2Pac feat. Digital Underground「I Get Around」徹底解説|サンプリング元Zapp「Computer Love」・制作秘話・ゴーストライティング・チャート成績まとめ

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2Pac feat. Digital Undergroundの「I Get Around」は、1993年に生まれた2Pac (トゥーパック)初のビルボードトップ20ヒットだ。サンプリング元はファンクの帝王ZappによるR&Bの名曲「Computer Love」。見た目はパーティー・アンセムでも、その裏側には「6ヶ月間誰にも使いこなせなかったビート」「2Pac本人がShock Gのバースをゴーストライトした」という仰天エピソード、そして仲間との確執まで、一曲に収まりきれないほどのドラマが詰まっている。

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🎧 クイック概要:10秒でわかる基本データ

項目内容
アーティスト / 曲名2Pac feat. Digital Underground / I Get Around
収録アルバムStrictly 4 My N.I.G.G.A.Z… (1993)
主なサンプリング元Zapp「Computer Love」(1985)
Gang Starr「Step in the Arena」(1991)
Prince「The Ladder」
The Honey Drippers「Impeach the President」
最高位米Billboard Hot 100:11位
Cash Box Top 100:9位
Billboard R&Bチャート:5位(25週チャートイン)

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🎵 2Pacにとってのターニングポイントとなった1曲

「I Get Around」は1993年6月10日、インタースコープ・レコードからリリースされたセカンドアルバム『Strictly 4 My N.I.G.G.A.Z…』からの第2弾シングルだ。プロデュースはShock Gが「The D-Flow Production Squad」名義で担当した。

この曲は2Pacにとって初めてのBillboard Hot 100トップ20入りシングルであり、ラッパーとしての商業的成功を証明した記念碑的な1枚となった。同年12月7日にはRIAAからゴールド認定(70万枚以上)を獲得。ビルボードHot 100では25週にわたってチャートインし続け、AllMusicはShock Gのプロデュースワークとファンク的アプローチを高く評価している。

表向きはShock GとMoney-Bを迎えた気軽なパーティー・アンセムで、「Keep Ya Head Up」のような社会派メッセージ曲とは対照的な、2Pacの”遊び”の側面を全開にした作品だ。だが、そのシンプルな外観の裏に、これほど濃いドラマが詰まっているとは想像もできない。

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🔀 サンプリング元:ファンクの帝王Zappのボコーダーサウンドが骨格

Roger Troutmanの「Computer Love」が核心

曲全体の骨格を支えているのは、ファンクグループZappが1985年にリリースした「Computer Love」だ。Roger Troutman(ロジャー・トラウトマン)のトレードマークであるトーキング・モジュレーター(ボコーダー)のサウンドが、曲全体に独特のねっとりとしたグルーヴを与えている。

「Computer Love」はWarner Bros.からリリースされたアルバム『The New Zapp IV U』に収録され、米Billboard R&Bチャートで8位を記録した名曲。Roger Troutman、Larry Troutman、Shirley Murdockの共作で、Charlie Wilsonがボーカルに参加している。

このサンプルの”使い勝手の良さ”は「I Get Around」だけにとどまらない。2Pac自身が「Temptations」(1995)や「Thug Passion」(1996)でも同じビートを活用したほか、Notorious B.I.G.、Jay-ZFat Joe、Lil’ Kim、Redmanといったヒップホップの巨人たちも次々と手を伸ばし、計100回近くサンプリングされている。それほどまでに人を惹きつける磁力を持つ音源だ。

その他のサンプル

「Computer Love」以外にも、以下の楽曲がサンプリングされている。

  • Gang Starr「Step in the Arena」(1991):楽曲中の「step up」スタブ(短い音の挿入)として使用
  • Prince「The Ladder」:Prince and The Revolutionによる楽曲から引用
  • The Honey Drippers「Impeach the President」:ヒップホップで頻繁に使用されるドラムブレイクの定番
  • Grandmaster Flash and The Furious Five「New York, New York」

🎤 制作秘話①:6ヶ月間、誰にも使いこなせなかったビート

このビートが「I Get Around」として世に出るまでの道のりは、決して一直線ではなかった。

Money-Bがインタビューで明かしたところによると、このビートはもともとDigital Underground自身のために作られたものだった。ところが、グループのメンバー全員が6ヶ月にわたって挑戦し続けたにもかかわらず、誰一人このサンプルにふさわしいリリックを書けなかったという。

行き詰まったShock Gは、同じくDigital Undergroundに所属していたラッパーSaafirにビートを渡した。ところがちょうどそのタイミングで、2Pacがセカンドアルバムの制作に向けて「何かいいビートないか?」とShock Gに声をかけてきた。Shock GはSaafirの手からビートを引き取り、そのまま2Pacに手渡した。

ここに大きな皮肉がある。2Pac自身が「Digital Undergroundっぽいサウンドを求めている」と伝えたとき、Shock Gは意外だと思ったという。

「2Pacがああいうサウンドを欲しがっているとは思わなかった。もっとアグレッシブなものを求めているかと思っていた」

さらに輪をかけた皮肉がある。当時、2PacとSaafirは互いにビーフ(対立)関係にあったのだ。自分が手放したビートが、折り合いの悪い相手の大ヒット曲になる——Saafirにとってこれほど苦い結末はなかっただろう。

🖊️ 制作秘話②:婚約中のShock Gに「ちゃんと使えるバース」を2Pacが書いてやった話

この曲で最も驚くべきエピソードが、2Pac本人がShock Gのバースをゴーストライトしたという事実だ。

録音当日、Shock Gはほかのプロジェクトで消耗しきっており、自分のバースを書く時間がなかった。だがそれ以上に深刻な悩みがあった。Shock Gは当時婚約中だった。「女遊び」を堂々と歌う曲で、いったいどんなリリックを書けばいいのか、途方に暮れていたのだ。

2Pacはその空気を即座に読んだ。Shock Gがインタビューで語ったエピソードによれば、スタジオで2Pacは「ペンと紙を持ちながら部屋を歩き回り、天井を見上げて」、わずか5分後にはShock Gのバースを書き上げ、そのまま手渡してきた。

2Pacが書いたラインには「フリーク(遊び人)ではあるけれど、だからといって一緒に寝ようということにはならない」という一節が盛り込まれていた。婚約中の自分でも歌える余白を残しながら、ちゃんと曲の世界観にもハマる気の利いたラインだ。Shock Gはこれを気に入り、「Pac freed me with that, man(パックがあのラインで俺を解放してくれた)」と語っている。

ちなみに、Money-Bも同じく2Pacからバースの草稿を受け取っていた。しかしMoney-Bは2Pacが書いてくれた内容に「俺はこんなこと言わない」と断り、自分で書き直して録音した。一方Shock Gのバースは、ほんの少し手を加えた程度でほぼ2Pacの書いたままアルバムに収録されている(Money-B談)。

Shock Gはこんな言葉も残している。

「彼は3年ぶりに"Humpty"ではなく"Shock G"を指名してくれた初めての人物だった。彼は俺に生きがいを与えてくれた」

📹 MVはマリブで撮影。監督は後に『ウェディング・クラッシャーズ』を撮る人物

ミュージックビデオは1993年3月19日、カリフォルニア州マリブで撮影された。監督はDavid Dobkin(デイヴィッド・ドブキン)。この時点ではまだ無名の監督だったが、後にハリウッドへ進出し、映画『Shanghai Knights』や『Wedding Crashers(ウェディング・クラッシャーズ)』を手がけることになる。

映像はマンションを舞台にした全編パーティームードで、ビーチやプールサイドで2Pac、Shock G、Money-Bが女性たちとくつろぐシーンが続く。2Pacと同時代を走ったSpice 1もMVに参加しており、当時のウェストコーストのクルーとのつながりを見せている。

Money-Bが後に語ったところによれば、撮影中も2Pacは「休憩のたびに別の女性を連れて自分だけのスペースに消えていった」という。現場がどれほど賑やかだったかが伝わってくるコメントだ。

リリース後は1993年7月19日にアメリカの人気深夜番組The Arsenio Hall Showでパフォーマンスを披露し、同年7月28日にはMTV Jamsにも登場。全米規模で認知を広げていった。

🔄 リミックス:Death Row版では2Pacの「幻の3バース目」が復活

1996年にリリースされた『Death Row Greatest Hits』には、「I Get Around」のリミックスバージョンが収録された。Money-Bの証言によれば、このリミックスはもともと2Pacが最初から全バースを書いた「3バース完全版」で、アルバム収録時にMoney-Bが自分のバースを差し替えたため表に出なかったテイクだ。このバージョンではMoney-Bのパートが外れた分、2Pacの存在感がより前面に出た構成となっている。

🌉 Digital Undergroundとの縁:バックダンサーからスターへ

「I Get Around」でDigital Undergroundとコラボした背景には、2Pacとグループの深い縁がある。

2PacはもともとDigital Undergroundのバックダンサーとして音楽業界に入った人物だ。「Same Song」(映画『Nothing But Trouble』サウンドトラック収録)でラッパーとしてのキャリアをスタートさせ、その縁がファーストアルバム『2Pacalypse Now』のインタースコープとの契約にもつながった。

デビュー前、Digital Undergroundのマネージャーであるのマネージャー、Atron Gregoryがほぼすべてのレーベルに2Pacのデモを持ち込んで回ったが、なかなか契約が取れなかった。レーベル側の反応のひとつに「Ice Cubeに似すぎている」という声もあったという(Shock G談)。

だからこそ、「I Get Around」の中に「I’m still down with the Underground(俺はまだDigital Undergroundと一緒だ)」というラインが入っているのは意味深だ。スターになった後も仲間への敬意を言葉に刻んだ、2Pacのスタンスがにじみ出ている。

🏆 チャートと評価:2Pac初のトップ20、ゴールド認定

  • 米Billboard Hot 100:最高11位、25週チャートイン
  • Cash Box Top 100:最高9位
  • 米Billboard R&Bチャート:最高5位
  • RIAA認定:ゴールド(1993年12月7日認定、70万枚以上)

この曲の成功はアルバム全体の勢いも押し上げ、『Strictly 4 My N.I.G.G.A.Z…』はデビュー作を上回る商業的結果を残した。AllMusicはShock Gのプロデュースワークと、Zappのサンプリングを活かしたファンク的アプローチを高く評価している。

📌 まとめ:「遊び曲」の皮をかぶった、人間くさいドラマの塊

「I Get Around」は表向きには気楽なパーティー・アンセムだ。しかしその裏を読めば、6ヶ月間誰にも使いこなせなかったビートの末路、ビーフ相手の手から奪われたサンプル、婚約中のShock Gに寄り添った2Pacの気遣い、そして後にハリウッドへ羽ばたく無名監督のデビュー——これだけのドラマが1曲に凝縮されている。

「I’m still down with the Underground」。スターになっても仲間への恩義を忘れなかった2Pacのその一行が、この曲をただのヒット曲以上の存在にしている。

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