Shakira「Waka Waka」はなぜ世界を踊らせたのか?2010年W杯公式ソングに刻まれたアフリカの記憶

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2010年、南アフリカ。史上初めてアフリカ大陸で開催されたFIFAワールドカップの熱狂を語る上で、切っても切り離せない「音」がある。Shakira (シャキーラ)と南アフリカのバンド、Freshlygroundが放った「Waka Waka (This Time for Africa)」だ。

この曲は単なる大会の公式ソングという枠を超え、国境や文化の壁を打ち破る文化現象となった。今なお語り継がれるこのアンセムが、どのようにして生まれ、なぜこれほどまでに世界を揺らしたのか。その軌跡を辿ってみたい。

Shakira feat. Freshlyground – Waka Waka (This Time for Africa) (2010)

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響き渡るカメルーンの記憶:楽曲のルーツ

「Waka Waka」の最大の特徴であり、魂とも言えるのが、あの耳に残るコーラスだ。

「Zamina mina, eh eh / Waka waka, eh eh」

このフレーズは、1986年にカメルーンのグループ、Golden Sounds (ゴールデン サウンズ)が発表した「Zamina Mina (Zangaléwa)」から引用されている。もともとはカメルーン軍の兵士たちが士気を高めるために歌っていた行進歌であり、アフリカ各地で親しまれていたものだ。

Golden Sounds – Zamina Mina (Zangaléwa) (1986)

シャキーラはこのアフリカの集団的記憶とも言えるサウンドに深く共鳴し、自身のポップセンスと融合させた。楽曲にはアフロ・コロンビア音楽の色彩をベースに、ソカやアフリカ南部のギターサウンドなど、多様な音楽的要素が織り交ぜられている。この重層的な響きこそが、南アフリカ大会が掲げた「多文化性」と「ほとばしるエネルギー」の象徴となったのである。

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議論と葛藤を越えて:真のアフリカを求めて

しかし、その誕生が手放しの称賛だけで迎えられたわけではない。リリースの裏側には、大きな議論も存在した。

一つは権利とクレジットの問題だ。当初、原曲である「Zangaléwa」へのクレジットが不十分であったことから批判が巻き起こった。後に権利関係の調整が行われ解決を見たが、これは文化の「借用」と「敬意」のあり方を問う出来事でもあった。

もう一つは、「なぜアフリカ開催の大会で、非アフリカ出身のスターがメインを務めるのか」という、地元アフリカ内部からの根源的な疑問だ。

シャキーラはこの声に対し、単にサンプリングを行うだけでなく、南アフリカのバンド、Freshlygroundをパートナーに迎えることで一つの回答を示した。特にボーカルのZolani Maholaの歌声は、楽曲に現場のリアリティと本物の息吹を吹き込んだ。シャキーラ自身も「彼らがこの曲に本物の命を与えてくれた」と語っている。こうした対話を経て、「Waka Waka」は単なる流行歌から、文化的な交流の結晶へと昇華していったのだ。

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数字が証明する社会現象と「数億人の目撃」

ひとたび世界に放たれると、その勢いは止まらなかった。スペイン、フランス、ドイツ、イタリアといった主要国でチャート1位を独占。デジタル時代のワールドカップソングとして、史上最も成功したワールドカップ公式ソングの一つとなった。

圧巻だったのは、世界中が熱視線を送ったセレモニーだ。大会関連イベントやクロージングセレモニーにおいて、シャキーラたちは圧巻のパフォーマンスを披露。特に閉会式でのステージは、世界中で数億人規模の人々が視聴したとされ、音楽史に刻まれる巨大なイベントとなった。

YouTubeでのミュージックビデオ再生数は数十億回を数え、SNSや街頭ではファンが真似をする「Waka Wakaダンス」やフラッシュモブが世界中で発生した。スポーツと音楽が手を取り合い、人々を物理的にも心理的にも「踊らせた」瞬間だったと言えるだろう。

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歌詞に秘められた「不屈の精神」

この曲が、単に陽気なだけのダンスナンバーで終わらなかった理由は、その歌詞にもある。

"You’re on the frontline, everyone’s watching"
"This is your moment, you can go your way"

ここで歌われているのは、勝利の栄光だけではない。「前線に立ち、衆目にさらされる恐怖」や「重圧」と向き合う者へのエールだ。シャキーラは、この曲を単なる勝利の歌ではなく、「何度でも立ち上がり続ける不屈の精神」を称える歌として位置づけた。

「This time for Africa(今こそアフリカのために)」という力強いリフレインは、スタジアムを越え、歴史の中で虐げられてきた者や、困難に立ち向かうすべての人々の胸に響いた。

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結論:永遠に封じ込められた「その時」

「Waka Waka (This Time for Africa)」は、音楽とスポーツが奇跡的な共鳴を起こした稀有な例だ。アフリカのリズムと歴史をポップミュージックの文脈で世界へ届け、アフリカという大陸を世界の中心へと押し上げた。

それはアフリカを一方的に消費するものではなく、世界中の人々がアフリカと共に踊り、団結した瞬間を記録したアンセムであった。2010年、確かに「その時」はアフリカのものだった。そしてこの曲を聴くたびに、私たちはあの夏の熱狂と、音楽が持つ「人をつなぐ力」を、何度でも鮮烈に思い出すのである。

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