幼い頃に両親が薬物中毒となり、弟との生活のために10代から犯罪に手を染め、90年代初頭には薬物関連の誘拐事件で10年の実刑判決を受けたMaino (メイノ)。
獄中でNotorious B.I.G、Jay-Z、Lil’ Kimを聴き「ヒップホップが俺を生かしてくれたような気がするんだ」と明かす彼は、出所後の2003年に自身のレーベルHustle Hard Entertainmentを立ち上げます。
数枚のミックステープをリリースし、Lil’ Kim、Papooseなどの作品でゲスト出演した後、2008年にAtlantic Recordsからデビューシングル「Hi Hater」(2008)をドロップ。
この曲は彼にとって初めてR&B/Hip Hopチャートにランクインし、2009年に発表したデビューアルバム「If Tomorrow Comes…」(2009)のリードシングルにもなりました。
しかし、このヒットにニューヨーク出身のラッパーJim Jonesは「腹が立った」と後のインタビューで告白しています。
ここでは、この曲の元ネタとJim Jonesとの関係について解説します。
Maino – Hi Hater (2008)
楽曲情報
Maino (メイノ)
出身地 :ニューヨーク
生年月日:1973年8月30日
ジャンル:Hip Hop
レーベル
Atlantic Records
プロデューサー
Mista Raja
元ネタ・サンプリング
Jimmy Spicer – Money (Dollar Bill Y’all) (1983)
“Hi Hater” 元ネタ・サンプリング
Jimmy Spicer – Money (Dollar Bill Y’all) (1983)
元ネタになったのは、ニューヨーク、ブルックリン出身のラッパーJimmy Spicer (ジミー・スパイサー)の「Money (Dollar Bill Y’all)」(1983)です。
彼はDef Jam Recordingsの設立者Russell Simmonsに見出され、1980年にSugarhill Gangの「Rapper’s Delight」(1979)をサンプリングしたシングル「Adventures of Super Rhyme (Rap)」をリリース。
この曲はその後、90年代のラップシーンで2PacやWarren Gなどにサンプリングされ、LL Cool Jは「”Adventures”がヒップホップキャリアのスタートだった」と明かすなど、多くのラッパーが影響を受けた1曲となりました。
Jimmy Spicer – Adventures of Super Rhyme (Rap) (1980)
1983年、Jimmy Spicerはシングル「Money (Dollar Bill Y’all)」を発表し、Wu-Tang Clanの「C.R.E.A.M.」(1993)やMontell Jordanなどのリリックにサンプリングされるなど、ヒップホップの基礎を築いた人物とも言われています。
その後、2018年に癌であることを公表し、治療費のためのクラウドファンディングを始めるも、2019年に肺癌と脳腫瘍のため、61歳の若さでこの世を去りました。
ジム・ジョーンズは「Hi Hater」を聞いて「腹が立った」ことを認める
Mainoの「Hi Hater」を聴いたラッパーのJim Jonesは「俺は怒っていた」と当時を振り返っています。
こんなこと言ったことなかったと思うんだけどね。 このチンピラ野郎が曲を手に入れたんだ、俺は動揺したぞって! 彼は本当に曲を手に入れ、今ラップゲームに参加している。 「Hi Hater」の前のお前は、俺にとって端っこのほうにいたんだけどな。 聴いたとき、俺は「ファ◯ク!」と思った。 ポスターを蹴り飛ばしたりして「Hi Hater」なんて、お前の口を殴ってやるって思ったよ。 俺の頭の中では、あれはヒット作になると思っていたんだ。 どうしようもないことだけど、あの時は本当に腹が立ったんだ。 彼がハイと言ったのは、俺が嫌われ者だったからさ。
この頃から、2人は長い間ビーフ関係でしたが、アトランタのショッピングモールで偶然鉢合わせ、ここでビーフを解消したようです。
また、2022年にはラップデュオLobby Boyzを結成してコラボアルバム「The Lobby Boyz」(2022)をリリースしており、今では親密な関係であることが伺えます。
この機会に、元ネタと併せて聴いてみてはいかがでしょうか。
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