Mo Money Mo Problemsとは?元ネタ・意味を解説|Biggie死後No.1ヒットと「I’m Coming Out」サンプリング秘話

1990年代
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The Notorious B.I.G.の「Mo Money Mo Problems」は、1997年に『Life After Death』から死後リリースされた、Puff DaddyとMaseをフィーチャーした歴史的なナンバーワンシングルだ。サンプリング元はDiana Rossが1980年にリリースしたディスコの名曲「I’m Coming Out」で、その躍動するギターリフはNile Rodgersがニューヨークのトランスジェンダーナイトクラブのトイレで受けた着想から生まれた。

Biggieが銃撃で命を落とした1997年3月9日からわずか数ヶ月後にBillboard Hot 100首位を獲得し、死後に2曲連続でHot 100首位を記録した史上唯一のアーティストという不滅の記録を作り上げた。

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🎧 クイック概要:10秒でわかる基本データ

アーティスト / 曲名The Notorious B.I.G. feat. Puff Daddy & Mase / Mo Money Mo Problems
収録アルバムLife After Death(1997)
主なサンプリング元Diana Ross – I’m Coming Out(1980)
最高位米Billboard Hot 100 首位(2週)
ニュージーランド 首位
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サンプリング元「I’m Coming Out」——クラブのトイレで生まれた着想

「Mo Money Mo Problems」の核となるあのギターリフの正体は、Diana Rossが1980年にリリースしたディスコアンセム「I’m Coming Out」だ。

作・編曲はディスコバンドChicのNile RodgersとBernard Edwardsのコンビで、Rossのアルバム『Diana』に収録されている。 この曲の誕生には、ドラマチックな裏話がある。New York PostやYahoo Music、Washington Postなど複数のインタビューでNile Rodgersが語ったところによると、Studio 54時代のニューヨークで深夜にクラブをはしごしていたある夜、GG’s Barnum Room(別名The Gilded Grape)というトランスジェンダーナイトクラブのトイレに入ると、Diana Rossのものまね(ドラッグクイーン)が6〜8人も並んでいた。その光景を目にしたRodgersは外に出てすぐにBernard Edwardsに電話し、「Diana Rossはゲイコミュニティに深く愛されている。もし『I’m Coming Out』という曲を書けば、James Brownの『Say It Loud – I’m Black and I’m Proud』と同じパワーを持てる」と伝えた。

Edwardsはすぐに賛同し、翌日スタジオで曲が完成した。 完成したアルバムをDiana Rossは気に入って送り出したが、当時世界No.1のラジオパーソナリティだったFrankie Crocker(WBLS)に聴かせたところ、「『I’m coming out』はゲイの人々が自分のセクシュアリティを告白するときに使う表現だ。リスナーはDiana Ross自身がゲイだと思う。キャリアが終わる」と警告された。Rossは傷心して「なぜ私のキャリアを台無しにしようとするの?」と詰め寄った。Rodgersはこう言い返したという。

「もし本当に君のキャリアを壊したとしたら、俺たちのキャリアも終わる。君はもうDiana Rossだ。俺たちはまだ始まったばかりだ」(Nile Rodgers

こうして説得されたRossはリリースを決意。「I’m Coming Out」はBillboard Hot 100で最高5位を記録し、収録アルバム『Diana』はRossのキャリア最大のヒット作となった。そして約17年後、誰も予測しなかった形でこのアンセムがヒップホップ史に刻まれることになる。

「I’m Coming Out」の記事はこちら。

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Stevie J——1997年夏のチャートを制した男

「Mo Money Mo Problems」はBiggie、Mase、Puff Daddy、そしてプロデューサーのStevie Jによって共同制作された。 Stevie Jはニューヨーク州ユーティカ生まれ、バッファローとロチェスターで育った。Bad Boy Records加入以前はJodeciのライブミュージシャンとしてベースギターを担当しており(1995年のアルバム『The Show, the After Party, the Hotel』にも参加)、JodeciのツアーでBiggieやPuff Daddyとも顔なじみになっていた。

またJodeciメンバーのDeVante Swingが設立したロチェスター拠点の音楽コンパウンド「Swing Mob」にも参加。Swing Mob解散後、Puff Daddyにスカウトされる形でBad Boyの専属プロデューサー集団「The Hitmen」へ加入した。 Stevie JがBad Boy時代に叩き出した1997年夏の記録は異例だ。Stevie Jがプロデュースした「I’ll Be Missing You」(Puff Daddy)、「Mo Money Mo Problems」(The Notorious B.I.G.)、「Honey」(Mariah Carey)が、1997年夏にBillboard Hot 100を連続で制覇。Puff Daddyは13週連続でHot 100の首位に関与し続けた。この3曲すべてにStevie Jが関与していたという事実が、彼をこの時代のプロデューサーとして別格の存在にしている。

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フックを歌ったKelly Price——ノンクレジットのまま世界的ヒットに

「Mo Money Mo Problems」のフック(コーラス)を歌っているのはR&Bシンガーのケリー・プライスだが、彼女の名前は正式なクレジットに記載されなかった。BET.comのインタビューでKelly Price自身はこう語っている。

「『Mo Money Mo Problems』に参加を求められたとき、私はすでにBiggieのファンだった。Ma$eは新顔で、私はすべての曲を書いていたライターだった」

プライスは翌1998年にデビューアルバム『Soul of a Woman』をリリースし、R&Bシーンで存在感を示していく。この曲への参加は彼女のキャリアの大きな足がかりとなった。

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Biggieのバースは最後だけ——あえて「トリ」に置かれた構成

「Mo Money Mo Problems」の構成には、一般にはあまり知られていない特徴がある。タイトルクレジットはThe Notorious B.I.G.名義でありながら、彼自身は曲の最後のバースにしか登場しない。 まずMaseが1バース、続いてPuff Daddy、そして最後にBiggieが締めるという流れだ。

Maseはハーレム出身らしい自信に満ちた自己賛美を流れるように並べ、Puff Daddyはタイムズスクエアに匹敵するほどの知名度を誇示する——壮大な自己賛美の応酬の後に、Biggieの落ち着いた、しかし圧倒的な存在感が締めくくりとして現れる。

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「金が増えれば、問題も増える」——タイトルはBiggie自身の言葉

「Mo Money Mo Problems」というタイトルは、Biggieが生前に語った言葉から来ている。

「金を稼げば稼ぐほど、問題が増える。嫉妬と妬みは成功についてくるものだ」(The Notorious B.I.G.)

MVの中でも、Biggieの過去映像にこの言葉が重ねられている。祝福するような跳ねるディスコビートに乗せながら成功の重さと暗部を語るこの逆説的な構造こそが、批評家や聴衆を惹きつけ続ける所以だ。

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Bernard Edwardsの死と、「I’m Coming Out」の奇跡的な連鎖

「I’m Coming Out」の共作者であるBernard Edwardsは、「Mo Money Mo Problems」がリリースされる前年の1996年4月18日、東京・武道館でのChicのコンサートの翌日にホテルで肺炎により急逝した。享年43歳。Billboard誌の訃報とWikipedia「Bernard Edwards」に明記されている通り、公演前から体調不良を訴えていたEdwardsはRodgersから出演中止を勧告されたが、ファンへの責任感からステージに立ち続け、舞台上で一時意識を失いかけながらも演奏をやり遂げた。 「I’m Coming Out」の共作者が他界した翌年、その曲をサンプリングしたヒップホップ最大級のヒットが生まれた——この連鎖もまた、この曲の特異な運命を語る上で欠かせない事実だ。

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Hype Williamsが演出した「シャイニースーツ時代」の金字塔MV

「Mo Money Mo Problems」のMVはHype Williamsが監督を務め、Bad Boyサウンドの豪華さを映像で体現した作品だ。 Ron Norsworthyがデザインした未来的なセット——蛍光灯が並ぶトンネル、床から圧縮空気が吹き出す真っ白なチェンバー——でMaseとPuff Daddyが浮遊しながら踊る。赤いシャイニージャケットを纏った二人の姿は、このMVを象徴するビジュアルだ。

MVにはSheek Louch(The LOX)、ボクサーのRiddick Bowe、Stevie J、Nashiem Myrickも出演している。ストーリーラインはゴルフトーナメントを舞台にしており、Biggieの霊に助けられたPuff Daddyが優勝するという設定。当時急速に人気を高めていたTiger Woodsへの反応として企画されたものだ。

最も印象的な演出は、Biggieの最終バースで訪れる。すでに銃撃で命を落としていたBiggieはMVの撮影に参加できなかった。スクリーンにはBiggieが過去にパフォーマンスしているアーカイブ映像が流れ、再生速度が調整されてBiggieのボーカルにシンクロするよう編集された。彼をMVに「出演」させられる唯一の方法がこれだった。

なお、コーラスのスクリーン映像にはKelly Priceが映し出されており、最終バースのスクリーンにBiggieのアーカイブ映像が切り替わる構成になっている。 この「光り輝くスーツ」「ダンス重視」「華やかなパーティー感覚」のビジュアルは後に「Shiny Suit Era(シャイニースーツ時代)」と呼ばれる90年代後半のBad Boy美学の代名詞となった。MuchMoreMusicは本MVを「40 Most Memorable Videos」の31位に選出。VH1も「100 Greatest Songs of the Past 25 Years」で58位に選出している。

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死後に2度、全米1位——史上唯一の記録

The Notorious B.I.G.は1997年3月8日の夜、ロサンゼルスでVibe誌・Qwest Records主催のソウル・トレイン・ミュージック・アワードのアフターパーティー(会場:ピーターセン自動車博物館)に参加した。ロサンゼルス消防局が過密を理由にパーティーを早期終了させたため、Biggieらは午前12時30分ごろ会場を後にした。ウィルシャー通りとフェアファックス通りの交差点で車が赤信号で停車したところに、別の車が横付けして銃撃。Biggieは4発を受けセダーズ・サイナイ医療センターに搬送されたが、午前1時15分に死亡が確認された。享年24歳。

遺作となった2枚組アルバム『Life After Death』は死の16日後の1997年3月25日にリリースされ、初週に690,000枚を売り上げBillboard 200首位を獲得。4週連続で首位を保った。「Hypnotize」が1997年5月にHot 100首位に立ち、続いて「Mo Money Mo Problems」が7月15日にシングルリリースされ、Biggieへの追悼曲「I’ll Be Missing You」(Puff Daddy feat. 112 & Faith Evans)と入れ替わる形で首位を獲得し、2週連続首位を記録した。

この結果、Biggieは死後に2曲連続でHot 100首位を記録した史上唯一のアーティストとなった。これはHot 100の歴史上前例のない記録だ。翌1998年の第40回グラミー賞では、「Mo Money Mo Problems」はBest Rap Performance by a Duo or Groupにノミネートされた(同部門は「I’ll Be Missing You」が受賞)。

「Hypnotize」の記事はこちら。

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まとめ:死後に輝き続ける、Biggieの逆説的アンセム

「Mo Money Mo Problems」は、あらゆる意味で逆説に満ちた一曲だ。クラブのトイレで生まれたディスコの解放歌をサンプリングし、成功の喜びを讃えるビートに乗せて成功の重さと危険を語る。リードアーティストはフックにもコーラスにも登場せず、最後のバースだけに現れる。

そしてその曲は、彼が死んだ後にヒットした。 「I’m Coming Out」の共作者・Bernard Edwardsも同曲リリースの前年に他界しており、計らずも2人の音楽家が同じシングルに刻まれることとなった。 「金が増えれば問題も増える」——Biggieはそう言っていた。そしてその問題は最悪の形で訪れた。その言葉と姿が映像に刻まれながら、「I’m Coming Out」のギターリフが今日も鳴り響く。死後に2枚のシングルが全米1位になった唯一のアーティストとして、そしてヒップホップをポップメインストリームへと押し上げた先駆者のひとりとして、この3分半は今後も語り継がれるだろう。

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