ニューヨークのラップシーンを牽引し、90年代を象徴するラッパーの1人であるThe Notorious B.I.G.。
彼の死から16日後に発表された2枚目のアルバム「Life After Death」(1997)は、全米チャート1位に輝き、第40回グラミー賞において「最優秀ラップアルバム」を受賞。
また2020年には音楽メディア誌Rolling Stoneが選ぶ「The 500 Greatest Albums of All Time」にも選出されるなど、ヒップホップの歴史に名を刻む作品となりました。
今回は、このアルバムからセカンドシングルの「Mo Money Mo Problems」をピックアップ。
この曲は、DiddyとMaseがゲスト参加しており、イントロからDiana Rossを大胆にサンプリングしています。
ここでは、元ネタについて解説します。
The Notorious B.I.G. feat. Diddy & Mase – Mo Money Mo Problems (1997)
楽曲情報
The Notorious B.I.G.
出身地 :ニューヨーク、ブルックリン
生年月日:1972年5月21日
ジャンル:Hip Hop
没年月日:1997年3月9日 (24歳)
Diddy
出身 :ニューヨーク
生年月日:1969年11月4日
ジャンル:Hip Hop
Mase
出身 :ニューヨーク
生年月日:1975年8月27日
ジャンル:Hip Hop
レーベル
Bad Boy Entertainment
Arista Records
プロデューサー
Stevie J
Diddy
元ネタ・サンプリング
Diana Ross – I’m Coming Out (1980)
“Mo Money Mo Problems” 元ネタ・サンプリング
Diana Ross – I’m Coming Out (1980)
元ネタになったのは、ミシガン州デトロイト出身のシンガーDiana Rossの「I’m Coming Out」(1980)です。
この曲は、彼女のアルバム「diana」(1980)に収録し、アルバムは全米チャート2位を記録。
今作は、彼女のキャリアで最もセールスを伸ばした作品になり、世界各国のチャートを席巻した「Upside Down」も収録しています。
また「I’m Coming Out」は、彼女がバンドChicのコンサートを観にいき、バンドの創設者であるNile Rodgersに作曲を依頼したことから生まれました。
Nile Rodgersは、2021年にTikTokの動画で、この曲はもともとLGBTQコミュニティのために作られたもので、ニューヨークのクラブでDiana Rossに扮したドラッグクイーンを見たことがきっかけだったと明かしています。
「I'm Coming Out」という曲は、Diana Rossと仕事をしたときに、彼女の世界のことを書きたいと思って、彼女のアパートに行って2、3日インタビューをしたんだ。 ある夜「ギルド・グレープ」というクラブに行ったら、少なくとも6、7人のDiana Rossの物まね芸人がいたので、外に出てバーナードに電話してこう言ったんだ。 もしDiana Rossのために「I'm Coming Out」という曲を作ったら、James Brownの「Say It Loud - I'm Black and I'm Proud」と同じような力を持つことになるだろう」と言って、次の日にスタジオで打ち合わせをして、そこから曲を作っていったんだ。
Diana Rossはこの曲を発表した後、同性愛者が自分の同性愛を表現するときに使う曲だと指摘され、彼女は泣きながらスタジオに戻り、Nile Rodgersがなぜ自分のキャリアを台無しにしようとしたのか知りたいと要求したようです。
彼女は悲しみに暮れていましたが、その裏ではLGBTQコミュニティからはアンセムとして高く評価され、性的指向や性自認を自己開示することを表す「カミングアウト」という言葉は、20世紀初頭からLGBTQのサブカルチャーに存在していたようです。
さまざまなオーディエンスから支持された「I’m Coming Out」は、全米チャート5位を記録するヒッとなりました。
また1980年以降の彼女のパフォーマンスやライブのセットリストで最初に歌われる楽曲になり、ファンの間でも人気の高い曲になっています。
終わりに
The Notorious B.I.G.のアルバム「Life After Death」から「Hypnotize」が全米チャート1位に輝き、グラミー賞「最優秀ラップソロパフォーマンス賞」にノミネート。
また「Mo Money Mo Problems」もデュオ、グループによる「最優秀ラップソロパフォーマンス賞」にノミネートされるなど、この年大きく注目を浴びた作品になりました。
この機会に、ヒップホップの歴史に名を残す彼の曲を、元ネタと併せて聴いてみてはいかがでしょうか。
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