Daft Punk「One More Time」元ネタは?サンプリング曲・制作秘話・松本零士MVまで徹底解説

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Daft Punk(ダフト・パンク)の「One More Time」は、2000年にリリースされたダンスミュージック史上最高傑作のひとつだ。フランス人デュオが1979年のディスコ曲「More Spell on You」をサンプリングし、ニュージャージーのハウス・シンガーRomanthonyのボーカルをロボット声に加工した「錬金術」のような一曲で、Mixmagの読者投票では「史上最高のダンス・レコード」に選ばれ続けている。

しかしこの曲の裏には、誰も知らない制作秘話と、サンプリングされた元ネタの作者が20年間ロイヤリティを受け取れなかったという音楽産業の闇が隠されている。

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🎧 クイック概要:10秒でわかる基本データ

アーティスト / 曲名Daft Punk / One More Time
収録アルバムDiscovery(2001年)
主なサンプリング元Eddie Johns「More Spell on You」(1979年)
最高位フランス・シングルチャート1位 / 全英2位
全米Billboard Hot 100・61位
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サンプリング元ネタ:あのキラキラしたホーンはどこから来たのか

「One More Time」を聴けば誰もが耳に残るあのキラキラしたホーンのフック。あれはダフト・パンクがゼロから作ったものではない。リベリア生まれのミュージシャン、Eddie Johns(エディ・ジョンズ)が1979年にパリで録音した「More Spell on You」から切り出したサンプルだ。

ただし使い方が天才的で、ダフト・パンクはホーンフレーズをいくつかのパーツに分解し、ピッチを変えて順番を入れ替えることで、元ネタとはまったく別のメロディーとして再構築した。原曲を知っている人が聴けばすぐ気づく核心的な使い方でありながら、ほとんどのリスナーには長らく「謎の音」として認識されていた。WhoSampledのコミュニティでは「史上最もクリエイティブなサンプル・フリップのひとつ」と称されているほどだ。

エディ・ジョンズは当時28歳。「君に呪いをかけてやる、それ以外に君を引き留める方法がないから」という切実なラブソングとして「More Spell on You」を書いたが、リリース当時はほぼ無視され、音楽キャリアは実を結ばなかった。

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サンプリング元の作者に、20年間ロイヤリティが届かなかった

ここからが、この曲の裏に隠されたもっとも衝撃的な話だ。

2021年5月、ロサンゼルス・タイムズが調査記事を掲載した。「One More Time」のヒットを根底で支えたエディ・ジョンズが、70歳になった今も一銭のロイヤリティも受け取っていないという事実が明らかになったのだ。

エディ・ジョンズは2011年に脳卒中を患い、働けなくなった。その後約10年間、ホームレス状態を経験し、支援住宅施設を転々とする生活を送っていた。「One More Time」が世界中で何百万回も流れ続けている間も、彼の元には何も届かなかった。

彼がこの事実を知ったのも、偶然だった。支援施設のケアマネージャーと一緒にコンピューターを使っていたとき、「One More Time」の制作プロセスを解説するYouTube動画を見つけたのだ。エディ・ジョンズ自身はL.A.タイムズにこう語っている。

「娘がダフト・パンクのことを教えてくれたことがあったけど、その時はもう音楽から離れていたから気にしなかった。でもパサデナの図書館で自分のアルバムの曲を聴いていたら、エンジニアたちが『More Spell on You』をどうやって変形させたか解説している動画を見つけた」

ダフト・パンク側は法的に問題なかった。代理人は「Daft Life Ltd.はサンプル使用料を年2回、『More Spell on You』の権利保有者に支払っている」と確認している。問題はその先にあった。「More Spell on You」の権利は1995年にフランスの出版社GM Musipro(GMミュジプロ)が取得しており、同社がエディへの支払い義務を負っていたのだ。GM Musipro創設者のジョルジュ・マリーは「1995年以降、エディとは連絡が取れなかった。調査したが居場所がわからなかった」と述べた。

そしてエディがL.A.タイムズに残した言葉が、すべてを物語っている。

「せめて、クレジットに名前を入れてほしい。娘に何かを残してあげたい」

Discoveryのライナーノーツに、エディ・ジョンズの名前はない。これは音楽産業が抱える構造的問題を象徴するエピソードとして、今も語り継がれている。

あのロボット声の正体:Romanthonyとボコーダーの革命

「One More Time」のボーカルを担当したのは、ニュージャージー出身のハウス・プロデューサー兼シンガー、Anthony Wayne Moore、通称Romanthony(ロマンソニー)だ。

ダフト・パンクはそのボーカルにAuto-Tuneをはじめとするエフェクト処理を徹底的に施した。当時、批評家の一部はこの「ロボット声」を「過剰だ」と批判したが、バンガルターはRemix誌のインタビューでこう切り返している。

「Auto-Tuneに文句を言う人が多いけど、70年代後半にフランスのミュージシャンたちがシンセサイザーを禁止しようとしたことを思い出す。彼らが見えていなかったのは、新しいツールを、それまでの楽器の代替としてではなく、全く新しい方法で使えるということだ。ボコーダーを批判するのは、60年代のバンドに『なんでエレキギターを使うんだ?』と言うようなもの」

Romanthony本人もこのエフェクト処理を気に入っていたという。バンガルターは「彼はいつも革新を追い求めていて、自分の声がこんなふうに楽器として扱われたことは一度もなかった、と言っていた」と振り返る。

アルバムバージョンには約2分間のブレイクダウンがあり、Romanthonyが「Celebrate… don’t wait too late… you can’t stop(祝おう…手遅れになる前に…止まれない)」と呟く場面がある。あそこがこの曲のもうひとつの核心だ。

なお、Romanthonyこと Anthony Wayne Moore は1967年9月5日生まれで、2013年5月7日に45歳で逝去(腎臓病の合併症による)。2023年の没後10周年には、ダフト・パンク、Disclosure、The Blessed Madonnaらがオンラインコンサートでトリビュートを捧げた。

完成から3年、棚の上で眠っていた名曲

「One More Time」には、あまり知られていない制作エピソードがある。この曲は、Discoveryアルバムの制作が本格化する前の1998年にはすでに完成していた。バンガルターは後のインタビューで「ミックスを終えて完成した状態で、ずっと棚の上に置いてあった」と明かしており、実際には約2年半の間リリースを待ち続けたことになる。その理由のひとつは当時最先端だったAuto-Tuneという新技術を使っており、「時代に耐えられる曲かどうか確かめたかった」というものだった。

制作の場はパリにあるバンガルターの自宅スタジオ「Daft House」。Akai MPCやE-mu SP-1200といったサンプラー、Oberheim DMXやLinnDrumなどのドラムマシン、さらにはFender RhodesやWurlitzer電気ピアノを使い、「ディスコとR&Bに触発されたハウス」サウンドを追求した。

2人はアルバム制作の初期段階で「Too Long」を完成させた後、「あと14曲、同じようなハウストラックは作りたくない」と感じ、ジャンルの幅を広げる決断をした。その探求の起点として、すでに完成していた「One More Time」がアルバムの顔として選ばれたのだ。ある意味、この1曲がDiscovery全体の「基準点」として機能し、残りの曲が生み出された。

チャート成績:母国フランスで唯一の1位シングル

「One More Time」は2000年11月のリリース後、フランスのシングルチャートで1位を獲得した。これはダフト・パンクの名義では唯一のフランス1位シングルという記念碑的な記録だ(2016年のThe Weeknd「I Feel It Coming」がフランスでも1位を獲得しているが、こちらはThe Weeknd名義のフィーチャリング扱い)。全英チャートでは2位、全米Billboard Hot 100では61位にチャートインした。

アメリカでのチャート成績が伸び悩んだのは、Hot 100がラジオ重視のシステムだったためで、ダンス系楽曲には構造的に不利だった。それでも2013年6月にデジタル販売が100万枚を突破し、ダフト・パンク初のミリオンセラー・デジタルシングルとなった。

収録アルバム「Discovery」も全米Billboard 200で23位を記録し、フランスで3倍プラチナ、英国で2倍プラチナを獲得。Apple Musicは2024年に「Discovery」を史上最高のアルバム・ランキング23位に選出している。

リリース当初は賛否両論——でも時間が証明した

「One More Time」は2000年のリリース当時、批評家から満場一致の歓迎を受けたわけではなかった。ボコーダー処理されたボーカルを「過剰」と批判するレビューも多く、あるメディアは同シングルのEPに収録された別曲と比較して否定的な評価を下した。

しかしダフト・パンクはこの反応を意に介さなかった。バンガルターは「批評家の反応を昔ほど気にしなくなった。好きな人もいれば嫌いな人もいる、それは健全なことだ。最悪なのは人を動かせないこと。愛憎は深くて強烈だから興味深い」と語っている。

時間が証明したのは、批評家ではなくリスナーの直感だった。The Village Voiceの年間批評家投票「Pazz & Jop」では年間ベストソング11位に選出。Pitchforkの「2000年代トップ500ソング」では5位にランクイン。Rolling Stoneの「500 Greatest Songs of All Time」では307位、「2000年代ベスト100ソング」では33位に収録。そしてMixmagの読者投票で「史上最高のダンス・レコード」に輝いた。

MVは松本零士 × 東映アニメーションとの夢のコラボだった

「One More Time」のミュージックビデオは、単なるMVをはるかに超えた壮大なプロジェクトの「第1章」だった。2003年公開のアニメ映画「Interstella 5555: The 5tory of the 5ecret 5tar 5ystem」の冒頭を飾るのが、「One More Time」に合わせて描かれた青い肌のエイリアン・バンドがコンサートを行う場面だ。

ダフト・パンクが子供の頃から憧れていたのが、「宇宙海賊キャプテン・ハーロック」「銀河鉄道999」などの生みの親、松本零士だった。バンガルターとオメン=クリストは後のインタビューでキャプテン・ハーロックを「幼少期のヒーロー」と語っており、前マネージャーのペドロ・ウィンターは「松本零士はダフト・パンクのウィッシュリストのナンバー1だった」と振り返る。

2人は「Discovery」の制作中にアニメ映画のコンセプトをコラボレーターのセドリック・エルベとともに温め始め、2000年夏に東京を訪問。東映アニメーションと松本零士にプロジェクトを持ち込み、松本がビジュアル・スーパーバイザーとして参加することが決まった。制作費は約400万ドルといわれ、Virgin Records(当時のEMIグループ)のサポートを得てプロジェクトが動き出した。

映画は一切のセリフがなく、「Discovery」全14曲がそのままサウンドトラックとして使われる。エイリアン・バンドが邪悪な音楽プロデューサーに誘拐・搾取される物語は、ダフト・パンク自身の「音楽産業への不信感」を寓話として描いたものだとペドロは解説している。制作はToei Animationが2000年10月に開始し2003年4月に完了。ダフト・パンクはほぼ毎月のように東京に通い、絵コンテの監修を行った。

カンヌ映画祭でプレミア上映され、その後フランス国内約30の劇場での限定公開も行われた。そして2024年12月12日には4Kリマスター版が世界40カ国1,500以上の映画館で一夜限りの特別上映が行われ、改めてその芸術的価値が再評価された。

なお劇中にはこんな隠しメッセージもある。モニターに映し出されるサッカーのスコアが「フランス2-日本1」——ダフト・パンクがフランス人2人、松本零士が日本人1人、という人数比を表しているとされている。

後世への影響:Drake、加藤ミリヤ、ゲーム、Britain’s Got Talent

「One More Time」はリリースから四半世紀を経た今も、世界中のアーティストに引用・サンプリングされ続けている。

日本では加藤ミリヤが2016年のアルバム「Liberty」収録曲「Future Lover(未来恋人)」でサンプリングし、シングルチャート30位を記録。

国際的に最も注目を集めたのは2022年のDrake & 21 Savage「Circo Loco」(アルバム「Her Loss」収録)だが、Pitchforkのポール・A・トンプソンは「おろかなほどダフト・パンクのフリップだ」と酷評し、Paste誌のジョシュ・スベッツは「この曲の最大の罪はダフト・パンクのクラシックを台無しにしていること」と断じた。

Drake & 21 Savage「Circo Loco」の記事はこちら。

ゲームとの親和性も高く、Wii用「Boogie」やPlayStation 3の「SingStar」に収録。2023年には英国の「Britain’s Got Talent」シーズン16優勝者のViggo Vennがオーディションでこの曲を使用し、再び世界の注目を集めた。

ダフト・パンクは2021年2月22日に解散を発表したが、その後も2月22日は「Daft Punk Day」として世界中のファンが祝い続けている。解散翌年の2022年2月22日(2/22/22)にはInterstella 5555をTwitchでフルストリーミング配信し、数字へのこだわりでも知られるダフト・パンクらしい粋な演出として話題になった。なお2024年12月12日の映画館イベントも「12/12/24」という日付への遊び心が込められていたとペドロ・ウィンターは語っている。

まとめ:「もう一度」聴きたくなる理由

「One More Time」は、無名のディスコ曲のホーン・フレーズ、ニュージャージーのハウス・シンガーのボーカル、フランスのロボット・デュオの天才的な音楽センス、そして子供の頃から憧れ続けた日本のアニメ作家の映像——これらすべてが奇跡的に交差して生まれた結晶だ。

約2年半、棚で眠り続け、批評家に賛否を巻き起こし、一人の老ミュージシャンの悲劇を胸に秘めながら、それでもこの曲は「史上最高のダンス・レコード」として君臨し続けている。「Celebrate! Don’t wait too late!」——その言葉はいつの時代にも、真実であり続ける。

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