Bow Wow feat. Ciaraの「Like You」は、2005年にリリースされたBow Wowのキャリア最大のヒットシングルだ。元ネタはNew Editionが1984年に発表した「I’m Leaving You Again」のキーボードフレーズで、プロデュースはJermaine Dupri & Bryan-Michael Cox。しかもこのサンプルを見つけてきたのは、当時17歳だったBow Wow本人だった。全米R&BチャートとラップチャートでW首位、Billboard Hot 100では最高3位——現在もBow Wow史上最高位のシングルとして君臨する、2000年代R&Bを代表する名曲だ。
🎧 クイック概要:10秒でわかる基本データ
| アーティスト / 曲名 | Bow Wow feat. Ciara / Like You |
|---|---|
| 収録アルバム | Wanted (2005) |
| 主なサンプリング元 | New Edition – I’m Leaving You Again (1984) |
| 最高位 | 米Billboard Hot 100 最高3位 / 米Hot R&B・Hip-Hop Songs 首位 / 米Hot Rap Songs 首位 |
元ネタはNew Editionの「I’m Leaving You Again」——80年代の温もりを2005年に蘇らせた
「Like You」のサウンドの核を担っているのは、New Editionが1984年にリリースした「I’m Leaving You Again」のキーボードコードだ。ただし、オリジナル音源をそのまま切り貼りするサンプリングではなく、あくまでも「インターポレーション(新録再現)」という手法で制作されている。そのため「Like You」の楽曲クレジットには、原曲を書いたNew EditionメンバーのRicky Bell・Ralph Tresvantの名前が、「Like You」側のソングライターであるJermaine Dupri・Johntá Austin・Jaron Alsonとともに連名で記載されることになった。
New Editionはボストン出身の男性R&Bグループで、Bobby Brown、Ralph Tresvant、Ricky Bellら後にソロで大成するスターを輩出した1980年代の伝説的ユニット。「I’m Leaving You Again」はRicky BellとRalph Tresvantのふたりが書き下ろしたソウルフルなバラードで、シングルカットはされなかったものの、当時のR&Bの質の高さを体現する1曲だ。Jermaine Dupriはそのキーボードのコード進行だけを抽出し、2005年のヒップホップとR&Bが融合するサウンドのなかへ自然に溶け込ませた。懐かしいのに新しい——その絶妙な感覚が、幅広い世代のリスナーを引きつけた理由のひとつだ。
「このレコードには何かある」——元ネタを掘り起こしたのはBow Wow本人だった

「Like You」誕生の経緯には、見逃せない事実がある。サンプリング元となるNew Editionの曲を持ち込んできたのは、プロデューサーのJermaine Dupriではなく、当時17歳だったBow Wow本人だったのだ。
2025年にBillboardが掲載したインタビューで、Bow Wowはその瞬間をこう振り返っている。
「アトランタでレコーディングしていたとき、俺がサンプルを見つけたんだ。JDが別の曲を作っていたとき、俺が『このNew Editionのアルバム聴いたことある? "I'm Leaving You Again"なんだけど、このレコードには何かある。JD、ちょっといじってみてくれない?』って頼んだ。今思い出すだけで鳥肌が立つ。JDがやり始めたとき、俺はすぐわかった。"これは1位になる"って」
Bow Wow(本名:Shad Gregory Moss、1987年生まれ)は6歳でSnoop Doggに見出され、11歳でJermaine Dupriと出会い、13歳でデビューアルバムをリリースした生粋のチャイルドスターだ。幼い頃から音楽に浸かり続けてきた耳が、キャリア最大のヒットを引き寄せた——その事実は、単なるエピソードを超えたものがある。
ふたりは同じスタジオにいなかった——それでも息がピッタリ合う理由

完成した「Like You」を聴けば、Bow WowとCiaraが同じ空間で向き合いながら歌ったかのような熱量がある。しかし実際には、ふたりは別々に録音していた。同じBillboardインタビューでBow Wowはこう明かしている。
「俺たちがスタジオで一緒にいたとは思わない。俺が自分のパートを仕上げて、その後CiaraがSouthside Studios(アトランタ)に来て彼女のパートを録った」
エンジニアはJohn Horesco IV、ミックスはDupriとPhil Tanが担当した。Bow Wowのヴァースはリズミカルなヒップホップスタイル、Ciaraのコーラスはソウルフルな歌唱——この対比が掛け合いとして機能し、別々の録音であることを感じさせない仕上がりになっている。別々に録音されながらも「同じ部屋で歌った」ような熱量があること——それがこの曲の強さだ。
「ゲームで一番ホットなふたり」——当時リアルに交際中だったカップルの共演

「Like You」が特別なのは、音楽的な完成度だけが理由ではない。Bow WowとCiaraは当時、実際に交際していた。ともにティーンエイジャーだったふたりが、その感情をそのまま楽曲へ注ぎ込んだのだ。
Bow Wowはインタビューでその頃の状況をこう語っている。
「当時、Ciaraは最高潮だった。デビューアルバム『Goodies』でトリプルプラチナが目前だった。俺は当時ゲームで一番若くてホットなやつで、彼女は当時ゲームで一番若くてホットな女性だった。そのときふたりで付き合っていた。Jermaine Dupriのプロダクトで一緒にコラボすることは、完璧な意味があった。そしてリリースと同時にR&Bチャートで1位を取った——どーんと、最初から1位だ」
ふたりの交際は2004年に始まり、「Like You」のリリースとともに広く知られることとなった。交際は2006年まで続いた。当時17歳で恋人と曲を作り、公の場で関係を公表するというプレッシャーについて、Bow Wowは「難しくはなかった。タイミングが全てだった。自然だった」と振り返っている。
Ciaraの記事はこちら。
MVは高層マンションのすれ違いラブストーリー——Outkast「Hey Ya!」の監督が演出

ミュージックビデオはBryan Barber監督が手がけた。Outkastの「Hey Ya!」のMVを演出したことでも知られる人物で、「Like You」でも映像的なセンスを存分に発揮している。
舞台は高層マンション。Bow Wowはある階に、Ciaraはその1つ下の階に住んでいる設定で、それぞれに別の交際相手がいるが、ふたりは互いに強烈に惹かれ合っている。デートの準備をしながら電話で話したり、エレベーターで偶然に出会ったりするシーンが展開されるが、結局は一線を越えることなく、それぞれの相手のもとへと向かう——切なさを帯びたプロットだ。コメディアンのAlex Thomas Jr.が駐車係役で出演している。
チャート記録:Bow Wow史上最高、そしてCiaraとW首位の夏
「Like You」が叩き出した数字は、Bow Wowのキャリアで今もって塗り替えられていない。
アメリカでの記録
Billboard Hot 100では最高3位を記録し、21週にわたってチャートに居続けた。Hot R&B/Hip-Hop SongsとHot Rap Songsの両チャートでは首位を獲得。Pop Airplayでも9位まで上昇し、ジャンルの壁を越えたヒットであることを証明している。2005年の年間Hot 100では30位にランクインした。
さらに注目すべき状況があった。「Like You」がHot 100でランクアップしていた時期、Bow Wow自身の別シングル「Let Me Hold You」feat. Omarionも同チャートのトップ5に存在していたのだ。ひとりのアーティストが同時期にHot 100トップ5へ2曲を送り込むという、異例の状況が生まれていた。
Ciaraにとっての意味
「Like You」はCiaraにとってHot 100での通算5曲目のトップ10ヒットとなった。前年のデビューシングル「Goodies」(2004年)からわずか1年で5曲連続トップ10入りというペースは、いかに彼女がこの時期に飛ぶ鳥を落とす勢いだったかを物語っている。
海外チャート
全米だけでなく、アイルランドで4位、オーストラリアで16位(アーバンチャートでは4位)、イギリスで17位(UK Hip Hop/R&Bチャートでは2位)、ドイツで39位を記録するなど、国際的にも幅広い支持を得た。
認定
アメリカではデジタルシングルとしてRIAAゴールド認定(50万以上)、マスタートーン(着信音)としてプラチナ認定(100万以上)を取得。イギリスでBPIシルバー認定、ニュージーランドでRMNZプラチナ認定を獲得している。
American Music Awards 2005で「Like You」を生披露——全盛期のBow Wowを象徴するステージ

シングルリリースから約4ヶ月後の2005年11月22日、第33回American Music Awardsの舞台でBow WowとCiaraは「Like You」を生披露した。Omarionとの共演ヒット「Let Me Hold You」「O」とのメドレー形式で登場し、その年のBow Wowがいかに絶頂にあったかを印象づけるパフォーマンスとなった。
「Let Me Hold You」の記事はこちら。
「Cirocを飲みすぎた」——なぜふたりは今も「Like You」を一緒に歌えないのか

「Like You」は20年以上が経った今も代表曲として演奏され続けている。しかしこの曲には、ある”炎上事件”がついて回っている。
2019年、アトランタのクラブ「Elleven45 Lounge」でのパフォーマンス中、Bow WowはマイクでCiaraについて不適切な発言をした。映像はネット上で瞬く間に拡散し、T.I.・Nelly・Jermaine DupriがBow Wowに対してインターベンション(直接介入)を行うという騒動に発展した。
Rap Radar(Tidalポッドキャスト)でCiaraとの再共演について問われたBow Wowは、こう打ち明けている。
「やろうとしたことがある。試みた。……Ciroc(ウォッカ)を飲みすぎて、調子に乗りすぎてしまった」
隣に座っていたOmarionが「ラッセル・ウィルソン(Ciaraの夫)に話をしなきゃ」と笑いながら言い添えると、スタジオは苦笑いに包まれた。2025年のBETアワードでBow Wowが「Like You」を披露した際も、Ciaraは会場に来ていたにもかかわらずステージには合流しなかった。Bow WowはTMZの取材に対し「ステージを降りてからTwitterで初めて彼女が来ていたと知った。BETが手配してくれていたら、喜んで一緒にやっていた」と説明している。
まとめ:17歳の耳と、17歳の恋愛が生んだBow Wow最大のヒット
「Like You」は、80年代R&Bの名曲のキーボードコード、2005年のヒップホップとR&Bのハイブリッドサウンド、そしてリアルカップルならではの感情——この三つが重なって生まれた曲だ。
Bow Wow自身がNew Editionのレコードを掘り起こし、Jermaine Dupriがビートを構築し、Ciaraが感情を乗せたコーラスを吹き込んだ。ふたりはスタジオで別々に録音したにもかかわらず、完成品には「同じ部屋で互いを見つめながら歌った」ような熱量がある。
Hot 100最高3位、R&B・ラップの両チャートで首位、21週のチャートイン——この記録は今もBow Wowのキャリアの頂点として刻まれている。17歳の耳が元ネタを掘り当て、ティーンエイジャーの恋愛が曲に命を吹き込んだ。「Like You」が20年後もプレイリストに残り続けている理由は、そこにある。
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