近年の音楽シーンでは、Wizkid、Burna Boy、Davidoなどナイジェリア出身のアーティストが次々と世界の舞台で輝き、TemsやRemaといった次世代のアーティストもブレイクしています。
その中で、今回紹介するAyra Starr (アイラ・スター)もその1人です。彼女は2022年にリリースしたシングル「Rush」がナイジェリアチャートで1位を獲得し、さらにはグラミー賞にノミネートされるなど、世界中から注目を浴びました。
ここでは、Ayra Starrのこれまでのキャリアについて詳しく解説します。
音楽キャリアの始まり
2002年にベナン共和国で生まれたAyra Starrは、父親の仕事の関係で学生時代をナイジェリアとベナン共和国を行き来する生活を送っていました。彼女の母親は元シンガーであり、弟のダミはギタリスト兼作曲家で音楽一家で育ち、音楽への興味は母親と弟からの影響が大きかったようです。
間違いなく母親の影響だね。 彼女は私の1番の熱狂的なファンで、実際、私が何かをする前から、母はいつも私に音楽をするように勧めてくれた。 だから母は確かにその意味で影響を与えてくれたわ。 それと兄も同じく、彼は作詞家でギターも弾いてプロデュースもしているの。 彼は私にとってインスピレーションを与えてくれる存在で、一緒に音楽を始めてから、このプロジェクトのためにずっとやってきました。一緒に働くことが本当に楽しいの。
Ayra StarrはBeyoncéやRihanna、Miley Cyrusから影響を受けましたが、特にShakiraに強く影響を受け、中学生の時に合唱団に加入し、10歳の頃から弟と共に曲作りを始め、スターになる夢を抱いていました。
中学の時、10歳で合唱団に入って、兄と一緒に曲を作り始めたんだ。 弟のダミと一緒に曲を作ったね。彼は私の相棒みたいなものなんだ。 10歳くらいのときから一緒に曲を作っているの。 中学のとき、学校にバンドがあって、私は合唱部の代表だったんだ。 集会の代表もやったね。歌と合唱団の指導を担当していたんだ。 すべてを任されていたよ。 そしてある日、私は「歌うことが本当に得意なんだな」って思ったわ。
2018年、Ayra Starrはラゴスを拠点とするモデル事務所と契約し、2年間にわたりファッション誌や他のアーティストのミュージックビデオに出演しました。同時に、2019年頃からSNSなどにカバー曲を投稿し始め、これがMavin Recordsの創設者でベテランプロデューサーのDon Jazzyの目に留まり、レコーディング契約を結びました。
ヒット曲「Away」および「Bloody Samaritan」の成功
2021年、Ayra Starrは自身の名前を冠したデビューEP「Ayra Starr」をリリースしました。このEPは、R&Bやネオソウルの要素をAfropopのリズムと融合させ、10代の苦悩、恋愛、成長について歌っています。批評家からは好意的な評価を受け、ナイジェリアのiTunesチャートで1位を獲得し、多くの国のApple Musicチャートでも上位にランクインしました。
特に収録曲の「Away」は、ナイジェリアのチャートで4位を記録するなど、国内外で急速に注目を集めました。この突然の注目に戸惑いつつも、彼女はそれを精神的に予期していた部分もあったようです。
私は「一体何が起こっているの?」と思っていたわ。 何が起こっているのか理解できず、みんなに「圧倒されるな」って言われ続けたわ。 「圧倒されるな」ってどういう意味なんだろって。 文字通り、ゼロから100になるのが早かった。 予想もしていなかったわ。スピリチュアルな面では、それが起こり得ることはわかっていたの。 頭の片隅で、何かが起こることを想像していたんだ。 でも、物理的には、それが起こるとは思っていなかった。 私には「この子のようになりたい」と思える人がいなかったの。 このようなことが起こったのは、私が初めてなんだ。 だから、身体で実感することはなかった。ただ、そうなってほしいと願うだけだった。
Ayra Starr – Away
約半年後、彼女はデビューアルバム「19 & Dangerous」(2021)をリリースしました。このアルバムは、Z世代の少女が思春期から成人期に移行していく過程を描いたコンセプトアルバムで、自信、芸術的な情熱、感傷、共感性を探求しています。全11曲が収録され、恋愛に関するトピックや自己決定、自尊心など個人的なテーマが中心です。
アルバムではアフロポップ、R&B、トラップ、アルテなどの要素が主に取り入れられており、ネオソウル、ジャズ、EDMなどのジャンルの影響も受けています。歌詞は片思い、ロマンチックな別れ、裏切り、心の傷など恋愛に関するトピックや、自己決定、自尊心などの個人的なテーマに焦点を当てています。
Ayra Starrはアルバムのリードシングル「Bloody Samaritan」のために2本の映像を制作し、この映像の監督も自ら手掛け、彼女はカメラに向かって、次のように述べました。
私はいつもにMVの監督したかったの。 「Bloody Samaritan」は、私の他のMVとは違っていたわ。 私はいつもアーティストとしてとても過激で、自分を見せようとしていたの。 「Bloody Samaritan」では、私の個性とスタイルをできるだけリアルに映像化して、みんなに見てもらいたかったの。 私のキャラクターを見てもらいたかった。 このビデオは、限られた予算しかなかったから、それが私の創造力を刺激したの。 友達に電話して、みんな私のために来てくれ、ビデオ撮影に来て、私と一緒に楽しんでくれって言わなきゃいけなかった。 そうやって、私と友達だけで楽しんだんだ。 とても雑で、とても低予算で、ただティーンエイジャーの私を見せているの。
Ayra Starr – Bloody Samaritan
「Bloody Samaritan」はナイジェリアチャートで首位を獲得し、Ayra Starrはこのソロ曲で史上初めて女性アーティストとしてナンバーワンを達成し、アルバムのリリースから2ヶ月で、すべてのプラットフォームで3,000万以上のストリーミングを記録しました。
さらに、この曲は国境を越えてアメリカにも届き、2022年にはKelly Rowlandによるリミックスがリリースされるなど、Ayra Starrの名前が世界に広まったことが証明されました。
Ayra Starr, Kelly Rowland – Bloody Samaritan Remix
オバマ氏のプレイリストへの選出
2021年、彼女はペプシ・ナイジェリアのブランドアンバサダーに就任し、第8回African Muzik Magazine Awardsで「最優秀新人賞」にノミネートされ、ナイジェリア全土でその知名度を高めました。
そして、2022年10月、前述のアルバム「19 & Dangerous」のデラックスエディションがリリースされ、その中からシングルカットされた「Rush」はTikTokでバイラルヒットし、2023年には世界各国のチャートにランクインしました。ナイジェリアチャートでは首位を獲得し、YouTubeでは2億回以上の再生を記録しました。さらに、この曲はアメリカ元大統領のオバマ氏の年末恒例のプレイリストにも選出され、彼女の代表曲となりました。
Ayra Starr – Rush
2023年2月、彼女はシングル「Sability」を発表し、再びナイジェリアチャート1位を獲得しました。その後も、J. Cole率いるレーベルDreamvilleのコンピレーションアルバムに抜擢されるなど、活躍の場を広げています。さらに、Becky G、David Guetta、そしてLil Durkなど、世界中のアーティストとのコラボレーションも果たし、著しい活躍を見せています。
Ayra Starr – Sability
アフリカの若い黒人女性たちの代弁者としての使命感
彼女は、自身の音楽を通じて特にアフリカ全体の若い黒人女性たちの代弁者として位置づけ、自らの役割の重要性や影響力の大きさを認識し、それに責任を持つことを強く感じているようです。
私はアフリカの若い女の子たち、つまり若い黒人の女の子たちの代弁者なの。 それが、自分の音楽が正しいことをやっていると確信させてくれるひとつの理由よ。 今は自分の立場がわかっているからね。 以前なら「私は自分のことをやっているだけ』と答えていたわ。 でも、今は自分の立場を知っているから、怠けることはできない。 私がここにいるのには理由がある。 私を頼りにしてくれている人たちのために、正しいことをしなければならないわ。 プレッシャーを感じるけど、少しプレッシャーを感じるのはいいことだと思うの。 そのおかげで気を引き締めることができるからね。
彼女の音楽は、個人的な経験や世界観を通じて多くの人々に届いています。彼女が自らの存在を重く受け止めつつも、その影響力を肯定的な方向に使おうとする姿勢は、彼女のファンや支持者にも大きな力を与えています。これからも、Ayra Starrの音楽が多くの人々に勇気や希望を与え、彼女自身が成長し続ける姿を見守りたいですね。
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