Kanye West「Believe What I Say」を徹底解説|Lauryn Hillサンプリングの意味と背景とは?

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Kanye West (カニエ・ウェスト)の10作目のスタジオアルバム『Donda』は、2021年8月にリリースされました。The Weeknd、JAY-Z、Kid Cudi、Travis Scott、Lil Baby、Pop Smokeなど、錚々たるアーティストが参加し、デラックス版ではAndré 3000やTyler, the Creatorの名前も連なります。プロデュースの中心はKanye自身。制作はワイオミング州やアトランタのメルセデス・ベンツ・スタジアムなど、彼の独特な制作環境の中で進められました。

当初は2020年7月に『God’s Country』というタイトルで発表される予定でしたが、リリース延期と楽曲の差し替えを重ねながら、最終的な形へと進化。ヒップホップやゴスペル、トラップ、ドリルなどを取り入れつつ、ミニマルとマキシマルを行き来する構成が特徴的です。歌詞には、信仰や正義、元妻キム・カーダシアンとの関係、そして亡き母ドンダ・ウェストへの思いが織り込まれています。

リリース直後、Kanyeはレーベルが彼の許可なくアルバムを公開したとSNSで発言し、話題となりました。シングルカットされた「Hurricane」「Believe What I Say」「Off the Grid」などは特に注目を集め、批評家の間では賛否が分かれたものの、いくつかのメディアでは2021年のベストアルバムにも選出。グラミー賞にも複数部門でノミネートされました。

アルバムはApple MusicとSpotifyでリリース初日に最も再生された作品となり、アメリカのアルバムチャートではKanyeにとって10作連続となる1位を記録。さらに、イギリスやフランスなど18カ国以上で1位を獲得するなど、世界的な成功を収めました。

今回は、そんな『Donda』から3枚目のシングルとして発表された「Believe What I Say」について、その背景や込められたメッセージを掘り下げていきます。

Kanye West – Believe What I Say (2021)

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サンプリングの背景にあるもの

「Believe What I Say」では、Lauryn Hill (ローリン・ヒル)が1998年に発表した「Doo Wop (That Thing)」の一節をサンプリングしながら展開していきます。

Lauryn Hill – Doo Wop (That Thing) (1998)

この楽曲は、Lauryn Hillのソロデビューアルバム『The Miseducation of Lauryn Hill』からのリードシングルで、作詞・作曲・プロデュースすべてを彼女自身が手がけています。アメリカのチャートでは初登場1位という快挙を達成し、これは女性ラッパーとしては史上初。また、ソロの女性によって書かれ、プロデュースされ、レコーディングされた楽曲としては、1989年のDebbie Gibson以来の快挙でもありました。

この曲では、アフリカ系アメリカ人の若者たちに向けた鋭い社会的メッセージが込められています。「that thing(あのモノ)」に惑わされるな、という警告は、物質主義や見せかけに振り回されず、本質を見極めることの大切さを訴えかけています。

音楽的にはソウルやドゥーワップの要素を取り入れ、90年代R&B/ヒップホップの金字塔とも言える仕上がり。批評面・商業面ともに高い評価を受け、グラミー賞では「最優秀R&Bソング」「最優秀女性R&Bボーカル・パフォーマンス」の2部門を受賞しました。

ミュージックビデオも高く評価されており、1999年のMTVビデオ・ミュージック・アワードでは史上初の「ビデオ・オブ・ザ・イヤー(最優秀ビデオ賞)」を受賞。画面分割によって60年代と90年代のLauryn Hillを並べる斬新な映像演出は、今も多くのアーティストに影響を与え続けています。

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「Believe What I Say」に込められたメッセージ

『Donda』全体が持つ重く荘厳な雰囲気の中にあって、「Believe What I Say」は明らかに異彩を放つ一曲です。Lauryn Hillのフレーズが鮮やかに響くビートの上で、Kanye Westは自分の内面と向き合いながら、過去・現在・未来を語っていきます。

この楽曲の核にあるのは、“信じる”というテーマ。Kanyeは、自らが経験してきた名声・誹謗中傷・精神的な負荷、さらには家族とのすれ違いなどを率直に吐露しています。

「Don’t let the lifestyle drag you down」
(ライフスタイルに振り回されるな)
といったラインには、彼が名声の裏で抱えてきた孤独や葛藤がにじみ出ています。

サビでは、「信じてほしい」という願いと、「自分の言葉に耳を傾けてほしい」というKanyeの切実な声がリスナーに響きます。Lauryn Hillが1998年に「惑わされるな」と訴えたメッセージと、Kanyeが2021年に「自分の言葉を信じろ」と語る構図は、時代を超えて見事にリンクしています。

曲の後半には、ジャマイカ出身のレゲエアーティスト、Buju Banton(ブジュ・バントン)が登場。関係の崩壊や信頼の失墜を語るパートが加わることで、個人的な愛情や人間関係の問題も深く掘り下げられていきます。

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リリース前から話題に

この曲が初めて世に姿を現したのは、アルバムのリリースよりも前、2020年9月のこと。Kanyeが自身のTwitterに45秒のティーザー映像を投稿し、そこで「Believe What I Say」が使用されていました。海の上でボートに乗りながら撮影されたこの映像は、Lauryn HillのサンプルとKanyeのリラックスした佇まいが話題となり、SNS上でも大きな反響を呼びました。

ファンの間では「久々にKanyeらしい」「ポップな曲が戻ってきた」と期待の声が相次ぎ、正式リリース前から注目を集めていた楽曲です。

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おわりに

「Believe What I Say」は、Lauryn Hillのクラシックな一節を軸に、Kanye Westが現代における“真実”や“自己の声”とどう向き合っているかを描いた重要な一曲です。ポップでありながらも内省的で、聴きやすさと深みの両方を兼ね備えた構成は、彼にしか作り得ないバランス感覚の賜物だと言えるでしょう。

たびたび物議を醸しながらも、常に進化し続けるKanye West。その彼が“Believe What I Say(俺の言うことを信じてくれ)”と訴えるこの曲は、派手な表現の裏にある、静かな叫びのようにも聴こえてきます。混沌とするメディア社会の中で、“何を信じるか”を私たちに問いかけるような、そんな1曲です。

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