イギリス、ロンドン出身のシンガーDua Lipa (デュア・リパ)は、2020年に発表した2枚目のアルバム「Future Nostalgia」が、リリースと同時に音楽評論家から高く評価され、プロダクションや音楽性の一貫性、そしてDua Lipaのスタイルの進化を称賛され、世界15ヵ国のチャートで首位を獲得する大成功を収めました。
このアルバムからは6曲がシングルとしてリリースされ、そのうち4曲がUKシングルチャートのトップ10入りを果たし、リードシングルである「Don’t Start Now」は全米チャートとUKチャートで2位を記録し、現在までにSpotifyでは23億回以上のストリーミング再生数を記録しています。
さらに、このアルバムは現在、Spotifyで100億回以上のストリーミング再生回数を持ち、歴代6位の記録を保持しています。
今回は、Dua Lipaのこのアルバムからの3枚目のシングル「Break My Heart」の制作背景と元ネタについて詳しく説明します。
Dua Lipa – Break My Heart (2020)
“Break My Heart” 楽曲情報
リリース日
2020年3月25日
レーベル
Warner Music Group
プロデューサー
The Monsters & Strangerz
watt
元ネタ・サンプリング
INXS – Need You Tonight (1987)
“Break My Heart” 元ネタ・サンプリング情報
INXS – Need You Tonight (1987)
元ネタになったのは、オーストラリアで結成されたファンクロックバンドINXS (インエクセス)の「Need You Tonight」(1987)です。
この曲は、彼らの6枚目のアルバム「Kick」(1987)に収録されており、アルバムはオーストラリアチャート1位を獲得し、全米チャートでは合計79週間にわたってランクインし、22週連続でトップ10入りを果たしました。さらに、アメリカでは発売から2ヵ月も経たないうちに100万枚を売り上げ、1988年のMTVビデオ・ミュージック・アワードで、INXSは最多ノミネートと最多受賞のアーティストとなり、9つのノミネートのうち5つを獲得しました。
INXSの自伝によると、アルバムは発売からわずか2年で全世界で1,000万枚近いセールスを記録し、その成功もあり、ローリング・ストーン誌の「80年代の最も偉大なアルバム100」で11位に選ばれました。
「Need You Tonight」は、この大ヒットアルバムから最初のリードシングルとしてリリースされ、INXSののキャリアで唯一の全米チャート1位を獲得した曲として知られています。
Dua Lipaは曲が完成するまで気づかなかったと明かす
Dua Lipaの「Break My Heart」は、南フロリダ出身のプロデューサーチームThe Monsters & Strangerzと、ニューヨーク出身のプロデューサーwattによってプロデュースされました。The Monsters & StrangerzはZeddやMaroon 5のプロデュースで成功を収めており、wattはDJ SnakeやSelena Gomezなどのアーティストを手掛けたことで名を馳せたプロデューサーです。
曲は一晩で書かれ、プロデュースまで仕上げられましたが、曲を聴いている間に、Dua Lipaと彼女のソングライターたちは、オーストラリアのバンドINXSの「Need You Tonight」(1987)との類似性に気付きました。法的な問題を避けるため、INXSのメンバーであるAndrew FarrissとMichael Hutchenceが作曲者としてクレジットされ、INXSに出版クレジットが与えられました。
Dua Lipaは、その当時の状況について次のように振り返っています。
スタジオにいたとき、私たちは2曲が結びつかなかったの。 私たちはただ『そうそう、これ最高!』って感じだったわ。 私たちはとてもハイになっていたし、曲作りしていたんだけど、聴き返してみたら『ちょっと待って、みんな...』って感じになったの。 INXSのメンバーや出版を担当している人たちはとても親切で、彼らはその曲がとても気に入ってくれたから、トラックに彼らに出版のクレジット、作詞クレジットを与えたの。 公平なことだからね。 これにより、ノスタルジアがさらに前面に出てきたと言えるでしょう。 また、それは私たちにとってその部分を裏付けた瞬間だったわ。
このエピソードからわかるように、音楽制作は時に偶然とインスピレーションの結果が交差し、新たなクリエイションを生み出します。そして、公平さと尊重がクリエイティブなプロセスにおいて重要であることを示す素晴らしい例と言えるでしょう。
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