2005年にBlack Eyed Peas (ブラック・アイド・ピーズ)が発表したシングル「My Humps」は、全米チャート3位を記録し、グラミー賞で「Best Pop Performance by a Duo or Group with Vocals」を受賞、世界15カ国のチャートでトップ10入りを果たすなど、世界中のヒットソングとなりました。
しかし、その裏には酷評を浴びたことでも知られており、ここではこの曲の解説と元ネタについて紹介します。
Black Eyed Peas – My Humps (2005)
“My Humps” 楽曲情報
レーベル
A&M Records
Will.i.am Music Group
Interscope Records
プロデューサー
will.i.am
元ネタ・サンプリング
Asha Bhosle – Kisi Ki Jaan Lete Hain (1968)
Sexual Harrassment – I Need a Freak (1982)
Tone Loc – Wild Thing (1988)
Egyptian Lover – And My Beat Goes Boom (1984)
“My Humps” 元ネタ・サンプリング①
Asha Bhosle – Kisi Ki Jaan Lete Hain (1968)
元ネタになったのは、インド出身のシンガーAsha Bhosle (アシャ・ボスレ)の「Kisi Ki Jaan Lete Hain」(1968)です。
Black Eyed Peasは以前にも「Don’t Phunk With My Heart」で彼女の楽曲をサンプリングしており、2曲とも彼らの4枚目のアルバム「Monkey Business」に収録されています。
「Don’t Phunk With My Heart」の記事はこちら。
この曲は、1968年に公開されたインド映画「Jhuk Gaya Aasman」のサントラに収録されています。
“My Humps” 元ネタ・サンプリング②
Sexual Harrassment – I Need a Freak (1982)
元ネタになったのは、エレクトロニックグループSexual Harrassmentの「I Need a Freak」(1982)です。
彼らは、DJ兼プロデューサーのLynn Tolliverを中心としたアメリカのプロジェクトで、ボーカリストやミュージシャンを変えながら、作詞、作曲を担当しています。
この曲は1982年にシングルとしてリリースされ、翌年にこの曲を収録した同タイトルのアルバムがリリースされています。
また「My Humps」でBlack Eyed Peasがサンプリングした際、Lynn Tolliverは共同作曲者であるJames McCantsが同グループに無断で曲を渡したと主張し、訴訟問題に発展しました。
その結果、Lynn Tolliverは出版社とプロデューサーが著作権侵害で、120万ドルで勝訴しています。
“My Humps” 元ネタ・サンプリング③
Tone Loc – Wild Thing (1988)
元ネタになったのは、カリフォルニア州ロサンゼルス出身のラッパーTone Loc (トーン・ロック)の「Wild Thing」(1988)です。
この曲は、彼のデビューアルバム「Lōc-ed After Dark」(1989)に収録され、アルバムは全米チャートで1位を獲得。
「Wild Thing」は、全米チャート2位を記録し、彼のブレイクに大きく貢献しましたが、この曲はVan Halenの「Jamie’s Cryin’」(1978)をクレジットなしでサンプリングしており、これにより訴訟に発展することになりました。
当時のVan Halenのマネジメントは、Tone Locにこの曲をサンプリングさせるための代金として、一律の料金(5,000ドル)を要求していたようです。
オリジナルメンバーに相談することなくサンプリングが決定され、蓋を開けてみたら「Wild Thing」が大ヒットし、その後の民事訴訟は示談で和解となり、Van Halenは和解金として18万ドルを受け取ったようです。
Van Halen – Jamie’s Cryin’ (1978)
“My Humps” 元ネタ・サンプリング④
Egyptian Lover – And My Beat Goes Boom (1984)
元ネタになったのは、カリフォルニア州ロサンゼルス出身DJ兼プロデューサーのEgyptian Lover (エジプシャン・ラヴァー)の「And My Beat Goes Boom」(1984)です。
彼は、ロサンゼルスを拠点に活動していたヒップホップグループUncle Jamm’s ArmyのDJとしてキャリアをスタートさせ、ラッパーIce-Tを含む西海岸の初期のヒップホップのサウンドを定義することに貢献することになります。
この曲は、そんな彼のデビューアルバム「On the Nile」(1985)に収録されていますが、彼は曲作りに関して自分が「良い作曲家やプロデューサーなどではない」ことを知っており、アルバムの音楽をDJをするようにライブ感覚で作ったと説明しています。
ただ、DJをしながら「このレコードをカットインして、次はこのレコードをカットインして」と、レコードを作ったんだ。 だから、レコードには何のアレンジもなかった。 当時はそんなレコードを作る人はいなかったから、ちょっと珍しかったんだ。 だから、この作品にはヴァース・コーラス・ブレイクダウンがなくて、そこらじゅうにあるんだけど、当時のDJはこうやってレコードをカットしていたから、いいパーティ・レコードになったんだよ。
おわりに
Black Eyed Peasの「My Humps」はグラミー賞を受賞したものの、タイトルと歌詞は女性が胸やお尻を使って目標を達成することが中心になっているため、評論家の間で物議を醸しました。
ローリングストーン誌の読者はこの曲を「最も迷惑な20曲」で1位、Pitchforkの「2005年のワースト15」で3位に選出されるなど、ヒットの裏側で批評家から酷評されたようです。
この機会に、元ネタと併せて聴いてみてはいかがでしょうか。
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