Tory Lanez (トリー・レーンズ)の「Luv」は、ダンスホールとR&Bを融合させ彼を世界的なスターに押し上げた2016年の大ヒット曲だ。
サンプリング元は1999年のダンスホール・クラシック、Tanto Metro & Devonte (タント・メトロ・アンド・デヴォンテ)の「Everyone Falls in Love」である。
カリブの熱量とトロントのメロウな質感が交差するこの曲は、ビルボード19位を記録し、グラミー賞にもノミネートされた至高のナンバーだ。
🎧 クイック概要:10秒でわかる基本データ
| アーティスト / 曲名 | Tory Lanez – Luv |
| 収録アルバム | I Told You |
| サンプリング元 | Tanto Metro & Devonte – Everyone Falls in Love (1999) |
| 最高位 | 米国 Billboard Hot 100 最高 19位(22週チャート) |
🔥 90年代ダンスホールを現代R&Bへ「再翻訳」した魔法
「Luv」の心臓部には、1997年にリリースされたダンスホールの金字塔、Tanto Metro & Devonteの「Everyone Falls in Love」が脈打っている。あの「Everyone falls in love sometime〜♪」という誰もが一度は耳にしたことがあるキャッチーなフックを、Tory Lanezは単なる引用に留めず、現代的なR&Bの文脈で鮮やかに再構築した。
この楽曲は、カナダ・トロント出身のTory Lanezが2016年に放ったメジャーデビュー・アルバム『I Told You』からのセカンド・シングルだ。プロデュースには、ヒットメーカーのCashmere CatとBenny Blancoが名を連ねており、ダンスホール特有の軽快なリズムと、R&Bの官能的なメロディが完璧なバランスで共存している。
🎛 制作秘話:実は「軽い曲」として扱われていた?

世界的なヒットとなった「Luv」だが、意外にも制作当初、Tory Lanez自身はこの曲のポテンシャルを低く見積もっていた。
「スタジオで流れたビートを聴いた瞬間、子どもの頃に聴いてたダンスホールを思い出したんだ」
Tory Lanezはインタビューでこう振り返っている。カリブ系移民コミュニティが大きなトロントで育った彼にとって、ダンスホールは日常の風景だった。彼にとってはあまりに身近で「アルバムの中の軽い一曲」という認識だったが、レーベル側がその中毒性を確信し、シングル化を強くプッシュ。結果として、彼のキャリアを定義する代表曲となった。アーティスト本人の予想を裏切り、世間が熱狂した好例である。
🏙 ドレイクとの比較と「トロント・サウンド」の誇り

2016年当時、トロントの音楽シーンを牽引していたのは間違いなくDrake(ドレイク)だった。特に「One Dance」が世界を席巻していた時期でもあり、Toryには「Drakeのフォロワーではないか?」という厳しい視線も向けられた。
しかし、Toryはインタビューで毅然とこう言い放っている。
「俺は誰のコピーでもない。トロントの音を広げているだけだ」
「Luv」は、Drake的な洗練されたミニマリズムとは一線を画す、ストリートの熱量と荒削りな質感を備えている。この「トロント内でのライバル構図」は、当時のファンやメディアの間で大きな議論を呼び、結果として検索需要や注目度をさらに高める要因となった。
🏆 グラミー賞ノミネートと商業的成功

「Luv」はTory Lanezを「ミックステープ界の有望株」から「メインストリームのスター」へと完全に脱皮させた。
- 全米ビルボードHot 100: 最高19位を記録。
- 全米リズミックラジオ: 複数週にわたって1位を独走。
- グラミー賞: 第59回「最優秀R&B楽曲賞(Best R&B Song)」にノミネート。
初のグラミー候補となった際、彼は「このノミネートは、亡くなった俺の母親を誇らせるためのものだ」と語っている。11歳で母を亡くし、ストリート出身で時に問題児扱いもされてきた彼にとって、この公式な評価は極めて大きな意味を持っていた。
🎬 ミュージック・ビデオと豪華リミックスの展開

視覚的にも「Luv」は成功を収めている。Tory自身とShane Drakeが共同監督を務めたミュージック・ビデオでは、夏のハイウェイを舞台に、恋人と過ごす「軽やかさと熱量」を表現。曲の持つアーバンで開放的なムードを決定づけた。
さらに、2016年10月にはジャマイカのダンスホール界の巨匠、Sean Paul(ショーン・ポール)をフィーチャーした公式リミックスもリリース。本職のダンスホール・レジェンドを招き入れたことで、この曲が持つトロピカルな魅力は完成形へと到達したのである。
✨ まとめ:Tory Lanezのキャリアを定義した一曲
「Luv」は、既存のダンスホールを新しい形のポップスへ昇華させた点が批評家から高く評価される一方で、一部からは「サンプリングへの依存」を指摘する声もあった。しかし、彼の圧倒的なメロディセンスが、ジャンルの壁を越えて多くの人々に届いた事実は揺るがない。
のちに彼は様々なキャリアの荒波を経験することになるが、「Luv」がトロントの空気を世界へ運び、彼をトップアーティストの座に押し上げたという功績は、今後も色褪せることはないだろう。
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