TLCの「Waterfalls」は、90年代R&Bを象徴する不朽のアンセムであり、甘美なメロディに乗せてドラッグやHIVといった過酷な現実を突きつけた衝撃作だ。米ビルボードで7週連続1位という金字塔を打ち立てた本作は、Paul McCartneyの歌詞引用や、James Brown、Bobbi Humphreyらの名曲を血肉とした緻密なサウンドによって、リリースから30年以上経った今も世界中で愛され続けている。
🎧 クイック概要:10秒でわかる基本データ
| 項目 | 内容 |
| アーティスト / 曲名 | TLC – Waterfalls |
| 収録アルバム | CrazySexyCool(1994) |
| サンプリング元 | Paul McCartney – Waterfalls James Brown – A Man Has to Go Back to the Cross Road Before He Finds Himself Bobbi Humphrey – Jasper Country Man |
| 最高位 | アメリカ Billboard Hot 100 1位(7週連続) |
🌊 「滝を追いかけるな」──歌詞に刻まれた生と死の警告

サビで繰り返される “Don’t go chasing waterfalls”(滝を追いかけないで) というフレーズ。これは単なる比喩ではなく、「身の丈に合わない夢」や「破滅へ向かう危険な誘惑」に対する、命がけの警鐘である。
歌詞は2つの悲劇的なストーリーで構成されている。
- ドラッグの闇: 手っ取り早く金を稼ごうと売買に手を染め、銃弾に倒れる少年の物語。
- HIVの恐怖: 無防備な性行為の結果、HIVに感染し、鏡に映る自分の衰弱した姿に怯える男性の物語。
1995年当時、ポップソングがここまで直接的に社会の病理を、それも「物語」として描き出したのは革命的な出来事であった。
🎤 「説教ではなく、気づきを」レフト・アイが遺した魂の言葉

メンバーの Lisa “Left Eye” Lopesは、生前のインタビューでこう語っている。
「この曲は人に説教するためじゃない。ただ、現実に気づいてほしかっただけ。私たちは女性に力を与えたかったけれど、同時に現実から目を逸らしてほしくなかった」
彼女が担当したラップパートは、リハビリ施設へ向かう車中で書き上げられたという逸話がある。2002年に彼女が事故で急逝したことで、この曲の「命の尊さ」を説くメッセージはいっそう重みを増すことになった。
🎛 職人技が光るサンプリングと「アトランタ・ソウル」の魔法
プロデュースを手がけたのは、アトランタの伝説的チーム Organized Noize。この曲の深みは、過去の名曲たちを絶妙なバランスで取り入れる手法によって生み出されている。
- Waterfalls (Paul McCartney): 同名の楽曲からサビの象徴的な歌詞を引用。
- A Man Has to Go Back to the Cross Road Before He Finds Himself (James Brown): 楽曲に力強いリズムの骨格を与えている。
- Jasper Country Man (Bobbi Humphrey): あの印象的なフルートの音色。このジャズ・ファンクのエッセンスが、楽曲に唯一無二の浮遊感を与えた。
さらに、バックボーカルには若き日の CeeLo Green も参加。その重厚なコーラスが、楽曲にゴスペルのような神聖な響きを与えている。
🎬 制作費1億円!VMAを制した伝説のMV

ミュージックビデオの革新性も語り草だ。当時としては異例の 100万ドル(約1億円) もの予算が投じられ、最新のCG技術で「水の中に溶けていくメンバー」を表現した。
このMVは、MTVビデオ・ミュージック・アワードで最高賞の「ビデオ・オブ・ザ・イヤー」を含む4冠を達成。社会派メッセージと圧倒的な映像美の融合は、90年代の音楽ビデオ文化を一段押し上げた。
📈 30年経っても色褪せない「現役」のレガシー
リリースから長い年月が経過した現在も、この曲の影響力は衰えていない。
- 安室奈美恵との共演: 2013年には、デビュー20周年を記念して安室奈美恵とTLCが共演したリメイク版が制作された。
- 2025年のサプライズ: セントルイスのバー「Broadway Oyster Bar」でこの曲をカバーしていた地元シンガー Tish Period のもとを、TLCのメンバーがサプライズ訪問。その動画はSNSで瞬く間に拡散され、今もなお愛される名曲であることを証明した。
📌 まとめ:90年代R&Bの最高峰
「Waterfalls」は、ポップでありながら社会的、優しくも残酷な一曲だ。甘いメロディの裏にある、決して古びない警鐘。だからこそ、この曲は時代を超えて人々の心に響き続ける。90年代R&Bを語る上で、これ以上の「完璧な一曲」は他にない。
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