T.O.K.「I Believe」解説|Blessid Union of Soulsをレゲエ/ダンスホールで再解釈した名カバー

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T.O.K.のメジャー・デビュー作にあたるアルバム『My Crew, My Dawgs』(2001年)は、彼らを一躍、国際的なスターダムに押し上げた重要作であることは間違いない。このアルバムの多様なサウンド群の中で、ひときわ異彩を放っていたのが「I Believe」だ。

この曲は、単なるオリジナル曲ではない。アメリカのポップ・ロックバンド、Blessid Union of Soulsが1995年に全米シングルチャートで8位を記録した大ヒット曲を、レゲエ/ダンスホールの文脈で見事に再解釈したカバー作品なのである。

T.O.K. – I Believe (2001)

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原曲が持つ普遍的な「希望」のメッセージ

まず、原曲「I Believe」がどのような楽曲だったかを振り返る必要がある。この曲は、Blessid Union of Soulsのデビュー作『Home』(1995年)に収録されていた、彼らの代表曲だ。ピアノとストリングスを軸にした、優しくも力強いポップ・バラードとして、当時のアメリカで大成功を収めた。(アルバム自体もゴールド認定を受けている)

Blessid Union of Souls – I Believe (1995)

作詞作曲はEliot SloanやJeff Penceらが手がけており、T.O.K.版にもそのクレジットはしっかりと記されている。彼らが訴えたかったのは「愛が答えである(love is the answer)」という普遍的なメッセージだ。暴力や経済格差といった社会的な問題提起を含みながらも、希望を失わない姿勢を示したこのメッセージ性は、T.O.K.版でも完全に保持されている。

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ダンスホールとハーモニーの融合がもたらした「新たな温度」

T.O.K.がこのピアノ・バラードを、いかに大胆にダンスホールの文脈で料理したかを見てみよう。原曲の情緒豊かなサウンドは影を潜め、代わりにレゲエ特有のオフビートなリズムと、デジタル・ダンスホールの要素が全面に押し出されている。プロデューサー陣(Chris/Joel Chinら)は、T.O.K.の最大の武器である美しいコーラスワークを最大限に活かしつつ、ダンスホール特有の掛け合い(ハーモニーとデージャ)やブリッジの処理を導入した。

この大胆なアレンジの妙により、原曲の「愛と希望」のポジティブなトーンはそのままに、楽曲には全く「新たな温度」が付与されたのだ。T.O.K.の歌唱は、原曲の優しく語りかけるトーンを踏襲しつつも、ダンスホールならではのリズム感と表現力が加わったため、クラブやラジオといった様々なシーンで違和感なく響くサウンドとなっている。歌詞の要旨やフレーズは原曲同様に力強く、人々の心に響くものだ。

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T.O.K.の多面性を証明した名盤の一曲

「I Believe」は、T.O.K.というグループの懐の深さを証明した一曲であることに疑いの余地はない。『My Crew, My Dawgs』には、「Chi-Chi Man」や「Eagles Cry」といった、ハードなダンスホールからメッセージ性の強い楽曲まで、多様な側面を持つ作品が収録されていた。

その中で「I Believe」は、彼らが単なるハードコアなダンスホール・アーティストではないこと、ポップスの名曲をメッセージ性を損なうことなくレゲエに昇華できる高い表現力を持ったグループであることを世に示した好例だ。このアルバムが日本を含む国際市場で好評を博し、T.O.K.の多面的な魅力を伝えるターニングポイントとなった事実は、この「I Believe」という挑戦的なカバー作品の成功が大きく貢献していると言えるだろう。

T.O.K.の「I Believe」は、1990年代ミッド・ポップスを2000年代のレゲエ/ダンスホールという文脈で再解釈した、時代を繋ぐ傑作だ。彼らの幅広い表現力を知る上で、この曲を『My Crew, My Dawgs』の中で聴き直す意義は非常に大きい。

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