枚目のアルバム「Monkey Business」は、全米チャート2位に入り、全世界で900万枚を超えるセールスを記録しました。
今回は、このアルバムからリードシングルで、当時の彼らの最高位となる全米チャート3位を記録した「Don’t Phunk With My Heart」をピックアップ。
ここでは、この曲の元ネタについて解説します。
Black Eyed Peas – Don’t Phunk With My Heart (2005)
“Don’t Phunk With My Heart” 楽曲情報
レーベル
A&M Records
Will.i.am Music Group
プロデューサー
will.i.am
元ネタ・サンプリング
Lisa Lisa & Cult Jam feat. Full Force – I Wonder if I Take You Home (1985)
Asha Bhosle – Ae Naujawan Hai Sab Kuchch Yahan (1972)
Kalyanji Anandji & Asha Bhosle – Yeh Mera Dil Pyar Ka Diwana (1978)
Gucci Crew Ⅱ- Sally (That Girl) (1987)
“Don’t Phunk With My Heart” 元ネタ・サンプリング①
Lisa Lisa & Cult Jam feat. Full Force – I Wonder if I Take You Home (1985)
元ネタになったのは、ニューヨークで結成したポップスグループLisa Lisa & Cult Jam (リサ・リサ&カルト・ジャム)の「I Wonder if I Take You Home」(1985)です。
プロデューサーチームFull Forceのオーディションを経て結成された彼らは、Columbia Recordsと契約し、1985年にデビューアルバム「Lisa Lisa & Cult Jam with Full Force」をリリース。
この曲はアルバムからのリードシングルで、全米ダンスチャート1位を獲得し、フックのメロディーは後にBig MoeやMeek Millなどのラッパーにサンプリングされています。
Big Moe feat. Enjoki & Tyte Eyez – I Wonder (2000)
Meek Mill feat. Big Sean & Wale – Take U Home (2012)
“Don’t Phunk With My Heart” 元ネタ・サンプリング②
Asha Bhosle – Ae Naujawan Hai Sab Kuchch Yahan (1972)
また、Black Eyed Peasの「Don’t Phunk With My Heart」は、インド出身のシンガーAsha Bhosle (アシャ・ボスレ)の「Ae Naujawan Hai Sab Kuchch Yahan」(1972)をサンプリングしています。
彼女は、80年以上のキャリアを持つインドの※プレイバックシンガー、女優であり、これまでに録音した12,000曲以上で「最も多くのスタジオレコーディング(シングル数)」というギネス世界記録を持っています。
※プレイバックシンガーとは、映画で使用する曲をあらかじめ録音しておく歌手のことで、撮影時にはプレイバックシンガーが歌う曲を俳優や女優が口パクで歌います。
2000年には、インド映画界最高の賞である「ダダサヘブ・ファルケ賞」を受賞し、2008年にはインド政府からインドで2番目に高い民間人の名誉であるパドマ・ブーシャン勲章が授与されています。
この曲は1972年にリリースされ、2014年のアメリカのコメディドラマ映画「Learning to Drive」のサウンドトラックにも収録されています。
“Don’t Phunk With My Heart” 元ネタ・サンプリング③
Kalyanji Anandji & Asha Bhosle – Yeh Mera Dil Pyar Ka Diwana (1978)
さらに、Black Eyed Peasの「Don’t Phunk With My Heart」は、インド出身の兄弟プロデューサーデュオKalyanji Anandjiの「Yeh Mera Dil Pyar Ka Diwana」(1978)をサンプリングしています。
Kalyanji Anandjiが映画の音響も担当した1978年のインドのヒンディー語映画「Don」のサウンドトラックに収録されており、この曲では前述のインド人歌手Asha Bhosleが歌っています。
“Don’t Phunk With My Heart” 元ネタ・サンプリング④
Gucci Crew Ⅱ- Sally (That Girl) (1987)
最後に、Black Eyed Peasの「Don’t Phunk With My Heart」は、ラップグループGucci Crew Ⅱの「Sally (That Girl)」(1987)をサンプリングしています。
マイアミベースグループの彼らは、1987年にデビューアルバム「So Def, So Fresh, So Stupid」をリリースし、この曲も収録されています。
地元では2 Live Crewのデビューアルバムに次ぐヒットとなり、同年にフロリダ以外でも「Sally (That Girl)」で人気に火がつき、1997年に発表されたコンピレーションアルバム「So So Def Bass All Stars Vol.Ⅱ」にも収録されるなど、彼らの代表曲となりました。
おわりに
多くの楽曲をサンプリングしながらも、特にインドの音楽シーンにフォーカスし、独自のサウンドで多くのオーディエンスを魅了しました。
また、この曲は「Don’t Mess with My Heart」というタイトルで再レコーディングされており、このバージョンは「Phunk」という言葉が「Fuck」という単語に近すぎるという理由で、一部のラジオ局に向けて再リリースされています。
この機会に、元ネタと併せて聴いてみてはいかがでしょうか。
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